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気持ちよく仕事をすることは,自分のためでもあり,相手のためでもある。誰もが気持ちよく仕事ができる環境にするための“基本中の基本”は,「大きな声でのあいさつ」と「元気な返事」だ。朝すれ違ったら,「おはようございます!」と笑顔であいさつを交わしているだろうか。誰かに呼ばれたら「はい!」と気持ちよく返事しているだろうか。今一度互いにチェックしてみよう。

田中 淳子/グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育コンサルタント

 私の主な仕事は,講師として研修を実施することだ。当然朝は,教室に入ってくる参加者に「おはようございます」と声を掛けるのだが,返事をしてくれない人が少なからずいる。そういえば,と思い出すのが企業を訪問する際によく見かける光景である。

 会社の入り口には,守衛さんや受付の人がいることが多い。彼ら,彼女らは,会社に入ってくる人すべてに「おはようございます」と元気に大きな声であいさつしてくれる。ところが,こういう場面でホールに守衛さんや受付の人の「おはようございます」という声だけが響いて,社員が素通りする光景をよく見かける。ザンネンなことである。せっかく声を掛けてくれているのだ。自分も「おはようございます」と返事をするべきだろう(図1)。朝一番で声が出にくいとしても,せめて会釈くらいは返したい。

図1●元気なあいさつと返事を心掛けよ
図1●元気なあいさつと返事を心掛けよ
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 あいさつといえば,ある会社に中途入社した知人の話。割り当てられた席は,年長者ばかりが座っているところだったそうだ。入社した初日から,「おはようございます」とあいさつをして席に座るようにしたのだが,誰も返事をしてくれない。それどころか,振り向きもしてくれなかった。

 だが,彼女はめげなかった。数週間あいさつを続けていたら,1人,2人と,小声ではあるが返事を返してくれるようになり,数カ月たった時には,相手から先にあいさつされるようになった。さらに,仕事上の情報交換が活発になるという副産物もあったという。返事がなくても,自分は「あいさつするのだ」と決めて行動し続けたことが,結果的には職場の環境を整え,仕事がしやすい状態を作り出したのだ。

 このケースのように,自分からあいさつしても返事が返ってこないことは多いかもしれない。だが,返事をしない人に悪気はなく,自分にあいさつされていることに気付いていない場合もある。こんな時は,名前付きでのあいさつがお薦めだ。「○○さん,おはようございます」と,返事してほしいと思う相手の名前を呼ぶのである。名前を呼ばれると,さすがにたいていは返事をしてくれる。これを1週間ほど繰り返しているうちに,だんだん自然にあいさつを交わせる関係になるだろう。諦めない。これが大切だ。

何はともあれ「はい!」

 あいさつと同様に大事なのが,返事である。私が担当する研修では,出席を取ったり,講義中に指名したりする際,「○○さん」と相手の名前を呼び掛ける。この時,よく感じるのは,「名前を呼ばれても返事をする人が少ない」ということである。

 実は,これは若手社員に限ったことではなく,中堅社員でもマネジャーでも,呼ばれて「はい!」と元気よく返事をする人はあまり多くない。ちょっと気になったので,「皆さん,職場でちゃんと返事していますか?」,「部下を呼んだ時,皆さんの部下は『はい』と返事しますか?」と尋ねてみると,「そういえば,あまり返事しないかなあ」という答えが返ってくる。

 だが,これでよいのだろうか?「仕事の指示をしたい」,「現在の進ちょくを確認したい」など,呼びかけた側に意図があるから,名前を呼ぶのだ。それを黙って“ぬぅ~”と近づかれたり,返事なしに書類を渡されたりしたら,呼び掛けた側としては気持ちよいものではない。上司や先輩であろうと,部下や後輩であろうと,人に呼び掛けられたら,何はともあれ元気よく「はい!」と返事をしたいものだ。

 半年ほど前のことだが,とある企業で新入社員研修を担当させていただいた。ここでも気になったのは,彼らが返事をしないことだった。この会社の新入社員はやる気に満ちあふれ,研修の最終日に取り囲まれて質問攻めにあった。その中で,こんな質問があった。「田中さん,社会人の先輩として僕たちに何かとっておきのアドバイスを下さい。これだけはやった方がいい,ということを教えていただけますか」。そこで私は,初日からずっと気になって,何度も注意していた返事のことを再度述べた。「本当に基本的過ぎて『なあんだ』と思うかもしれませんが,実は何よりも大切なことを言いますね。皆さん,名前を呼ばれたら,『はい』と元気よく返事をしてください。これから配属先に行って,上司や先輩から何度も呼ばれると思いますが,その都度,元気に明るく『はい』と言って立ち上がる。それを続けることがきっと自分自身のためにもなると思いますよ」。すると,彼らは黙ってうんうん肯いているので,「ほら,こういう時も返事でしょ?」と促すと,「はい!」と言ってくれた。

 あいさつや返事のように,ちょっとしたことから職場は活性化していく。「誰もしていないからやらない」のではなく,まずは自分から始めてみる。やる気さえあれば簡単なことだ。

今月のポイント
1.朝は「おはようございます」と笑顔で明るくあいさつをする。
2.誰もしなくても,自分からあいさつしていれば,相手もいつか返事をしてくれる。
3.呼ばれたら,何はともあれ「はい!」と元気よく返事する。

あなたが創る顧客満足   今月のお薦め本:
あなたが創る顧客満足
佐藤 知恭著
日経ビジネス人文庫 680円

「顧客満足度」とは何かを一度きちんと考えてみたい人にお薦めの入門書。「顧客満足」とは,「顧客を満足させること」ではなく,「顧客が満足すること」である,という言葉が印象的。

田中 淳子(たなか じゅんこ)
1986年,上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て,現在はグローバル ナレッジ ネットワークでコミュニケーション,リーダーシップ,トレーニングスキルなどの研修企画,開発,実施に当たっている。著書に「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社),「速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック」(日経BP社),「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)がある。ブログ「ヒューマン・スキルの道具箱 ~ タナカ La ジュンコ ~」を連載中。