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気持ちよく仕事をするために欠かせないのは,良い人間関係だ。とはいえ人間関係はこじれるときもある。そんなときのベストな方法は,直接会話すること。問題が起こった時,起こりそうな時は特にフェース・トゥ・フェース のコミュニケーションを心掛けよう。そして,トラブルが起こった時に対峙すべきは「相手」ではなく,「問題」そのものであることを忘れてはならない。

田中 淳子/グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育コンサルタント

 若手からベテランまで様々なITエンジニアに共通する悩みの1つに「人間関係」がある。今回は人間関係がこじれたときのスマートな解決策を示そう。これも広い意味でのビジネスマナーである。プロジェクト・メンバー,協力会社の人,顧客…。仕事でかかわる人が多い程,人間関係も複雑になり,互いに悪気がなくても感情的にこじれ,それが仕事に支障を来たすまで発展することがある。そこにメールというツールが介在するとさらに問題は厄介になる。メールでのトラブルは“バトル”に発展しやすいからだ。経験がある方も多いことだろう。

 最近,「部下同士がささいなことでけんかして困る。まるで子供じみたけんかで,しかも頻繁にあるものだから,人間関係を調整するために,目を離すことができない」と嘆くリーダーに出会った。「若手のメンバー2人が,何かと反目し合っている。打ち合わせ時の話し合いが感情的になり,しばらく口をきかないこともある。かといって,メールでやり取りすれば,きつい口調で返信し合う。ほとほと困っている」と言うのだ。

 若い時は血気盛んで,ちょっとしたことでも「カチンと来る」ことも多いことだろう。そういう場面に遭遇してしまった同僚や先輩は,当人同士の問題だからと放っておくわけにもいかない。なぜなら,仲違いしているメンバーがいると,チーム全体の雰囲気が悪くなるだけでなく,仕事の生産性にも影響を及ぼすからだ。なんとか人間関係を修復しなければならない。

人と問題を切り分ける

 個人間のトラブルが起こったら,まずは当事者同士で話す場を設ける。

 この際,できれば先輩や上司など第三者が入った方が話はしやすい。第三者が,仲裁役として間に入り,それぞれの言い分を聞くのだ。そして「きっかけは何で,現在何がどうこじれているのか」を全員が理解し合い,そもそも解決すべき問題は何かを一緒になって考える。そうやって話し合ってみれば案外,「面子がつぶれた」,「言い方にかちんと来た」といった,ささいなことがきっかけになっていたことが判明するものだ。ここで重要なことは,「人と問題を切り分ける」こと。仲裁役に入った上司や先輩は「相手を批判するだけでは何も始まらない」ことをぜひ指摘してほしい。

 これは私にも経験がある。20代のころは,相当血気盛んだったので,あれやこれやと他人とぶつかっていた。ある時,例によって「あの人のせいでこんなことになった」などとぶつぶつ文句を言っていたら,隣に座っていたチームリーダーが,ふとこんなことを言った。「田中さんはさあ,そんな風に文句言っていると,何かが解決するの? 俺は,文句言うより,自分がうまく仕事を進めるためにはどうすればいいかだけを考えて行動することにしているよ」。同年代のリーダーに言われたこの言葉には,はっとさせられた。これ以来,人間関係に関する問題が発生した時,「すべきことは問題の解決であって,相手を攻撃することではない」と考えるようになった。

 個人間のトラブルが起こると,感情的になってしまい,「相手そのもの」をどうにかしようと考えてしまいがちである。「コイツが気に入らない」,「アイツが謝るまでは絶対にこの件は対応しない」などと意固地になってしまう。端から見れば子供じみた争いかもしれないが,当事者にしてみたら,そういう「負の思考」のサイクルから,そう簡単に抜け出ることができない。そんな時は第三者として誰かが,「『誰がどうした』ということは脇に置いて,とにかく“問題”を解決しようよ」とやんわりと諭すべきだ(図1)。言われた方も冷静に考えてみたら,分かるはずである。誰だって,けんかするために職場に来ているわけではないのだから。考えるヒントが与えられれば,それをきっかけに関係修復は可能になるだろう。

図1●個人間のトラブルを解決するためには,相手ではなく,問題そのものに目を向けよう
図1●個人間のトラブルを解決するためには,相手ではなく,問題そのものに目を向けよう

メールの書き方にも配慮を

 もめるきっかけがメールの文面であることも多い。この場合もやはり,当事者同士を呼んで,直接話す時間を設け,問題を解決することに専念する。この時,仲裁に入った上司や先輩は,メールの使い方についても指摘しておきたい。「『直接は言えないがメールなら書ける』と考えるのはマナー違反だよ」と伝え るのだ。

 メールは感情を刺激しやすい。これは,ひとえに「ノンバーバル(非言語表現)」が欠け,文字でしか情報が伝えられないことが原因だ。また顔が見えないことにより,使う言葉もきつくなりがちである。返信の際に相手の言葉尻をとらえて感情的に反応してしまうことも多い。

 私も,誰かに厳しいことを言わねばならないときは,できるだけ口頭によるコミュニケーションをとるようにしている。しかし,なんらかの事情ですぐに会えない相手の場合は,メールを使うこともある。こんなときはメールを送る前に読み返して,「この内容を相手に直接,口頭でも言えるかどうか」を基準にしている。もし「面と向かっては言えないな」と思ったら,表現を改めるようにしている。

今月のポイント
1.個人間でもめごとが起こった時は,人と問題を切り分ける。
2.直接顔を見て言えないことは,メールにも書かない。

実践・プレッシャー管理のセオリー   今月のお薦め本:
実践・プレッシャー管理のセオリー
高杉 尚孝著
NHK出版 1050円

感情的なトラブルを解決したい時は,自分の考え方を見直してみるのも1つの手。この本では,「ねばならぬ」と思い込むといろいろなことが許せなくなるが,「であればそれに越したことはない」と思考を変えると,ずいぶん生きやすくなると説いている。

田中 淳子(たなか じゅんこ)
1986年,上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て,現在はグローバル ナレッジ ネットワークでコミュニケーション,リーダーシップ,トレーニングスキルなどの研修企画,開発,実施に当たっている。著書に「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社),「速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック」(日経BP社),「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)がある。ブログ「ヒューマン・スキルの道具箱 ~ タナカ La ジュンコ ~」を連載中。