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Q 顧客企業のシステム開発を担当しています。この2カ月ほど,食欲がなく,体重も5キロ減りました。いつもと違う感じがするので,消化器内科で胃と腸の内視鏡検査を受けましたが,異常はありませんでした。何となく不安な感じがあり夜もよく眠れません。疲れも強く感じます。 (32歳,男,SE)

 うつ状態である可能性があります。

 の10項目の質問に答えてみてください。「ほとんど毎日」が6項目以上あれば,まずうつ状態であると考えて間違いありません。

図●うつ状態を確認するための10の質問(1カ月を振り返ってみる)
図●うつ状態を確認するための10の質問(1カ月を振り返ってみる)

 うつ状態の原因となる病気の代表は,うつ病です。うつ病は「心の病気」だと考えている人が多いのですが,身体症状が必ずあり,それが前面に出ている例が珍しくありません。

 身体症状で多いのが,「食欲の低下」,「睡眠障害」,「性欲の低下」です。私たちが生き生きとした日常生活を送るうえで欠かせない機能が,低下しているのです。

 うつ病の睡眠障害の特徴は,朝早く目がさめることです。午前3時頃に目がさめ,もう一度寝付くことができません。けれども横になっていると,6時~7時ころに眠ってしまい,目がさめたら午前10時を過ぎている,というパターンがよく見られます。

 うつ病にはもちろん精神症状もあります。必ず見られる症状は,頭の回転が落ちることです。「仕事の能率が以前に比べてよくない」,「あれこれ考えて決断ができない」,「新聞や本を読んでもその内容がすっと頭に入ってこない」などの症状が自覚されます。何となくおっくうでだるい感じがして,「何もしたくない」という気持ちになります。

 うつ病には,午後になると症状が軽くなるという特徴があります。また,「生きているのがつらくなり,消えたい」という気持ちが出現します。これを“自殺念慮”と呼んでいます。

 うつ病がどんな原因で起こるかは,現在のところ分かっていません。とはいえ,長時間労働などの過重な労働負荷と,リストラなど自分の将来に対する漠然とした不安が,背景要因となっていることは,確かです。

 うつ病の治療でもっとも大切なことは,「休むこと」です。消耗した「命のエネルギー」を再び貯めることが必要なのです。抗うつ薬を飲むことも必須です。自分に合った薬であれば,抗うつ薬を飲むことには何の問題もありません。抗うつ薬には習慣性もまったくありません。

 うつ病は,特殊な病気ではなく,誰もがかかる可能性のある身近な病気です。大学病院や総合病院の精神科,もしくは心療内科を受診することをお勧めします。産業医,保健師など,企業内の産業保健スタッフに相談することもひとつの方法です。

回答者:河野慶三 富士ゼロックス全社産業医
1970年,名古屋大学医学部卒。厚生省,熊本県公害部首席医療審議員,労働省主任中央じん肺診査医,産業医科大学助教授,自治医科大学助教授を経て, 94年に富士ゼロックス本社産業医に就任。98年から全社産業医。著書に「働く人の健康管理」(労働新聞社)など。医学博士。