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Q 今までずっとソフト開発に従事してきましたが,会社の都合で今年の1月に営業/サポートの部署に配置替えになりました。対人的な接触が増え,相手に合わせた仕事の仕方をしなければならないことが精神的な負担になっています。元に戻して欲しいとも言えず悶々としています。 (35歳,男,営業/サポート)

 開発部門は,個人レベルの仕事が多く,周囲とのコミュニケーションもそれほど必要ありません。ところが,営業/サポート部門では,顧客のニーズをいち早くキャッチするために積極的に多くの人とコミュニケーションをとらなければなりません。コンピュータに向かっているだけでは,先に進めない状況が展開されます。

 あなたは,会社の方針の一貫として配置替えになったと思いますが,専門分野が違う営業/サポートの仕事に戸惑いや不安,不得意感を抱いているのではないでしょうか。「会社の方針で異動させられたからには期待に応えたい。しかし,なかなか思うようにはならない。顧客はわがままで言いたい放題。なぜこんなことに耐えなければならないのか」と思うと,怒りの気持ちがわいてくるかもしれません。「自分は一生懸命やっているのに,成果が上がらない。こんなことでやっていけるのだろうか」と,情けなく思えたりする日々が続くこともあるでしょう。実はそういう悩みを持つ人は今や少数派ではありません。程度の違いはありますが,大多数の人はなんらかの悩みを抱えています。その上で「これは仕事だから」などと割り切っているのです。

 あなたの場合,まずうっ積した精神的ストレスを誰かに聞いてもらうことが大切です。その場合,共感しながら理解してくれる聞き手が必要です。親友,同僚,家族などにそういう人がいるでしょうか?もし見当たらないようであれば,企業内の産業保健スタッフや社外のカウンセラーによるカウンセリングを受けることをお勧めします。「企業内でカウンセリングを受けると会社に報告されるのではないか」と心配する人もいるかもしれませんが,カウンセラーには守秘義務があるので,本人の了解無しに相談内容を会社に漏らすことは決してありません。

 悩みをしっかり聞いてもらうことで,「カタルシス効果」が得られます。カタルシスとは「浄化作用」という意味で,「スッキリした」,「言えてよかった」,「分かってもらえた」などの気持ちがそれです。人間は,人に理解されることで心に栄養をもらい,やる気や余裕が出てくるものです。その結果,ストレス状態も緩和され,冷静に自分の身の振り方を考えられるようにもなります。

 質問者のような悩みを持っている人は,往々にして,自分の悩みを聞いてくれる人が周りにいないことがあります。そこで,一人で悶々としてしまうことが多いのです。そういう人は,気軽にカウンセリングを受けて欲しいと思います。日本では欧米と比べてカウンセラーの数は極端に少ないので,あまり身近に感じられないかもしれませんが,最近では大企業を中心に心理カウンセラーを置いています。専門のカウンセラーなら,あなたの悩みをしっかり聞いてくれ,さらに人間関係の不得意感の解消やよりよいコミュニケーションの仕方についても,一緒に見つめてくれるはずです。

回答者:武藤清栄 東京メンタルヘルスアカデミー所長
1974年東洋大学社会学部卒,76年国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)衛生教育学科卒。民間相談機関の「心とからだの相談センター」主任カウンセラー,サンシャイン医学教育研究所,秋元病院精神科カウンセラーを経て,現在に至る。関東心理相談員会会長。日本精神保健社会学会副会長。著書に「雑談力」,「号泣力」(いずれも明日香出版社),「本音力」(ロゼッタストーン)など