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住友スリーエムの実質的なCIOである中村 隆夫・情報システム本部統括部長
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 米3Mと住友電気工業の合弁会社である住友スリーエム(東京・世田谷区)。同社の出資比率は3Mが75%を占めており、2005年の売上高は2470億円になる。3Mグループは、多種多様な産業用部品や部材を製造・販売する傍ら、一般消費者には「ポスト・イット」や粘着テープ「スコッチ」で知られる。

 連結売上高200億ドルを大きく上回る巨大な3Mグループの日本での事業を統括する住友スリーエムで、実質的なCIO(最高情報責任者)を担うのが中村隆夫・情報システム本部統轄部長である。同氏の話はとても論理的かつ明快だ。IT(情報技術)部門の重要な役割は何かと聞けば、「簡潔に言うなら、データベースを維持・管理すること」と即答する。その後で、「会社の活動には必ず何かの目的があります。A拠点からB拠点にモノを動かしたり、DからEを作り出す。そのときに、情報システムが示すデータとモノやお金の間で嘘のない1対1の仕組みを作るのが、IT部門の役割です」と続ける。企業はデータを頼りに活動するもの。そのデータに信頼性がないのでは困るというわけだ。

 データの信頼性を保つにはどうしたらいいのか。中村統轄部長は、「1つは、利用者ごとのデータに対するニーズを見極め、リアルタイム更新がいいのか、バッチ更新がいいのか、月末締め処理でいいのかなどを考えるのです。そしてもう1つ、データ項目の標準化です。同じ呼び名のデータなのに、例えば片方には返品データが含まれ、片方には含まれていないのでは、利用者が不安がってしまう」と説明する。

 米3Mの子会社だとはいえ、住友スリーエムの情報システムは米国のものをそのまま移植しているわけではない。グローバルに共通化すべき部分と、ローカルで保持すべき部分の選抜をしている。中村統轄部長は、「例えば日本には製造拠点が6カ所もあり、日本の取引先は品質やリードタイムについての要求レベルが非常に高い。だからサプライチェーンのシステムは、日本の独自部分が必要。一方、会計システムはグローバルに共通のほうがいい。米国の3Mが連結の財務データを即座に必要とするからです。日本のITの優れたやり方でグローバルに利用すべきものがあれば、きちんと米国に意見を述べています」と力強い。

 そんな中村統轄部長が、IT部門のスタッフに繰り返し言い続けている話が2つある。「データと情報」と「1対1対応の原則」である。

 「データと情報」の話というのは、データと情報の違い、さらに、知識と知恵の違いを意識して情報システムを構築しようという内容だ。具体的には、「データは企業活動によって発生した事実。データベースに蓄積すべきなのはこれだけ。一方、データを利用者が必要とする形でアウトプットしたのが情報。そしてデータと情報を混同しないよう注意を払いつつ、社内の利用者に最適のタイミングで必要な見方に加工したデータ、つまり情報を提供できるようにします。これができないIT部門は失格です。そして、知識とは行動に必要な情報であり、知恵は工夫が加味された知識を指す。だから、適切な情報(知識)が得られる環境を作れば、知恵も生まれやすくなるのです」と中村統轄部長はいう。
 
 これに対して「1対1対応の原則」とは、情報システムに入力するデータと、モノやお金の動きを必ず1対1で連動させることを指す。京セラ最高顧問の稲盛和夫氏も、書籍「稲盛和夫の実学」の中で同様の考えを披露している。「企業活動の出発点は情報ではなくデータです。データは事実だから曲げられない。もしもデータが『0』になっているときは、仕事ができない状態であるべきです。メーカーの仕事は『部材調達→生産→受注→出荷』という流れですが、各プロセスで数字をいじると不正が起きかねません。例えばデータが『マイナス在庫』を示す状態を許してはいけません」(中村統轄部長)
 
 データが正確に実態を表していれば、信頼できる情報、つまり知識が得られる。そうすれば結局、良い知恵が生まれやすくなるというわけである。

Profile of CIO

◆お勧めの書籍
・ 生き方を学ぶという意味でお勧めしたいのは、サムエル・ウルマンさんの詩集『青春とは、心の若さである。』(角川書店)です。米国の詩人なのですが、実は米国ではあまり知られていません(笑)。その代わり、日本企業の経営者に支持者が多い。この書籍に出てくる特に印象的な言葉が「青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方をいう」。まだ30代、40代といった比較的若い人でも、理想もなく働き続けていると、外見も老いやすくなる。会社がそんな集団では困りますよね。当社の元役員の中にもこの書籍のファンがいて、今でもその人に会うと「まだ理想に向けてがんばっているか」と激励されます。
・ 『知識と知恵』(笠信太郎 著、文藝春秋)
・ 『稲盛和夫の実学』(稲盛和夫 著、日本経済新聞社)

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・ 日本経済新聞を読んでいます。特に最近は夕刊のいろんな人物紹介などのコラムがおもしろい。さらに言うと、新聞が休刊日だった日の夕刊を駅の売店で買うのが楽しいですね。わずか50円なのに、朝刊並みの情報が読めるのがいいです。夕刊なのにスポーツ情報も満載ですしね。
・ 読売新聞、朝日新聞、毎日新聞も読んでいます。

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・ 私は1970年代前半に当社に入社したのですが、1980年代前半に有志で「IRM(インフォメーション・リソース・マネジメント)研究会」という集まりを立ち上げました。現在は活動を停止しているのですが、最大で200社の人が参加し、その人脈は現在も生きています。この研究会の理念は「情報は企業資産である」。例えばこんな議論をしました。「情報システムを構築するには、工程管理、プロジェクト管理、品質管理といった製造現場でやっている管理手法がすべて使える。複数の細かなプログラムは部品表で管理できる。工作機械がそうであるように情報システムインフラも減価償却をきちんと考えるべきだ」といった具合です。情報システムはものづくりと同じなんですよ。ソニーや富士フイルムなどで講演したこともあります。

◆ストレス解消法
・ 身体を動かすことが大切だと思うのでゴルフをしています。それから、土日は勇気を持ってパソコンをさわらないことを強く意識しています。さわり始めるとついつい数時間仕事をしてしまう。仕事を忘れる時間を作ることは大切です。映画館にもよく行きますね。

■変更履歴
記事掲載当初、『セロファンテープ「スコッチ」』としていたものを『粘着テープ「スコッチ」』に修正しました。また、「IRM(インフォメーション・リサーチ・マネジメント)研究会」としていたものは、「IRM(インフォメーション・リソース・マネジメント)研究会」の誤りでした。 [2007/03/05 15:25]