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 日本郵政公社が民営化される10月まで後7カ月、民営化の準備作業は佳境を迎えている。新聞を見ていても、郵政公社がらみの報道が目に付く。3月2日には西川善文日本郵政社長が4月から日本郵政公社総裁を兼務する人事が発表され、続く3月5日には西川氏の古巣である三井住友銀行が、郵政公社のATM(現金自動預け払い機)を使う手数料を無料にすると発表した。

 民営化の行く末を左右するカギの一つは情報システムの準備である。民営化に伴い郵政公社は、郵政持株会社と郵便、郵便貯金、簡易保険、窓口業務を手掛ける4社に分割されるが、それに伴って情報システムを用意しなければならない。郵便貯金事業を手掛ける会社の情報システムがきちんと準備されないと、ATM提携もままならない。郵政公社に限らず、「企業や事業の統合または分離に伴う情報システム対応」は大きなリスク案件である。この課題にどう対処すべきか、郵政民営化と情報システム対応を巡る動きを振り返り、考えてみたい。

 郵政民営化の方向性については様々な議論があるが、ここでは「郵政民営化は進める。そのとき、情報システムをどうすべきか」といった点に絞る。繰り返しになるが、「企業や事業の統合または分離に伴う情報システム対応」を検討する事例として、郵政民営化を取り上げるわけである。

 今回、このテーマを選んだきっかけは、管義偉総務相が3月2日、西川日本郵政社長に4月から日本郵政公社の総裁を兼務させると発表したことである。現総裁の生田正治氏の任期は3月末に切れるが、続投しない。西川氏は持株会社の経営トップに就くことが決まっていたが、これに先だって4月から半年間総裁を兼務し、民営化作業を進めていく。生田氏が今月一杯で退くというニュースを見て、以前書いたコラムを思い出した。それは、2004年8月18日、日経ビジネスExpress(現・日経ビジネスオンライン)において公開した「『システム分離に手間がかかる』、生田郵政公社総裁の不思議な見解」である。まず、このコラムを再掲する。文中の企業名・肩書きは当時のままとした。

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 三菱東京フィナンシャル・グループとUFJグループの経営統合に関して連日報道がなされているが、郵政公社の民営化・分社も勝るとも劣らない重要な問題である。情報システムについて言うと、経営統合ではシステム統合が課題となり、民営化・分社の場合は「システム分離」が懸案になる。

 2004年8月2日付の日本経済新聞の記事で、日本郵政公社の生田正治総裁が「システム分離」について言及していた。生田総裁は民営化した後の組織形態について、「持ち株会社を設立して、事業別の3つの会社を傘下に置く方式も1つの考えだ」としながらも、現在のシステムを分離するなどの手間が必要なため、(2007年4月の)民営化時点での分社は難しいとの見方を示したという。

 この記事が正しいとすると、生田総裁の発言はいささか不可解である。なぜなら、現状の郵便貯金、簡易保険、郵便という3事業について、情報システムは別々に構築されているからだ。システムを分離するというより、既に分離されているのである。

 あえて分離しなければならない情報システムは何かと考えると、人事システムや会計システムがある。郵政公社のような巨大組織となると、人事システムや会計システムの分離・分割はそれなりに大変であろう。既存の情報システムについても分社に伴って若干の修整が必要になるかもしれない。しかし2007年4月の分社が不可能になるほどの作業が必要とは到底思えない。

 つまり「システム分離に時間が必要」という生田総裁の発言は、分社を遅らせるための方便ではなかろうか。経営上の意思決定ができない時に、情報システムのせいにするのは、郵政公社に限ったことではない。