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写真1 都内大手量販店で予約状況を説明するイー・モバイルの千本倖生・代表取締役会長兼CEO。写真はヨドバシカメラ マルチメディアAkiba前
写真1 都内大手量販店で予約状況を説明するイー・モバイルの千本倖生・代表取締役会長兼CEO。写真はヨドバシカメラ マルチメディアAkiba前
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 HSDPA(high speed downlink packet access)対応端末「EM・ONE」(エム・ワン)の話題が先行するイー・モバイルだが,同社が提供する端末はそれだけではない。HSDPA対応のPCカード型データ通信カード「D01NE」の先行予約申し込みも同時に開始している。今のところ予約申し込みは,EM・ONEの人気が先行しているようだが(関連記事1),3月3日,都内の大手量販店を訪れた同社の千本倖生・代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者,写真1)は「ボリュームが出るのは本当はデータ通信カードだと思った」と語り,データ通信カードに対する期待感も示した。

 パソコン/PDA向けデータ通信サービスの市場規模はまだ大きくはないものの,今後の成長に対する期待感から競合するサービスは多い。イー・モバイルのサービスは,既存の携帯電話事業者によるデータ通信サービスだけでなく,PHS事業者であるウィルコムのデータ通信サービスともユーザー層は重複する。さらに公衆無線LANサービスもパソコン/PDAのデータ通信という利用シーンを考えると競合になり得る。

 そんな中,イー・モバイルのサービスは頭一つ抜け出す。既存の携帯電話事業者が実現できていない月額定額料金を打ち出し,さらに仕様上はPHSよりも高速な下り最大3.6Mビット/秒の伝送速度を提供。そして「どこでも使える」面的なエリア展開を進める点で,公衆無線LANサービスとも現状では差異化できる。だが強みだけではない。対応する端末数や端末の多様化という点では無線LANやPHSには今のところ及ばない。

PHSは端末多様化に先べん,無線LAN機器は出荷台数で勝る

写真2 アサヒビールが2006年9月から11月まで実施したキャンペーン景品であるW-SIM対応腕時計型端末「スーパーワンセグTV Watch」
写真2 アサヒビールが2006年9月から11月まで実施したキャンペーン景品であるW-SIM対応腕時計型端末「スーパーワンセグTV Watch」
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 端末の多様化で先べんを付けたのがPHS事業者のウィルコムだ。「W-SIM」という組み込み型の通信モジュールを使うことによって,多様な端末の早期投入を実現している。一例が2006年9月から11月までアサヒビールが実施したキャンペーンの景品であるW-SIM対応腕時計型端末「スーパーワンセグTV Watch」(写真2)。こうした企画型の端末に柔軟に対応できるのがウィルコムの強みだ。

 さらに対応端末の台数で言えば公衆無線LANに勝るサービスはない。出荷される大半のノート・パソコンやPDAが無線LAN機能を備えているからだ。NTTグループの公衆無線LAN設備を管理・運用しているNTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)の小林忠男・代表取締役社長は,「いまや携帯型ゲーム機にも無線LAN機能が付いている。さらに米国で発表されたアップルのiPhoneに無線LAN機能が入ったということは,これから携帯機器に無線LANが入ることを決定付けたと思っている」と日経コミュニケーションのインタビューでも語っている(関連記事2)。

無線LANのエリア展開も変わる,点から“ゾーン”へ

 無線LAN対応機器の爆発的な増加に合わせて公衆無線LANサービスも進化している。ライブドアは無線LAN接続の認証方法として,Webブラウザを使ったWeb認証だけでなく,機器に割り当てられたMACアドレスを事前登録して接続できるサービスを2006年末から開始した(関連記事3)。携帯型ゲーム機の接続を考慮したためだ。ライブドアの伊勢幸一・執行役員ネットワーク事業部技術担当は,「モバイル・マーケットはパソコンだけでない」とし,それに合わせた新たなエリア展開も必要になると説く。

 ライブドアが面展開で公衆無線LANサービスのエリアを広げようとしたことは記憶に新しいが,他事業者の公衆無線LANのエリア展開も変わりつつある(図1)。NTTBPの小林社長は次のようにその変化を説明する。「無線LANは点から線,面へ広がっている。面といってもPHSのように東京23区内あまねくというわけではないが,例えばこれまでは駅のホームと改札付近しか使えなかった公衆無線LANサービスを駅前広場や駅前商店街などにも広げようとしている。ゾーン展開といった方がいいかもしれない」と語る。

図1 公衆無線LANのサービス・エリアは点から線,面(ゾーン)へと広がる
図1 公衆無線LANのサービス・エリアは点から線,面(ゾーン)へと広がる[画像のクリックで拡大表示]

 既に事例もある。首都圏新都市鉄道が運営する「つくばエクスプレス」は駅だけでなく,一部列車の車内で公衆無線LANサービスを利用できる(関連記事4)。これは駅と駅というスポットをつないで“線”への展開を実現した例だ。また“ゾーン”展開も特定の商業施設や大規模マンションの区域内に広がっている。例えば三井不動産レジデンシャルなどがかかわった大規模マンション「芝浦アイランド」は,マンション内の共同施設だけでなく,ベンチを設置した敷地内の公園なども住民向けの公衆無線LANエリアになっている。

 イー・モバイルも無線LANと無縁ではいられない。EM・ONEはIEEE 802.11b/gの無線LAN対応。同社の種野晴夫・代表取締役社長兼COOはEM・ONEの無線LAN機能について,自社で公衆無線LANサービスを展開するつもりはないとは言うものの,「補完として使ってもらえる。海外の空港などでも使える」と説明。公衆無線LANサービスの使用自体は否定しない。

 競合するサービスの多いデータ通信だが,ユーザーの利便性を考えれば,種野社長が言う“補完”がこれからのキーワードになりそうだ。携帯電話,PHS,無線LANだけでなく,今後はWiMAXなどもデータ通信市場の土俵に上がってくる。データ通信を使いやすいものにするためには,各事業者単独でのエリア拡充もさることながら,互いに“補完”となる無線通信手段を組み合わせるようなソリューションも求められる。そのとき,いかにしてユーザーに異なる無線手段を意識させないようにするかといった取り組みが重要になるだろう。