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David Smith氏  
Gartner社
David Smith氏,
バイスプレジデント兼
ガートナーフェロー
ガートナー リサーチ ソフトウェアグループ ウェブサービス
ポータル担当

「第2次インターネット革命」,いわゆるWeb2.0が話題になっています。ここで私が「Web2.0とSOA(サービス志向アーキテクチャ)が大いに関係している」と言うと,疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。ほとんどの人は,SOAはエンタープライズ・コンピューティング(企業向けIT)の話題だと考えるでしょう。そして,SOAとWeb2.0は関係ない,コンシューマ(消費者)向け市場とはあまり関係ない,とお考えになるはずです。

しかしガートナーは,コンシューマ向け技術がエンタープライズ・コンピューティングに大きな影響を与えると考えています。ガートナーは「コンシューマライゼーション(Consumerization)」という新しい言葉を提示しています。コンシューマライゼーションとは,次のような意味です。「ハードウエア,ソフトウエア,サービスのすべては,消費者市場を起源とし,それが企業にも影響を与える」。つまり,コンシューマからエンタープライズへ,というボトムアップの流れを示す言葉です。

消費者に向けて生まれ,次に企業へ

インターネットの第2の革命,つまりWeb2.0はエンタープライズ・コンピューティングに影響を与えますし,SOAと大いに関係があるのです。コンシューマライゼーションとWeb2.0は,手に手を取り合っています。

Web2.0は,“はやり言葉”です。Web2.0は,「Web2006」と呼んだほうが適切かもしれません。Web2.0はWebの革新や進化の現象を示す言葉であり,今使っているWebの動きを示す総称である,とお考えください。Web2.0とは何かという正式な定義はありません。それに,Web2.0をきちんと定義しようとすると,かなりイライラする作業になります。

はやり言葉は現れては消えていきます。これに対し,インターネット,Web,そしてガートナーが提示するコンシューマライゼーションは,はやり言葉ではなく,今後私たちとともに歩んでいく言葉です。

ここ10年間,コンシューマライゼーションの大きな駆動力はインターネットでした。インターネットは,主に消費者が利用するものでした。10年前,企業で「インターネットはすごく便利だから使おうよ」などということは言われませんでした。

インターネットをワクワクしながら使っていた消費者は,疑問を持ち始めました。手軽なWebブラウザがなぜ,企業システムで使えないのか。自宅のパソコンとインターネットを使ってできることがなぜ,会社でできないのか,と。

そこで,企業はインターネット技術を社内の情報システムに適用し,イントラネットを作り上げました。今,企業の新しいアプリケーションのほとんどは,Webブラウザでアクセスするようになっています。この傾向は今後も続くでしょう。Webで生まれた新しい技術が,消費者市場におけるコンシューマライゼーションのプロセスを経て,革新し,洗練され,企業に届くわけです。

消費者こそが経済を動かす

コンシューマライゼーションのポイントは,消費者が経済を動かしているということに尽きます。特に米国はコンシューマライゼーションを象徴する国です。企業の投資額は横ばいか下降していますが,消費の額は上昇しています。

今,技術は一部のマニアに向けたものではありません。プロの技術者のものでもありません。ごく普通のユーザーが使います。普通の社員が使います。実は,こうした普通の人たちも,技術を十分に理解していますし,最先端の技術を使っています。

最も素晴らしい,最も新しい,そして多くの人々を最も感動させる技術は,まず消費者市場に投入されています。この傾向は今後も変わることはありません。現在企業のビジネスをけん引しているのは消費者です。

もちろん消費者向けの技術を企業で使う場合には,規制のリスク,セキュリティのリスク,法的なリスクを考える必要があります。だからといって,これらの問題を新しい消費者向け技術を使わないための言い訳にしてはいけません。

もはや企業向けと消費者向けITの差はない

では,ITのコンシューマライゼーションを増幅している要素とは何でしょうか。そして企業はWeb2.0の特徴をどう自社システムに生かせるのでしょうか。

企業はなぜ,Web2.0やコンシューマライゼーションに関心を持たなければいけないのでしょうか。ユーザーは人間です。企業の顧客も人間です。つまり人間中心なのです。何もかもが人間によってけん引されているのです。

ところがこれまでコンピューターや技術については,人間がそれらに合わせるように強制されてきました。本来は逆です。コンピューターや技術のほうが,人間が仕事をするやり方に合わせていかなければならないのです。

一般的に,家でできることは会社でもできると皆が思っています。ところが若い社員はそうは思っていません。家でできることが会社でできるわけがないだろう,と思っています。会社が新しい技術を提供できなかったら,自分でなんとかしようと考えます。新しい技術はまず消費者市場に届けられているため,それは十分可能です。

技術がどのような方向に動いているのかを理解するためには,消費者市場を理解する必要があります。昨日,私は秋葉原に行ってきました。この7年間たびたび秋葉原を訪れていますが,本当にワクワクする街です。

個人と仕事,企業でITの利用は境界が曖昧になってきています。企業が「会社のパソコンを個人用途に使ってはいけない」と言い切ってしまったら,社員は困ってしまうでしょう。みなさん,ノート・パソコンを持って出張します。そのとき,みなさんはノート・パソコンを仕事用と個人用といった形で使い分けるために,2台持っていきますか。そんなことは誰もしないと思います。企業が社員に残業を要求した場合,社員は仕事の合間に個人的な用事をパソコンで済ませられないと,困ることが多いでしょう。

これは止めることができない動きです。若い人がどんどん大人になって,年を取った人は引退していきます。新しい労働力が市場に入ってくれば,新しい考え方も入ってきます。サーチ・エンジンやインターネットに生まれたときからなじんでいます。世代によって,技術に対して期待するものが違います。技術が何をするか,技術が自分にとって何をしてくれるのか,どうやって仕事に利用したいのか,個人の生産性をどう上げたいのかという考え方や姿勢は,世代によって違います。優れた才能をしっかりと会社に引きつけておくためには,社員が技術に対して何を期待しているのかを理解し,それを提供しなければなりません。