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 プロセサから発生する熱は,大量のサーバーを設置するデータセンターやサーバールームに,高い空調能力を要求する。データセンターの空調設備を数多く手がけるNTTファシリティーズの植草常雄 環境・エネルギー部門長によると,1台のサーバーからの平均的な発熱量はこの4年間でおよそ3倍に増加しているという。その上,ブレード・サーバーのように1枚の基盤にプロセサ,メモリー,ディスクなどを収めた集積度の高い製品が登場したことにより,サーバールーム単位の発熱量は同じ4年間で6倍程度にまで膨れ上がっているというから驚きだ。

 この大量の発熱に対応するため,データセンターの空調設備は通常のオフィス空調とはまったく異なるテクノロジーを採用している。

キーワードはタスクアンビエント

 データセンターの空調設備を理解する上で重要なキーワードが,「タスクアンビエント」である。この言葉,照明などで聞いたことがある人も多いだろう。最近のデータセンターは,局所的な空調(タスク空調)と部屋全体を対象とした空調(アンビエント空調)を最適な組み合わせで設置することにより,効率的な空調システムを実現している。

 データセンターの空調の目的は,サーバーが安定稼働できる環境を維持することである。このためにはサーバーの冷却ファンの吸気温度を24時間365日,一定以下とすることが絶対条件になる。タスクアンビエントはこの条件をできるだけ効率的に,つまりできるだけ安い電力料金で実現するために考えられた手法である。例えば,発熱量の大きいサーバー周辺など熱が蓄積しやすい場所をタスク空調で局所的に冷やせば,アンビエント空調だけで冷却する場合に比べて,空調機からの風量を全体で15%程度減らすことができる。

 NTTファシリティーズは「日本国内のデータセンターで,全延床面積の3割程度の空調にかかわっている」(植草部門長)というデータセンター向け空調設備の最大手である。同社では,アンビエント空調用にフロアマウント型空調機,タスク空調用に天井マウント型とサーバーラックの中に設置するラックマウント型のクーラーを提供している(タスク空調は暖房が必要ないため,空調機ではなくクーラーとなる)。以下,NTTファシリティーズの空調設備を例に,タスクアンビエント空調の具体的な仕組みを解説していく。

部屋全体の空気の流れを正しく把握せよ

 通常のオフィス冷房では,天井近くに設置された空調機ユニットから下方向へ冷気が吹き出す。これに対し,データセンターのアンビエント空調では,フロアマウント型空調機からの冷却気流が,二重床の床下を経由して床上に吹き出す(図1)

 冷却気流を吹き出すために,二重床パネルには多数の孔が開いた「多孔二重床」を使用する(写真1)。多孔二重床には孔の開口率(パネル面積に占める孔の面積)でいくつかのバリエーションがあり,空調機の吹き出し口からの距離やサーバーからの発熱量を考慮しながら使い分ける。

図1 フロアマウント型空調機からの冷却気流は二重床の床下を経由して部屋中に届く。風量はサーバーの発熱量や空調機からの距離を考慮しながら,多孔二重床の開口率で調節する
図1 フロアマウント型空調機からの冷却気流は二重床の床下を経由して部屋中に届く。風量はサーバーの発熱量や空調機からの距離を考慮しながら,多孔二重床の開口率で調節する
写真1 開口率の異なる多孔二重床を組み合わせて,床下から冷却気流を効率的に供給する   写真1 開口率の異なる多孔二重床を組み合わせて,床下から冷却気流を効率的に供給する

 床下のケーブルが少ない,あるいは端までの奥行きが比較的短い二重床では,空調機の吹き出し口から離れるほど,二重床からの吹き出し空気圧は高くなる。逆に,床下のケーブルが多い,部屋の端までの奥行きがある二重床では,空調機の吹き出し口から離れるほど,二重床からの吹き出し空気圧が低くなる。サーバーの発熱量によっても,冷却に必要な風量は異なる。フロアマウント空調では,開口率の異なる多孔二重床を使い分けることで,同じタイプの二重床パネルだけを設置する場合に比べて送風量を20%程度減らしながら,「同程度の空調効果を得ることができる」(植草部門長)。

図2 サーバーの排気はラック上部とラック下部から前面へ回り込もうとする
図2 サーバーの排気はラック上部とラック下部から前面へ回り込もうとする

 冷房の効率を高める上でポイントとなるのが,熱を含んだサーバーの排気をサーバーが再び吸い込まないように,空気の流れを制御することだ。ラックに設置されたサーバーは,きょう体内の冷却ファンの働きで,ラック前面から空気を吸い込んで,ラック背面へ熱を含んだ空気を排出する。そこで,まずサーバーの背面と前面が向き合わないようにラックを設置し,サーバーの排気が天井からフロアマウント型空調機の吸気口へ流れるようにする。その上で,熱を含んだ排気がラックの背面から前面への回り込まないようにする。

 サーバーの排気がラック前面に回り込むルートには,(1)ラック上部からの回り込み,(2)ラック下部からの回り込み,という2つがある(図2)。このうち,(1)の回り込みは,ラック前面の多孔二重床からの冷却気流が,サーバーの冷却ファンが吸気するだけの風量を供給できない場合に発生する。このため(1)を防ぐには,ラック前面からの風量を増やす。ただし,冷却気流の風速が速過ぎると,多孔二重床の吹き出し口周辺の気圧が下がって(2)の回り込みを誘発する。風速を抑えながら風量を供給するためには,サーバー前面の通路幅(=多孔二重床の面積)を十分に確保する必要がある。

空調の消費電力がサーバーの半分以下なら「合格」

 一方,タスク空調には,天井マウント型やラックマウント型のクーラーがある。このうち天井マウント型は,発熱量の大きい高性能サーバーなど,多孔二重床からの冷却気流だけでは冷却ファンの吸気風量が不足する場所へ,集中的に冷却気流を供給する。

 ラックマウント型クーラー(写真2)は,サーバーといっしょにサーバーラック内に設置するタイプである。ラック内部で排気の回り込みが発生して,局所的に温度が上昇している場所で利用する。サーバーはラック背面に熱を含んだ空気を排出する。ラックマウント型クーラーは,この排気をラックの背面で吸い込み,ラックの前面へ冷却した空気を排出する(図3)。熱源ユニット(通常の空調機における室外ユニットに相当)は,ラックの最下部に設置。熱源ユニットとクーラーの間を行き来する冷媒は,万一こぼれてもサーバーがショートしないように,電気を通さない「フロリナート」という液体を使用している。

写真2 ラック内部に設置するラックマウント型クーラー。上から3段目と7段目がクーラー,最下部が熱源ユニット 
  図3 ラックマウント型クーラーはサーバーラック背面でサーバーの排気を吸い込んで,ラック前面に冷却気流を供給する
写真2 ラック内部に設置するラックマウント型クーラー。上から3段目と7段目がクーラー,最下部が熱源ユニット   図3 ラックマウント型クーラーはサーバーラック背面でサーバーの排気を吸い込んで,ラック前面に冷却気流を供給する

 データセンターやサーバールームの空調設備の消費電力は,タスク空調とアンビエント空調,開口率の異なる多孔二重床を適切に組み合わせることで,大幅に削減できる。その効率は,「サーバーやルーターといった機器本体の消費電力に対する,空調設備の消費電力の比率」が目安となる。NTTファシリティーズによると,機器本体の消費電力を100とした場合,空調設備の消費電力が50以下であれば「合格レベル」。3次元の気流シミュレーション・ソフトなどを使って細かく調整していけば,さらにその半分,25程度にまで減らせるという。