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日立ソフトウェアエンジニアリング
セキュリティサービス本部
本部長
中村 輝雄

日本経済は1960年代の「いざなぎ景気」を超える好景気が続いている。そうした中,IT業界はインフラを設計できるSEの不足に悩んでいる。実は仮想化技術が,インフラSE不足の解決策になりそうだ。第2回は一見関係が薄そうな仮想化技術と人材問題の関係をひも解いていく。(ITpro)



 日本経済は1960年代の「いざなぎ景気」を超える好景気が続いています。ただ,今回の好景気は過去の好景気期間と明らかに違う点があります。従来はほぼすべての分野で好景気の恩恵を受けたのに対して,今回の好景気は,好調な企業と不調の企業がはっきりしているのです。

 そうした中,IT業界はインフラを設計できるSEの不足に悩んでいます。

 日本の金融は不良債権の処理をほぼ終え,いま急激に攻めの経営に転じています。銀行,証券,保険の壁を越えた自由化の波は,当然ながらかつてないほどのIT投資に向かわせています。合併した銀行システムの統合から始まり,証券システムとの連動,システムの全面刷新,さらに政府からの内部統制への要求に対して,金融では大規模なシステム開発が後を絶ちません。

 こうした金融分野の旺盛なIT投資は,結果として市場の優秀なSEを囲い込むことになります。システム開発には,大きく4種類のエンジニアに分けることができます。

 第1にお客様の業務に精通してアプリケーションを設計する業務SEがいます。次に,そのアプリケーションを実装するエンジニアがいます。これにはアプリケーションをプログラミング言語で実装する開発エンジニアと,そのシステムを実行させるサーバーやストレージ,ネットワークを構築するインフラSEが必要になります。そして,システムをうまく稼動させるために運用設計する運用SEがいます。インフラSEと運用SEは同じチームであることが多いので,ここでは併せてインフラSEと呼ぶことにします。

インフラSEの不足が「システム崩壊」を呼ぶ

 現在,このインフラSEが圧倒的に不足しています。理由は二つあります。一つは,オープンなミドルウエア技術の登場で,習得すべき技術が非常に広くなったこと。もう一つは,サーバーやストレージの進化により,要求されるハードの知識が多様化したからです。

 数十万人の会員を有するオンライン証券取引システムにおいて,フロントのWebサーバーそれぞれにメモリをどの程度搭載するか。何台サーバーを並べるか。そのバックに設置する業務サーバーはPCサーバーにするのか,それとも大規模UNIXサーバーにするのか。何台配置すべきか。それではデータベース・サーバーはどう設計するか。ストレージはSANにするかNASにするか――。これら一連の検討項目について,すらすら最適解を出せる“スーパー・インフラSE”は,すでに全員が現在進行している「歴史的なプロジェクト」に割り当てられています。つまり,これから始まるプロジェクトに入ってもらえる優秀なインフラSEは,極めて少ないのです。

 このような人材に関する危機的な状況は,以前にもありました。1994年,米NetscapeがWebブラウザを提供し始めてから,いわゆるネット・ビジネスは爆発的なブームになりました。

 開発者は当時,C言語を使ってWebアプリケーションを書いていました。しかし,OSやミドルウェアの開発に適したC言語は,どんな開発者にも扱える言語ではありません。結局,開発現場では問題が続出しました。それまでのクライアント/サーバー型システムの開発と同じような状況が起きたわけです。メモリの解放漏れによるメモリ・リーク。OSやデータベースのバージョンとCライブラリとの相性の問題。何よりもポインタによるメモリのデータ領域の破壊,といったものです。当時も,C言語を使って開発チームをリードできる優秀な開発エンジニアは枯渇していました。

 1995年にJavaが登場したことで,それらの問題が徐々に解決へと向かうことになりました。Javaはスレッドの切り替えが軽く,ネットのシステムのように,多数のリクエストを処理するのに向いていたのです。

 ほかにもポインタを意識しないこと,メモリの解放を自動的にやってくれることなど,C言語で苦しめられていた問題をJavaで解決できそうだという希望が見えてきました。そこで,Javaの適用範囲はWebのフロントエンド・システムからバックエンドのシステムへと拡大していきました。筆者は,Java普及の理由は,こうしたC言語の課題が克服できたことだと考えます。決して,オブジェクト指向言語として優秀だということではないように思うのです。事実,オブジェクト指向は提唱されてからかなりの時間が経過した今でも,一部の優秀なエンジニアのみが扱える,難しいアプローチです。