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 前回のコラムで紹介したパレート図は,工程別の欠品数を把握するものでした。(筆者開発の原価管理システムである)『原価計算工房』では工程別のほか,材料別・製品別・顧客別・地域別でもパレート図を表示することができます。SQL(注1)さえきちんと組み立てることができれば,後はITの技によって,パレート図はいろいろな形で応用することができます。

「生産管理ではパレート図って,かなり重宝しますよね」
特に中小企業では,必須のアイテムといえます。あれを改善したい,こっちの効率を高めたい,結局,何から手を付けていいのかわからない,といったことが多くあります。在庫管理一つとっても,切実な問題といえるでしょう。すべての材料や製品を管理できるほど,中小企業には人も時間もありませんからね。

 そこで,どの在庫に重点を置いたらいいか,という点に狙いを定めたのが,在庫管理用のパレート図です。重点管理すべき在庫はどれか,どこを管理すれば一番効率的か,ということを探し当てる機能を持っています。在庫管理の専任担当者を置けない中小企業では,パレート図をはじめとして,ITを使った分析道具をフルに活用すべきでしょう。

 今回は精密機械メーカーZ社に導入している『原価計算工房』のデータを使って,部品別のパレート図を開いてみることにします。

 Z社では,部品1から部品4まで4種類の部品を扱っていると仮定します(図1)。

図1●部品別のパレード図
図1●部品別のパレード図

 前回のコラムで紹介したパレート図は,工程別の欠品数を把握するものでしたので,縦軸は数量ベースでした。今回のパレート図は在庫管理用ですので,横軸を部品名,縦軸を金額ベースに組み替えています。

 部品1から部品4までの部品が工場内に同じ数だけあるとしましょう。金額ベースで50%を占める部品1と,5%としかない部品4とがある場合,部品1の管理に重点を置いたほうが,効果が大きいことになります。

 パレート図では,折れ線グラフを描くことによって,部品をA,B,Cの3つに区分することから始めます。区分Aに属する部品1と部品2は日次管理を要するものとし,区分Cに属する部品4は年度末の実地棚卸のみを行ないます。区分Bに属する部品2は,月次や四半期での管理対象になります。

「区分するための基準は,あるのですか?」
『原価計算工房』のデータから判断すると,御社では,区分Aが70%~80%,区分Bが80%~95%,区分Cはそれ以外の部品,といったところでしょう。ただし,そうはいっても,こうした基準にこだわる根拠は何もありません。重要なのは,どの在庫が重要なのかという糸口をつかむことにあります。

「よし,早速,部品1と部品2の棚卸をしてこよう」
ちょっと待ってください。パレート図を作ったからといって,すぐに管理ができるというわけではありませんよ。

 在庫管理用のパレート図は,重点管理すべきものを絞り込むことはできますが,重点管理の対策をどのように立てるかについては,別のステップが必要になります。パレート図は,生産現場での意思決定を「形式的に」区分する機能しか持っていません。「行動基準」を別に設けておかなければ,生産管理はとんでもない方向へ走ってしまう可能性があります。

「ところで,部品の棚卸は仕方がないとして,貯蔵品なんかも棚卸の対象なんですかね?数が多すぎて,棚卸をするのにウンザリするんですけど」
もちろん,貸借対照表に計上する必要があるため,貯蔵品も棚卸の対象になりますよ。でも,ある手法を使うと,それを適用した棚卸資産はすべてを費用処理できるため,実地棚卸の対象から外すことができます。これは,貯蔵品だけでなく,材料や部品でも同じです。

「ええっ?! そんな便利な方法があるんですか?」
各種の会計基準や税法を逆さに読むと,いろんな裏技が浮かび上がります。ただし,内部管理が形式主義に陥ると,脱税や粉飾の手口に繋がりますので,そのような姑息な裏技は知らないほうが身のためでしょう。

 最近は,「内部統制」という用語を頻繁に見かけるようになりました。しかし,内部統制の「基準」や「ITシステム」をどれだけ議論しようとも,浅知恵を身に付けた者の行動が組織を崩壊させるのは,よくある話です。

(注1)SQL:Structured Query Languageの略


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■高田 直芳 (たかだ なおよし)

【略歴】
 公認会計士。某都市銀行から某監査法人を経て,現在,栃木県小山市で高田公認会計士税理士事務所と,CPA Factory Co.,Ltd.を経営。

【著書】
 「明快!経営分析バイブル」(講談社),「連結キャッシュフロー会計・最短マスターマニュアル」「株式公開・最短実現マニュアル」(共に明日香出版社),「[決定版]ほんとうにわかる経営分析」「[決定版]ほんとうにわかる管理会計&戦略会計」(共にPHP研究所)など。

【ホームページ】
事務所のホームページ「麦わら坊の会計雑学講座」
http://www2s.biglobe.ne.jp/~njtakada/