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 日本でのインターネットを活用したマーケティングのコンサルティング会社の草分け的存在であるネットイヤーグループ(東京都渋谷区)。1993年に電通国際情報サービスの米国におけるマルチメディア&インタラクティブメディア部門として活動を始め、98年に経営陣によるMBO(マネジメント・バイ・アウト)で電通から独立。99年から事業活動の中心を日本市場に移し、アサヒビールやカゴメ、第一生命保険、KDDI、INAX、セコムなどのコーポレートサイトや商品サイトの企画・構築支援を手がけてきた。同社の石黒不二代・代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)に、ブログを活用した口コミマーケティングの展望について聞いた。

ブログの普及によって、以前よりも商品や企業に対する口コミをある程度まで意図的に広げやすくなってきました。マーケティングの観点から見たブログのメリットとデメリットをどうとらえていますか。


ネットイヤーグループの石黒不二代CEO。米国カリフォルニア州の通称「シリコンバレー」地区でコンサルティング会社を経営後、1999年にネットイヤーグループに参画
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 まず大前提として、一般消費者が書くブログと、ビジネスパーソンが自社のウェブサイト上に書くブログは分けて考える必要があります。

 前者は、商品に関する口コミをすばやく世の中に広げるのに役立ちます。もちろん、商品を提供する企業は口コミの中身をコントロールしようとしてはいけません。消費者は「やらせ」みたいな行為に敏感です。正直に書いてもらったほうがいい。良い商品なら良い口コミをしてもらえるし、良くないところがあっても口コミを分析して商品を直せばいい。

 例えば、アイスタイルのコスメ情報サイト「アットコスメ」において、ある町工場で作っている石けんが話題になり、たくさん売れました。消費者の良い口コミがあったからこそ、起こった現象だと思います。

 これに対して、自社サイト上で社員がブログを書くと、その人がマーケティング部門の1スタッフだったとしても、企業を代表する意見だと読み手がとらえる傾向が日本はすごく強い。だから、社長会見の前に広報部門や秘書が作る想定問答集を用意するくらいの覚悟が、書き手に必要だと思います。例えば、こう書いたらどんな反応が起こりうるかを何パターンも想定しておき、それに応じた返答を書く、といった具合です。

 実際、私自身もブログは書いていません。ネットイヤーグループの経営者である私は、書き始めてしまうと、仕事とプライベートの情報の線引きがどうしても難しくなる。そこにリスクがあるからです。ブログを書くのは、よほどの覚悟が必要になります。不用意にやるべきではありません。

 もちろん、会社の戦略として、ある特定の社員を売り出したいなら話は別です。その場合、企業ブログは有効な戦術だと言えます。

 そもそもインターネットは、新しい技術やサービスをいち早く公開し、利用者の反応を見てブラッシュアップしていくところに、良さがあります。しかし、自社サイト上で社員がブログを書くことについては、現段階ではリスクが大きすぎる気がします。日本の消費者の多くは、企業戦略とブログに書かれた1社員の意見をすっぱりと切り分けてとらえるような感覚はあまりないと思うからです。

ブログといえば、ネットイヤーグループが企画・制作を手がけたものとして、ニフティのコーポレートサイトの仕掛けは面白いですね。「東京インタラクティブ・アド・アワード コーポレートサイト部門 銅賞」を2006年に受賞しています。

 コーポレートサイトのトップページにたくさんの鳥が飛び交う「ニフティのサイトに鳥を飛ばそう」のことですね。このページにトラックバックをすると鳥が1羽生まれて、画面上を飛び回る。この鳥をクリックすると、トラックバックしてくれた人のブログが表示される仕掛けになっています。現在は鳥ではなく紙飛行機が飛んでいます。

 実際にこのサイトを見ていただければ分かりますが、サイト全体をすごく明るく爽快な印象を与えるデザインにしてあります。企業サイト上でブログを展開するのであれば、例えばこのように機能やデザイン面で工夫をすれば、あまり変なことを書き込む人がたくさん出てこないで済むのではないでしょうか。

 いずれにせよ、ブログをマーケティングにどう生かしたらいいのか、という質問に対する答えは流動的です。当社の顧客企業などからも「この分野のカリスマと呼ばれる人にブログを書いてもらいたい」「ミクシィの話を最近よく聞くから、当社もミクシィを活用してみたい」といった意見がよく出てきますが、それが長期的に見たら本当に良いことなのかはまだ分かりません。 

 1つ言えることは、米国市場と比べると日本市場はインターネットをマーケティングに本格的に活用する歴史がまだ浅いという点です。米国企業はインターネットが普及し始めた90年代半ばの時点ですでに、インターネットは強力なマーケティングツールになると考え、様々な仕掛けをひねり出してきました。ひねりすぎてよく分からないものもありましたが(笑)。それがウェブ2.0時代になって一気に花開いた感があります。

 実は、1998年に当社が米国でインキュベータ事業をしていたときに出資したマーケティング会社に、検索会社大手から買収の打診がありました。これは商品の宣伝を口コミで広げてくれた人にポイントを付与する会社で、口コミをした相手がさらに口コミを広げた場合にもポイントが増えるようにしたのです。事業開始から1週間で10万人近い消費者をつかみ、すぐに買収提案が来ました。米国ではそのころからインターネットを活用した口コミマーケティングの可能性に強い関心を寄せる企業が多数いたということです。