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三城氏写真 筆者紹介 三城 雄児(みしろ・ゆうじ)
ベリングポイント マネージャー

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。都市銀行、ベンチャー企業、国内系コンサルティングファームを経て現職。特定非営利活動法人日本イーラーニングコンソシアム調査委員会委員長。民間企業や行政組織の人事改革に取り組むかたわら、組織・人事に関わる各種の講演・執筆など積極的な活動を行っている。

 この連載の第1回で、(1)法令・前例第一主義、(2)予算消化主義、(3)“避・当事者主義”という「3つの思考回路」から脱却して、一人ひとりの生産性が高い組織を実現すべきことを述べた。また、第2回では業績評価の導入により管理職の役割としてリーダーシップが重要になってきていることを述べた。今回の第3回では、第1回で述べた3つの思考回路から脱却するための人事制度改革の事例を紹介する。現在の公務員の人事評価制度は成果責任と処遇水準が連動しておらず、若い有能な人材にとって魅力が少ない。これからは、制度改革が求められるだろう。

 なお、説明の都合上、紹介する事例には筆者が修正を加えており、実際のケースとは若干の違いがあることをあらかじめ述べておきたい。

管理職の成果責任と求められる行動の明示

 独立行政法人は、その前身が国家公務員組織であることが多い。特に設立間もない法人では、管理職の大半を本省からの出向者が占めることが珍しくない。これら出向者は転籍出向という形をとって国から移ってくるのだが、2~3年で出向元に戻っていくのが通例である。独立行政法人に限らず行政組織は、このような方法で人事異動を実施しているところが多い。

 このことは、入社時からずっとその法人に勤めるプロパー職員からすると、次のように見えている。「また業務を何も知らない部長がやってきた」「あいつらに仕事を覚えさせるのは大変だ」「そういえば、この前来たばかりの部長も何もしないまま去って行ったなぁ・・・」「これじゃあ、現場職員の負担が増えるだけだ」。

 一方、出向してくる部長の言い分はこうだ。「部長だって忙しい。会議が多くてそのための資料作成に時間を取られる」「現場の職員は私よりも専門知識が豊富だから、おいそれと指導なんてできないし・・・」「本省に戻るまでは、目の前の業務をコツコツと真面目にやるしかないなぁ」。ここには、組織に本来あるべきである上司と部下という良い意味での緊張関係が成り立っていない。

 そこで、ある独立行政法人では、人事制度設計の指針として、「管理職の成果責任と求められる行動の明示」をうたって改革に取り組んだ。まず、全ての管理職ポジションの成果責任を、明らかにすることから始めた。具体的には、図1にあるように「ステークホルダー(利害関係者)の視点」「業務プロセスの視点」「人材育成の視点」の3つの視点でポジションごとの成果責任を洗い出させた。そして、それぞれの視点で定義された成果責任を達成したことがわかる指標を「Target」として定め、Targetを目指す際に管理しておくと良い指標を「Measure」として洗い出す。さらに、各成果責任を果たすために管理職に求められる行動を「Action」として定義している。(図2)

■図1 3つの視点で成果責任を抽出
3つの視点で成果責任を抽出
現場職員として人事制度を検討したいメンバーを公募したところ、多数の意欲的なメンバーが参画した。

■図2 管理職ポジション毎の成果責任と必要とされる行動を明示
管理職ポジション毎の成果責任と必要とされる行動を明示

 この取り組みにより、全ての管理職の成果責任が明確になった。成果責任として記述された内容は、業務分掌規程とは異なる。例えば、業務分掌規程には「申請業務の遂行管理」としか書かれていない。これでは、遂行されたかどうかをチェックすることだけが仕事ということになってしまう。しかし、「承認の迅速化」という明確な成果責任の項目があれば、部長は自部門の業務の実態を把握し、何が承認を遅くしているのかを特定し、様々な施策を企画・実行することで、審査期間の短縮を図らなければならないことになる。