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 ずいぶん前の話であるが、帰宅途中で「ヤバイ!」と思うことがあった。深夜、駅から自宅に向かって歩いていると、ノーヘルでバイクに乗った20歳前後の男が二人。バイクでうろうろしている。なんとなくいやな予感がした。予感は的中。こちらに近づいてくるといきなり「お金くれない」。「なんで? やだよ」。このやりとりで運よく?二人は去っていった。

 いやな予感がしたとき「もしものときは携帯電話で110番」と考えていた。しかし同時に「でも、この場所をどのように伝えればいいのだろうか」。毎日通っている道だが、住所はわからないし、住宅地で目印となるようなものはない。

 前置きが長くなったが、4月1日にようやく携帯電話からの110番や119番の緊急通報時に、発信者の位置情報を通知するようになった(「緊急通報時に携帯電話の場所を特定する機能、その対象地域が明らかに」。GPS機能を搭載する携帯電話ならば、その測位情報を通知する。「待ってました」というのが正直な感想である。ただし、対象地域はまだまだ限られているが。

 緊急通報の際に位置情報も通知するのは、2005年1月に総務省が示した方針に沿った動きである(「携帯からの110番に居場所の自動通知が義務付けへ、再来年4月から」)。携帯電話に限らず、IP電話サービスも緊急通報に対応するならば位置情報を通知する必要がある。

050番号のIP電話は放置?

 では、IP電話も同様の動きをしているかというと少し事情が違う。すでにIP電話の場合、緊急通報の際に位置情報は通知している。というより、IP電話による緊急通報は従来の加入電話と同等の機能を備えている。つまり、(1)発信者を管轄する都道府県警察本部などに接続できる、(2)通報者の位置が特定できる、(3)通話状態を保持、あるいは発信者番号を使って警察側などから呼び返せる、(4)IP電話網内で緊急通報を優先して接続する--というものである。

 この緊急通報への対応が、IP電話に03-XXXX-XXXXなどのいわゆる0AB~J番号を割り当てる条件となっている。0AB~Jの割り当てを受けるために緊急通報に対応している。

 050で始まるIP電話サービスは、緊急通報ができない。総務省の調査によると、2006年12月末でIP電話の利用番号数は1375万9000で、そのうち0AB~J番号は335万5000に過ぎない。つまり、緊急通報できるIP電話は、2割にも満たないことになる。

 携帯電話が普及しており、050番号のIP電話サービスを利用しても加入電話も併用していることが多く緊急通報は加入電話回線を使えるから、大きな問題ではないという見方がある。確かに、“大きな問題”ではない。しかし、ことが起こったときのことを考えれば、小さな問題でもできるだけつぶしておきたい。携帯電話の充電切れの可能性がある。VoIPルーターは110などの緊急通報をダイヤルしたときに加入電話を使うようになっている。しかし、それが正常に動作するかを事前に確かめることはしないだろう。

 米国ではIP電話サービスに位置情報を伴った緊急通報(911への発信)を義務付けている。E911(Enhanced 911)と呼ばれるもので、FCC(米連邦通信委員会)が最初は携帯電話サービスを対象に推進してきた。当初、携帯電話事業者はプライバシーや技術的問題、コスト増などを理由に反発していたが、2001年9月11日に発生した同時多発テロをきっかけに導入が進んだ。FCCは、次にIP電話サービスにもE911をサポートするように求めており、導入が始まっている(FCC,VoIP事業者を対象としたE911対応義務化命令を発効)。このため、E911の機能を、IP電話サービス・プロバイダなどに提供する企業も登場している。

 米国と日本では事情が違うところがあるが、「050番号=緊急通報できない」ではなく、050番号でも緊急通報できるようにするという選択肢が必要だと思う。