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 「仕事を辞めて何もしないでいると,5年以内に死にます。私はもうちょっと長生きしたいから働くことにしました」。これは某国産メインフレーマを退職された方から,数年前にお聞きしたセリフです。この方,定年退職まで数年を残して会社を辞め,IT関連の新会社を設立されました。団塊の世代より,少しだけ上の世代に属しています。

 統計的には何の裏づけもありませんが,「何もしないと,5年以内に死にます」という言葉にはインパクトがあります。いわゆる“2007年問題”で退職を間近に控えた団塊の世代の中にも,ひそかに同じ想いを抱きながら,退職後の身の振り方を考えている方は多いのではないでしょうか。

 実際には,個人差もありますが60歳と言えばまだまだ元気な人が多い。厚生労働省が2006年8月に発表した「日本人の平均余命(平成17年簡易生命表)(PDF)」という資料を見ると,2005年における平均余命(各年齢の者があと何年生きられるかの期待値)は,60歳男性で22.06年,60歳女性で27.62年となっています。暇を持て余して不摂生な生活を送っていれば,あるいは「5年で死ぬ」ことになるのかもしれませんが,普通は退職後20年程度は生きることになります。

 では,IT業界における団塊の世代は定年退職後,どのように過ごされるのでしょうか。若い世代から“勝ち逃げ組”とやっかまれるだけの退職金と年金を受け取って,とりあえず食うには困らない。それでも,頭と体が動くうちは現役で頑張りたい,という方も少なくないでしょう。

 ここ数年,記者が個人的に気になっているのが,オフショア開発を手がける海外のソフト会社への団塊の世代の方の転職です。たまたま,いくつかの例を目にしただけなので,どれだけ広がりのある現象かは現段階では分かりません。しかし,2007年からの団塊の世代の引退は,オフショア開発の広がりに一層の弾みを付ける可能性があります。

 団塊の世代は,技術者として第一線ではなくなっているにしても,プロジェクトの仕切りや顧客企業とのネゴシエーションについては,若い技術者より一日の長がある。日本企業の特性や商習慣も熟知している。日本のソフト市場を狙っている海外企業にとっては,日本側の窓口役としてピッタリなのです。ついでに,元の勤め先や現役時代に付き合いのあった顧客の仕事を持ってきてくれれば,言うこと無しでしょう。

 もちろん,団塊の世代といっても専門分野や能力は様々ですし,「(ある程度)英語ができる」ということは最低条件にはなるでしょう。それでも「定年後も働きたい」という集団が大量に供給されるわけですから,日本側窓口を探している海外のソフト会社にとっては,これまでよりも人材の確保はやりやすくなるはずです。

 IT業界における団塊の世代は,日本のソフトウエア産業の興亡とともに社会人生活を過ごしてきました。ひょっとしたら,その彼らが日本のソフトウエア産業における“オフショア・シフト”の最後の仕上げを手がけることになるのかも知れません。