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写真●総務省の無線局免許情報検索の結果。3月3日時点で12の実験局が設置されている。
写真●総務省の無線局免許情報検索の結果。3月3日時点で12の実験局が設置されている。
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 4月10日のアイピーモバイルの記者会見は,狐につままれたような何ともいえぬ雰囲気だった。弊誌,日経コミュニケーションを含め,アイピーモバイルが携帯電話事業参入を断念との報道が先行する中,杉村五男代表取締役社長は,会見の冒頭「アイピーモバイルは今後も,総務省より認定いただいた開設計画に基づき,事業化に向けてまい進する所存であります」と宣言。参入断念を否定した(関連記事)。

 筆者は4月8日,同社が参入を取りやめるとの記事を執筆した(該当記事)。この記事を書いた経緯は非常にシンプル。一次ソースであるアイピーモバイルのしかるべき地位にある広報担当者がそう話したからだ。コメントが取れたことで,それ以前に同社関連の関係者から得ていた「認定を返上する前提で動いている」,「理由は資金が集まらなかったから」といった情報が裏付けられ,速報とした。その時点で「4月10日に説明会を開催する」という情報も得,それを記事に含めた。結局,説明会を開催することだけが正しい情報だったことになり,結果的には読者に対しては誤報と言われても仕方のない形になってしまった。先行報道に対して「誤報と認識している」とアイピーモバイルの杉村社長は会見の質疑応答でコメントしたが,それに対しては反論するつもりはない。

 だが,この会見でアイピーモバイルが本当に携帯事業に参入するのかどうかがかえって分からなくなってしまった。森トラストがマルチメディア総合研究所が保有するアイピーモバイルの全株式を取得する,といったことが明らかになっただけで,その後の具体的な参入への道のりなどは示されなかった(関連記事)。「(本当は)何も合意してないんじゃないですか」。そんな質問まで飛び出す会見だった(記者会見の全内容はこちら)。当日話をしたアイピーモバイルの関係者ですら,「正直混乱している」と語っていた。

 とはいえ,代表取締役である杉村社長自ら事業化に向けてまい進すると述べているのだから,筆者としては今後の同社の動きをこれまで以上に注意深く慎重に見ていくほかない。

 もちろん,今後もアイピーモバイルに対する取材活動は継続する。ただ同時に,同社の動きを裏付ける別の資料も不可欠だ。以下では客観的な公開情報を基に,今後のアイピーモバイルの動きがチェックできる資料や手段を提示したい。なお,これらは誰もが入手・閲覧できるものである。

株式異動のチェックは上場企業に当たる

 杉村社長はアイピーモバイルへのマルチメディア総合研究所の出資比率について会見では非公表とした。だが,マルチメディア総合研究所が持分全株を森トラストに譲渡することとなったため,森トラストの子会社である上場企業が4月10日に情報を開示。69.23%という数字が明らかになっている(パルコの資料リーガロイヤルホテルを運営するロイヤルホテルの資料)。森トラストがアイピーモバイルの株式の約7割を所有していることが,これらの資料から明らかとなる。今後大きな株式の異動があった際も,同様の方法で調べることが可能だ。

総務省への開設計画の変更申請に注目

 アイピーモバイルはサービス開始を延期するとした以上,総務省に対して認定を受けた特定基地局開設計画の変更を申請しなければならない。その点に関して,アイピーモバイルの竹内一斉執行役員は「今回体制が変わるので,それに基づいてあらためて変更申請したいと思う」と述べている。

 アイピーモバイルが2005年11月に総務省から認定を受けた計画では,2006年10月1日に運用開始(サービス開始)予定であり,運用開始から5年後の年度末加入数見込みを1160万としている(基地局開設計画に関する総務省の報道資料)。1160万というアイピーモバイルの加入数見込みは,同じタイミングで認定を受けて既にサービスを開始したイー・モバイルの加入数見込みの2倍以上である。

 実際,変更の申請をするとどうなるか。申請が認められた場合,総務省はその情報を公開する。他社の前例を見てみよう。イー・モバイルは基地局設置場所確保が難航したことなどを理由に2007年2月13日,総務省に対して開設計画変更の認定申請をした。その結果,変更が認められ3月13日に総務省から変更認定の報道資料が出されている(総務省の報道資料)。変更したのは認定から5年後の年度末における特定基地局数,運用開始予定期日,運用開始5年後の年度末の加入数見込みである。運用開始(サービス開始)期日は2007年3月15日だったものを同年3月31日に延期した。そして変更通り,3月31日にサービスを開始した(関連記事)。

 アイピーモバイルは2006年7月28日にサービス開始時期を2007年春に延期すると発表したものの(同社報道資料の3ページ目に延期を掲載),4月10日に至るまで総務省から変更を認定したとの報道資料は公開されていない。今後,アイピーモバイルが計画の変更を申請し総務省がそれを認定すれば,申請から1カ月後には資料が公開されるはずだ(総務省の報道資料サイト)。

基地局数を確認する

 会見で杉村社長は,工事が完了した基地局数を「正確に言うと7局完了している」と説明した。場所は都内である。携帯電話事業のように免許が必要な基地局については,総務省がその情報を公開しており,誰もが情報を確認できる(総務省の無線局免許情報検索)。

 この検索情報は約2週間ごとの更新で,4月12日時点では3月3日現在のものが検索対象である。検索の際,所轄総合通信局に「関東総合通信局」,無線局の種別に「基地局(PHS除く)」を選択して送信し,次の画面の免許人名称に「アイピーモバイル」と入力すれば該当時点での基地局数が分かる。その結果,アイピーモバイルの基地局数はゼロである。

 もっとも,無線局の種別を「実験局」にすれば都内に12局の基地局が存在する(写真)。3月3日時点では,アイピーモバイルの基地局はすべて実験局だったことが分かる。ただしその中の5局の免許の有効期間は2007年3月7日まで。既に免許が失効しているため,現存するのは有効期間が5月7日までの7局であることが類推できる。これは,杉村社長の述べた数値と一致する。また,この基地局はすべて千代田区に存在することも検索結果から分かる。こうした公開情報が,同社がどういったエリア展開を今後進めるかをチェックする際の参考になる。