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中堅・中小企業はこれからJ-SOX対策に本腰を入れる。その時に、ERPで解決したい経営課題とJ-SOX対策をどう両立させるのか、ユーザー企業を納得させる提案が求められる。

 今後、J-SOX対策が必要なユーザー企業が、ERP導入の際にソリューションプロバイダにまず求めるのは、納期に対する提案だろう。「何とか2007 年度内に導入を終えたいのだが」「2008年度の稼働で対策は間に合うのか」。ユーザー企業からはさまざまな要望・疑問が出てきそうだ。

2007年度末が第一の節目

 ERPが2007年度期末までに本番運用を迎えることができたなら、財務諸表監査の一環で、監査人がIT統制をチェックするはずだ。つまり、監査人から ERP導入後のIT統制に対する評価を聞けるので、J-SOX初年度に適確な改善がしやすいメリットがある。稼働時期が早くなれば、より長い時間を文書化や運用が安定するまでに充てることができる(図3)。

図3●2007年度中に稼働させたシステムは監査負担を軽減できる
図3●2007年度中に稼働させたシステムは監査負担を軽減できる

 2008年にずれ込んだとしても上期中のカットオーバーなら、内部統制の経営者評価・監査に滑り込むことはできる。ただ、「2008年度に稼働がずれ込むなら、ERPのビッグバン導入は難しい」と、複数のERPベンダーが指摘する。大規模システムの変更は文書化などの作業に加え、システムの安定稼働に十分な時間を確保する必要があるからだ。

 このためビッグバン導入なら2007年度内に完了したいが、そろそろスケジュール面で厳しい。このために、ERPの各モジュールを順次導入するのが、これからの現実解になりそうだ。最初の監査までにどこまでをERPでカバーするかが、ソリューションプロバイダの提案の勝負どころになる。

業務プロセスの改善に挑戦

 J-SOX対応をにらんでERPの部分導入を提案する際のポイントは、どのモジュールから導入するかにある。

 もちろん、会計モジュールはJ-SOX対策と“相性”が良い(図4)。「レガシーシステムや古いパッケージを使っているなら、まずは会計からの導入を勧める」(大塚商会スマイルプロモーション部マーケティング企画部の石井ふみ子次長)。新しい会計基準への対応や、処理を自動化した範囲が広い内部統制上のメリットに加えて、決算のスピードアップを迫られている顧客にも勧められる。

図4●会計モジュールと、販売管理などの現場のライン業務のモジュールを提案するメリットとデメリット
図4●会計モジュールと、販売管理などの現場のライン業務のモジュールを提案するメリットとデメリット

 ただしソリューションプロバイダにとっては「機能の差異化が難しく、コモディティ化が進んでいる」(NTTデータシステムズSCAW事業本部パッケージ開発部の田中宏治部長)ため、それほどうま味のあるビジネスではない。その上、「経営者には現場の業務改革につながるといった経営上のメリットが薄く、魅力のない提案になってしまう」(NECネクサソリューションズマーケティング部宮越一郎グループマネージャー)ところが難点だ。

 このため、販売管理や購買などの現場業務系のソリューションが強みならば、やはり得意分野で競合と差を付けたい。J-SOX対策から見ても、販売管理システムなどをスムーズに導入できればその効果は大きい。内部統制上の大きな不備は、「仕分け集計が主体である決算プロセスより、受発注や出荷、検収といった現場業務にあるケースが多い」(新日本監査法人の榊氏)からである。

 課題は、顧客の業務プロセスを見直すことが伴うので、構築にも運用定着にも時間がかかる点だ。現場を大がかりに巻き込むだけに、経営者の強い支持を得るように商談を進める必要がある。

フィット&ギャップを省く

 販売管理システムなどの商談で、J-SOX対策として各社が用意している提案は、ERPをノンカスタマイズで導入する場合と、カスタマイズして導入する場合。それぞれアプローチが異なる。

 まず、ノンカスタマイズで導入するソリューションを提供する代表例がMDIS。2006年12月に「mySAP ERP」をベースに、電機・電子機器メーカーに特化した「製造業標準モデルシステム」を販売した。標準で用意した1種類のテンプレートをそのまま使ってもらう。その代わり、(1)フィット&ギャップ分析を排し、6カ月での本番導入を実現、(2)文書のひな形やワークフローなど、J-SOX対策向け機能をあまり手を加えずに活用できる―といったメリットを提供する。

 一方で、ユーザー企業ごとにパッケージのカスタマイズを強化する提案もJ-SOX対策の観点から有効だ。業務改革につながらずIT統制を弱めてしまう側面もあるが、現在の業務プロセスを変えないので、ERP導入前からJ-SOX対策のための文書化に取りかかりやすいのだ。問題は納期だが、テンプレート活用によりカスタマイズしたとしても比較的短期間で導入できる。SAPジャパンの大久保シニアアナリストは、「既存の業務プロセスをほとんど変えずに済むように、テンプレートを徹底的にカスタマイズするパートナーのビジネスが好調」と語る。

外部委託がIT統制の切り札に

 J-SOXを受けて、中堅・中小市場ではアウトソーシング需要が拡大する可能性にも注目したい。監査人がIT統制で注目する重要ポイントはアクセス管理。内部統制の分野ではコンピュータのID管理に加えて「権限分掌」の意味を持つ。例えば取引の当事者、それを承認する上長、データを入力する人など、職務を分けて相互牽制が働いているかをチェックする。

 少ないスタッフでシステム部門を運営する中堅・中小企業の場合、システム運用を外部に委託すること自体が権限分掌になる。こうした点をソリューションプロバイダがユーザー企業に訴求できれば、単にERPソフトの販売・システム構築にとどまらず、ERPビジネスのストックビジネス化という“理想のパターン”に持ち込める。

 例えば、中堅・中小市場に向けてアウトソーシングを提供するNECネクサソリューションズ。「SAP Business One」を対象にしたERPの運用受託サービス「らくらくアウトソーシングパック」を販売する。単に運用サービスを提供するだけでなく、そのプロセスの監査に耐え得るだけの文書化や報告書を作成するサービスも一体化した。ユーザーにしてみれば、システム運用だけでなく、文書化や経営者評価といった内部統制に必要な作業も外出しできる。「顧客がJ-SOX対策で“楽をできる”ソリューション」としても売り込むことができる。

親会社が商談に絡む

 中堅・中小市場におけるERP商談で、これから確実に起こる変化も提案に生かしたい。中堅・中小企業の基幹システム刷新案件に、大手ユーザー企業の及ぼす影響力が増してくるのだ。

 まず、「ベストオブブリード」という考え方で子会社ごとに進んでいたERP商談に、親会社の意見が幅を利かせるようになる。決算のスピードアップや親会社自身のJ-SOX対策のためである。また、「大手企業では決算の早期化などを図るため、取引先企業の基幹システムに対しても条件や注文を出す傾向が強まっている」(NECネクサソリューションズの宮越グループマネージャー)。

 実際、既に親会社が子会社に対して推奨するERP製品を絞り込む動きが出ている(図5)。会社の規模や事業の違いを無視した統一化はマイナスの側面もあり、「お仕着せを嫌った子会社のシステム部門が親会社と戦う。そんな話があちこちから聞こえてくる」(ある営業担当者)。

図5●J-SOX対策から子会社群でシステム統一の動きが加速
図5●J-SOX対策から子会社群でシステム統一の動きが加速

 しかし、振り子は「グループでの標準化」に振れそうだ。顧客企業だけでなくその親会社や、同じグループ子会社などにも商談相手を広げていかなければ、検討対象に入らないことすらある。

 ただし、親会社の基幹システムが「SAP/R3」や「Oracle E-Business Suite」であったとしても、こうした大企業向けに強いベンダーの製品が優位になるわけではない。現実にはライセンス料が高いSAP製品に対し、より低廉な国産製品を子会社群に適用している企業グループは多い。「子会社の企業規模や業態に応じて、3~4種類の製品を使い分けるパターンも多い」と言う。

 オービックビジネスコンサルタント(OBC)はこの市場を狙う1社。「奉行」シリーズとしてシェアドサービスに対応した製品を、連結決算やJ-SOX対策のソリューションとして提供する。中小下位企業向け製品の認知度が高いOBCだが、「ERPとしてではなく財務のシェアドサービスなら、100億円規模の企業にも適用できる」としており、より売上高の大きい企業層への進出を急いでいる。