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 「市場におけるITスペシャリストの需要は、2010年まで毎年10%ずつ縮小していくだろう」

 この発言は、大手リサーチ会社、米ガートナーのピーター・ソンダーガード リサーチ部門最高責任者によるものだ。

 日本市場を見る限り、上記の一文は当てはまらないように思える。金融機関が巨大プロジェクトを相次いで始めたこともあって、2006年11月現在、日本市場においてITスペシャリストは払底している。毎年10%までは伸びないものの、間違いなく需要は増えつつある。

 10月半ば、ソンダーガード氏にお目にかかる機会があった。早速、「ITスペシャリストの需要は毎年10%ずつ縮小」という予測について解説してもらった。

(聞き手は谷島 宣之=経営とITサイト編集長)


「市場におけるITスペシャリストの需要は、2010年まで毎年10%ずつ縮小していくだろう」と発言されている。ここでいうITスペシャリストとは何か。

 企業の中にあるIT組織に所属するIT専門家を指している。システムの設計・開発・運用を手掛けたり、セキュリティ対策を講じる専門家、中でも技術に特化した専門家である。

何を持って縮小すると予測したのか。

 企業が年間にITへ投資する予算がある。この中におけるITスペシャリストの人件費比率はこれまで15%程度であった。我々の調査ではこの比率が、年にして10%程度減っていく傾向にある。

 企業によって色々なケースがある。ある企業は、社内で抱えていたシステムの運用やデータセンターの管理業務をアウトソーシングする。インドのITスペシャリストを活用する。これまで以上に出来合いのパッケージ・ソフトやサービスを利用する。

これまで企業の中にいたITスペシャリストが、外部のIT企業に異動するということか。

 必ずしもそうとは限らない。IT専門組織にいたITスペシャリストが、企業の事業部門に異動し、そこで仕事をするようになると、IT予算上のスペシャリスト人件費は減って見える。実際、こうした動きは増えている。つまり、ITスペシャリストの需要減をアウトソーシングの広がりとだけとらえると本質を見誤る。

 本質は、企業がビジネスに密着した形でITを使いこなそうとしており、技術に特化した専門家より、ビジネスにITを適用できる人材を求めているということだ。同じ人件費を使うなら、ビジネススキルとITスキルを持った人材のほうを手に入れようとしている。

事業部門に移ったITスペシャリストはどのような仕事をするのか。

 典型的な仕事として、ビジネスプロジェクトマネジャがある。情報システムの仕事も伴うことが多いが、ITプロジェクトではない。例えば、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)のプロジェクトマネジャやリーダーがそうだ。プロジェクトの目的は、顧客満足度の向上や定着率の向上であり、そのための施策を考え、必要なら情報システムを手配する。

 ビジネスプロジェクトとそのマネジャは、ビジネスの結果によって評価される。予算と期限通りに動かせば評価されるITプロジェクトとはそこが異なる。こうしたビジネスプロジェクトは増えている。ただし、これをどのように数値で計るか。いわゆるIT予算には、含まれない。

幅広いスキルを持った人材はどこにいるのか。

 簡単ではないが、ITスペシャリストの中から、ビジネスプロジェクトもこなせる人材を見出し、経験を積ませ、育成する。こうした人材をまた、IT組織に戻す。もともとIT組織にいて、ビジネスサイトに行き、IT組織に戻った人材が、IT組織の15%を超えると、ビジネス志向のIT組織になる。ガートナーはこう見ている。

職種を超えた人事ローテーションは、米国では難しいが、日本では当たり前である。日本企業のほうが、ビジネスとITに精通した人材を作りやすいということか。

 可能性があるかもしれないが、詳しくリサーチをしてみないといけない。ビジネス側の人がたまたま一定期間、IT組織にいてまたビジネスへ戻ってしまうとする。これはこれで意味があるだろうが、IT組織に変化は起きない。

 やはり、IT組織からいったん出て、IT組織へ戻った人員の比率が重要とみている。日本のIT組織について、その観点からリサーチをしてみたいと思う。


 「IT専門家は毎年1割減る」というのは、「ビジネスとITが分かる人材が求められる」を言い換えたものであった。人騒がせな、と立腹される方もあろうが、「ビジネスとITが分かる人材が必要」という表現では、人を驚かすことはできない。

 ソンダーガード氏は、CIOやITリーダーといったどちらかと言えばIT専門家が集まっている場所で「IT専門家は毎年1割減る」と述べていた。あえて刺激的な物言いをして、ITリーダーの意識改革を訴えたわけである。

 言うまでもないが、ソンダーガード氏はITスペシャリストの重要性を否定しているわけではない。専門家は必要であり、重要である。

 ただし、企業内にいるビジネスとITが分かるリーダーが専門家に仕事を依頼する形になっていくので、専門家は一企業に張り付いている必要はなくなる。集中して仕事をこなせるから、優れた専門家に仕事が集約され、結果として専門家の数は増えない。

 なお、ピーター・ソンダーガード氏の発言は、EnterprisePlatformというサイトにある『変わらなければ生き残れない』というコンテンツの中に出ている。近々、さらにソンダーガード氏の講演内容を別途掲載する予定である。