PR

 「リスクをとる」という題名通り、本欄にはリスクマネジメントに関するコラムや寄稿を収録していく。第一回目の題名が、「明るく、楽しく、前向きに」ではあんまりのようだが「リスクマネジメント」とは本来、前向きな積極的な活動である。その点を強調しようと思い、あえてこのような題を付けてみた。

 「リスクマネジメントは削除したほうがいいでしょう」

 3年ほど前、新しい雑誌を作ろうとして、様々な方に意見を伺っていた時のことである。製造業出身のあるコンサルタントにこう言われた。作ろうと思っていた雑誌のコンセプトは、日本のイノベーションを推進する、という勇ましいもので、取り上げるテーマとして、ビジネスモデル作りやマーケティング、テクノロジーマネジメント、知的財産権戦略、そしてプロジェクトマネジメントを考えていた。

 雑誌の内容を説明する絵を描いて、コンサルタントに説明し、「プロジェクトマネジメントのところで、リスクマネジメントにも触れたほうがいいでしょうか」と聞いたところ、先のように指摘された。

 「なまじリスクマネジメントという言葉を出すと心配性の人がでしゃばるから、あえて触れる必要はありません。乱暴な物言いですけれど。そもそも、リスクをとらないことが日本企業の最大のリスクです」

 確かに乱暴な意見だが、このコンサルタントの意図はよく分かった。リスクマネジメントの重要性や方法論を説くと、それにこだわるあまり、思い切った挑戦ができなくなる危険があるということだ。もともと日本企業、特に大手企業は概して慎重である。単に意思決定が遅いだけ、と酷評する人もいるが、ここでは慎重と呼ぶことにする。

 慎重も結構だが、新しいことに取り組むには、もう少し思い切ったやり方をとるべきだ。そこにリスクマネジメントを持ち込むと話が反対の方向に向かいかねない。これがそのコンサルタントの言いたかったことである。

 もちろん、勝算がない案件に突っ込めとか、準備不足でもかまわない、と言っているわけではない。リスクマネジメントとは本来、考えられるリスクを列挙し、それが起きた時の影響と対策を考え、備えが必要なリスクについてはできる限りの準備をしておくことを指す。できる限りの準備だから、準備万端というわけにはいかない。最後はリスクをとって突っ込むのである。

 以上のような考え方は、日本企業において今一つ浸透していないように思えてならない。先に述べたように、リスクを考えすぎて動けなくなる企業がある一方、リスクを洗い出す作業を軽視する企業もある。先のことなど分からない。それほど綺麗にいくはずがない、と言い出す人が出てくるからだ。まったく動かないか、目をつぶって突っ込むか、どちらも思考停止という点は同じである。

 現在、企業をとりまくリスクに関連する案件はたくさんある。情報関連に限っても、システム障害、開発の失敗、情報漏洩、内部統制など、たちどころに数えられる。どれ一つとっても大変な案件である。ただ、失敗事例から学ぶことに加え、「明るく、楽しく、前向きに」取り組んでいる事例も紹介していきたい。

(谷島 宣之=経営とITサイト編集長)