PR

「人間関係はどうも苦手で」「顧客に課題を聞いても、教えてくれない」「解決策を提案しているつもりだけど、負けてばかり」「最後の一押しができなくて」――このような悩みを抱えた営業パーソンが増え続けています。この連載では、ソリューション営業の現場で陥りやすい問題現象を取り上げ、営業パーソンへのソリューションを提示してまいります。

 ソリューション営業の各論に入る前に、筆者が所属している日本コンサルタントグループで定義しているソリューション営業について明らかにしておくことにします。

 「ソリューション営業とは、顧客との関係を向上させ、顧客の課題解決を提案し、相互利益を創出する活動である」

 この定義への理解をより深めていただくために、四象限の営業のスタイル分類を用いてソリューション営業の説明をすることにします(図1)。

図1●四象限でみた営業のスタイル分類
図1●四象限でみた営業のスタイル分類

 この営業のスタイル分類では、市場(顧客)への働きかけのあり方を縦軸にとります。つまり、営業パーソンが主体的に顧客に働きかける営業行動をとっているのか、それとも顧客からの引き合いなど、営業が受け身になっているのかを尺度としています。一方、横軸には、提供しようとしている商材の特性をとっています。ハード中心、プロダクト中心のモノ売りなのか、あくまでも顧客の課題解決に軸足を置き、既製のプロダクトやサービスにとらわれないコト(ソリューション)売りなのかを尺度としています。

 つまり、ソリューション営業のスタイルとは、顧客本位のソリューションを営業サイドから積極的に提案する活動であるということができます。

 ソリューション営業は、「プランニング」「リレーション」「ニーズ把握」「プレゼンテーション」「クロージング」「アフターケア」という6つのプロセスに分けて考えることができます。図2に示した通り、プランニングを中心として、リレーションからアフターケアまでのプロセスをサイクルのように循環させるのが、ソリューション営業の全体のプロセスです。

図2●ソリューション営業の6つのプロセス
図2●ソリューション営業の6つのプロセス

ソリューション営業では弱点の克服が成功の鍵

 プランニング以外の5つのプロセスは、顧客との接点にある活動です。つまり、プランニングに基づいて顧客との接点活動が循環的に行われていることを意味します。プランに基づいて顧客との接点活動を行い、その結果を踏まえて次のアクションをとるという意味では、営業活動のPDCAサイクルということができるでしょう。また、プランニングのプロセスで事前に仮説を立て、顧客との接点活動を通じて仮説を検証する活動であるということもできます。

 ソリューション営業力を強化するためには、営業プロセスのどこがウイークポイントになっているのかを把握し、補強することが大切です。人材育成の一般論では、強みを伸ばして弱みを克服するといいますが、ソリューション営業についていうならば、プロセスの弱みを克服しない限り、次のプロセスに商談を進めることができません。

 従って、営業パーソンの各プロセスを把握したうえで、ウイークポイントを補強することがソリューション営業強化の鉄則なのです。図3は、筆者がソリューション営業の診断ツールを活用して、営業プロセスの強みと弱みを分析した一例です。6つのプロセスの中で、どのプロセスがウイークポイントになっているのかを示すとともに、各プロセスの主要機能を3つに分けて点数化し、強化すべき営業機能が一目で分かるようになっています。

図3●営業プロセスの強みと弱みの分析例
図3●営業プロセスの強みと弱みの分析例  [画像のクリックで拡大表示]

 この連載では今後、筆者のソリューション営業力強化のためのコンサルティング経験に基づいて、それぞれの営業プロセスごとに強化すべきポイントとその方策を、ソリューション営業の“道具”としてご紹介いたします。

リレーション強化のための道具とは

●リレーション強化の道具
●リレーション強化の道具

 まずは、リレーションのプロセスです。ソリューション営業の強化に取り組む場合、顧客の解決すべき課題やソリューション提案の内容ばかりがフォーカスされ、日の目を見ることが少ないのがリレーションのプロセスです。ところが、実際に営業パーソンの活動を分析してみると、顧客とのリレーションが構築できていないばかりに、その後の営業活動がうまくいっていないことが多いのに驚かされます。

 プレゼンテーションにおける提案内容の良し悪しは、具体的に顧客の評価を受けることになりますし、ヒアリング段階で顧客の課題を把握できているかどうかも、後から検証することは可能です。ところが、顧客とのリレーションが構築できているかどうかは、なかなか表面に出てくることがありません。リレーションに問題があれば、営業パーソンに対する苦情という形で表面化することはあるとはいえ、リレーションという強いきずなができているかどうかは、表面的には判断できないからです。

 リレーション状況の判断は、結局のところ営業パーソンの自己評価に負うところが大きくなりますが、それだけに営業パーソンには余念の無いリレーション活動に取り組んでもらいたいところです。

◆道具1:共感的な会話術

 私は営業力強化のコンサルティングを行う中で、営業パーソンと同行して実際の商談に立ち会う機会があります。こうした同行を通じてリレーションができていないと感じるのは、本音で会話をしておらず、冷たい空気が漂っている商談です。このような冷たい商談を共感的な商談に変えるには、取り上げる話題と感情交流、表現力の3つがポイントになります(図4)。

図4●「共感的な商談」を行うためには、話題、感情交流、表現力が重要
図4●「共感的な商談」を行うためには、話題、感情交流、表現力が重要

 顧客と営業パーソンの会話を聞いているだけで、親しさの度合いが判断できるものです。親しさを込めた言葉遣いもその一つですが、一番のポイントは商談目的以外に交わしている話題です。お客さまと営業パーソンとの間に親しい関係ができている場合、本来の目的であるビジネスの話題とは別に、共感的な会話があるのです。顧客の個人的な話題であったり、最近起きた社内事情の変化などが話題になったりすることもあります。

 これから顧客と親しい関係を作ろうとするならば、親しくなれる話題を営業パーソンから投げかけることが大切です。顧客と親しくなれる話題の一つに、顧客と営業パーソンに共通した話題が挙げられます。同郷であるとか、出身校が同じとか、趣味が同じだと親しみも倍増しますし、同じ経験をしたことがあれば相手を身近に感じるものです。従って、営業パーソンは顧客との共通点を探し出し、話題にしていく努力が必要なのです。

 顧客との共通する話題ではなくても、顧客にとって身近な話題や最近起きた話題は共感を得やすいものです。ITに関する話題はもちろんですが、顧客の業界に関する話題や最近の出来事など、共感を得られそうな話題探しもリレーションづくりの道具になるのです。

 共感的な会話をするためには、自分の気持ちを伝えたり、相手の感情に接したりすることが大切です。「本当に感謝しています」とか、「それは大変ですね」というように、会話の中で喜怒哀楽を意識的に表現することで、顧客との感情交流を深めるのです。

 顧客の話に対する共感を表現する最大の道具は、うなずきと相槌です。相手の話に共感した場合、自然にうなずいたり、相槌を打ったりしているはずです。その共感行為を意識的に使いこなすことにより、相手とのラポール(信頼)を作り上げることができるのです。

◆道具2:接点活動倍増術

 「人は会えば会うほど好意を持つ」という『ザイアンスの法則』にもあるように、顧客とのリレーションを強化するためには、接点活動を増やすことが基本です。そのためには、顧客を訪問した際に「あと一人、あと一件」を合言葉にして、面談者の数を増やすことを心がけるようにします。

 営業パーソンが顧客を訪問する場合、IT部門の担当者が窓口になっていることが多いはずです。状況によっては、購買や資材部門が窓口になっていることもあるでしょう。日常の営業活動は窓口担当者との面談がほとんどでしょうが、担当者以外にも面談しておきたい顧客はたくさんいるものです。

 その第一はCIO(最高情報責任者)です。通常の情報収集や打ち合わせ商談は、担当者レベルで済むことが多いとしても、最終意思決定を下すキーパーソンとの接触を日ごろから心がけているかどうかは、クロージング段階で大きな差になって表れます。多忙なCIOとの面談を継続的に行うのはなかなか難しいと思いますが、営業パーソンの上司や幹部といった上位者との同行が、CIO面談の格好の“道具”になります。

 CIOばかりではなく、IT部門にはマネジャーをはじめ担当者が何人もいるはずです。営業活動の担当窓口が特定されている場合であっても、他の担当者と会って情報を得ておくことは、決して無駄なことではありません。通常の商談が終わったとき、「あと一人、あと一件」の気持ちで、別の担当者と会う努力をするだけで、面談件数は倍増するのです。

 顧客との接点活動は、IT部門に限った活動ではありません。むしろ、顧客が解決すべき課題は他の部門にあり、その課題を把握する活動こそがソリューション営業の基本です。ただ、営業パーソンが窓口であるIT部門以外の部署に訪問するには、訪問するための理由付けが必要です。現状のシステムの状況把握をするために、エンドユーザーにヒアリングするという名目があれば、営業パーソンは自由に顧客内の各部署を訪ねることができるでしょう。しかし、営業パーソンが自由に他部署を訪問できない場合、「紹介依頼」が他部署アプローチの“道具”になります。

 窓口担当者に他部署の顧客を紹介してもらえれば、正々堂々と他部署に顔を出すことができます。ただ、担当者が紹介してくださる顧客は、通常同じ組織階層の人が多くなります。ですから、紹介をお願いする場合は上位者に依頼するほど、紹介先も上位者に会える確率が高まります。

 担当者に他部署の人を紹介してもらう場合、会いたい相手を具体的に特定することが大切です。「○○部門に伺いたいのですが、どなたかをご紹介いただけませんか」というよりも、「○○部門の△△部長をご紹介いただけませんか」と会いたい相手を具体的に挙げるのです。紹介を依頼された担当者の立場になれば、相手を具体的に示された方が、紹介できるかどうかの判断がしやすく、誰を紹介しようかと考える手間が省けます。営業パーソンにしてみても、会いたい本人を紹介していただくことができますから、一石二鳥というわけです。

 紹介をお願いする数が多いほど、営業パーソンの新規面談件数が増えることになります。新しい顧客に会える数だけ、新しい生情報を入手できる可能性が広がるのです。従って、営業パーソンは何度でも、担当者に紹介をお願いする努力をすべきです。

 「何度も紹介をお願いするなんて、何か申し訳なくてできない」と感じる営業パーソンもいるでしょう。面談できた場合には、その結果を担当者に報告することが大事です。現場ではどのような現象が起きているのか、課題や要望はどのようなことがあったかを報告することは、IT部門の担当者にとっても大きなメリットになるはずです。担当者は営業パーソンのことを「熱心に現場の情報収集を行い、課題解決に取り組もうとしている」と評価してくれることでしょう。

川島 章司
日本コンサルタントグループ 経営コンサルタント
ソリューション営業の強化をテーマにしたコンサルティングと共に、営業マネジャーや営業パーソン教育に従事する。日本コンサルタントグループの地方営業所長なども務め、ソリューション営業にも経験が豊富。著書に『ソリューション営業 成功の仕事術』。人気ブログ『ソリューション営業の道具箱』を運営