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■徳島県鳴門市は情報システムの「見える化」に積極的に取り組んでいる自治体の一つだ。人口10万人以下の先進自治体に声をかけ、お互いの情報システムコストを徹底分析したほか、システムのカスタマイズについて洗い出しを行った。画面・帳票部分のみを切り出して職員の手でカスタマイズする方法を検討しているところである。(黒田 隆明)

※ この記事は『日経BPガバメントテクノロジー』第14号(2006年12月15日発行)に掲載された特集「自治体の情報システムを格付け」の一部を加筆・再構成したものです。

間宮 龍三氏
鳴門市企画総務部
総合政策局
情報システム室室長
間宮 龍三氏

 徳島県鳴門市は、情報システムの「見える化」に関して積極的に取り組んでいる自治体の一つだ。「情報システム資産台帳の記載項目」についての設問では、調査票の全16項目のうち12項目について「把握している」と回答している。2005年度から情報資産の“棚卸し”に取り組んだ成果だ。

 鳴門市ではまず、2005年7月から庁内の全システムの現状調査を実施。さらに2006年1月には、人口規模(鳴門市の人口は約6万4000人)が同程度の10万人以下の複数自治体に声を掛け、システムコストの詳細比較を実施しようということになった。日経BP社が毎年実施している「e都市ランキング」の上位自治体をピックアップして呼びかけたところ、12市が鳴門市の提案に賛同した。鳴門市を含む13市では、業務ごとのハード、ソフト、保守、業務委託だけでなく、内部人件費、さらにはパソコン(クライアント)のコストについても情報交換を行った。これらは今後の調達に向けて貴重なデータとなる。

 きっかけは総務省の「市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」(2005年12月発表)だった。調査結果の数字だけでは運用コストの配分など把握し切れない部分があるため、鳴門市を含む13市でより掘り下げた情報交換を行うことにした。

 鳴門市企画総務部総合政策局情報システム室の間宮龍三室長は、「今後は金額の情報だけでなく、他の自治体で導入した新しいシステムなどの勉強もしていきたい。同じ悩みを抱える他団体との情報交換を密にしていくべきだ」と考えている。

パッケージソフトのカスタマイズの現状を分析

 並行して鳴門市では、マイクロソフトの協力を得て(注1)、コストアップの大きな要因であるパッケージソフトのカスタマイズについて現状分析も行っている。カスタマイズの多い要素を洗い出し、その部分について のコスト削減策を模索するためだ。

(注1)2005年2月に「次世代型自治体標準 業務アプリケーション検討プロジェクト」を立ち上げ、マイクロソフト、鳴門市の相互協力の確認書を締結(金銭契約はない)

 調査・分析の結果、画面・帳票部分のカスタマイズが全体の約7割を占めていることが分かった(表1)。鳴門市では、画面・帳票の設計部分をアプリケーションから分離できないか、現在検討を進めている。「特に帳票画面については、Excelなど表計算ソフトを使って職員側で帳票をデザインし、アプリケーションのデータベース側とやり取りをするような汎用的な仕組みが構築できるのではないか」(間宮室長)。これが実現すれば、かなりの部分を職員の手でカスタマイズでき、コスト削減に大きく寄与しそうだ(図1)

■表1 基幹系業務システム内のプログラム本数を調査(鳴門市)

課税計算データ関連 法定帳票内容 事務用帳票 合計
A業務 18 121 444 583本
3.1% 20.8% 76.1%
B業務 5 24 90 119本
4.2% 20.2% 75.6%
C業務 17 145 177 339本
5.0% 42.8% 52.2%
合計 40本 290本 711本 1041本
3.8% 27.9% 68.3%

■図1 自治体アプリケーション構成要素を分析(鳴門市)
自治体アプリケーション構成要素を分析(鳴門市)

民間からCIO補佐、ただし基本は職員が作業

古見 彰里氏
鳴門市企画総務部
総合政策局
情報システム室
CIO補佐
(ベリングポイント
パブリックサービス
マネージャー)
古見 彰里氏

 情報資産の整理を進める一方、鳴門市では情報政策部門も強化している。2006年3月まで情報システム関連を担当していた「総合政策局企画情報課」から、情報関連業務を推進する専任組織を「情報システム室」として分割・設置した。マネジメントを行う部門、そして、庁内のコンサルテーションを行い業務のあり方までコントロールしていくような部門となることを目指している。

 情報資料の調査を一通り終えた9月には、民間企業(ベリングポイント)からCIO補佐を委嘱した。契約金額は年間850万円。平均週2日程度、CIO補佐が来庁して業務を行う。CIO補佐にはアドバイザリー的な役割を期待する。戦略立案についての主な作業は職員が行う方針だ。

 CIO補佐には、主に四つの業務を依頼している。(1)企業局の情報システム最適化及び経営管理手法検討支援、(2)下水道システム導入における計画策定支援、(3)全庁情報システム最適化指針策定に関する支援、(4)情報システムに係わる予算要求、執行(調達)支援である(注2)

(注2)市長の方針で、まず企業局からスタートして全庁に全体最適の考え方を波及させていく方針となった。ITを活用しながら、企業会計的な考え方で全庁的なガバナンス実現を目指す。

 鳴門市のCIO補佐を務める古見彰里氏は、「職員の人たちと一緒に手を動かしながら、業務からシステムへと落とし込む手法や発想を啓蒙していくことが私の最大の役割だと考えている。コンサルタントに依頼しなくても職員自身でできることはたくさんある。長い目で見たときに、職員自らが能動的に情報システムのガバナンスを利かせていけるようになることが目標だ」と語る。

 今年の5月10日からは、鳴門市、マイクロソフト、ベリングポイント、四国情報管理センターの4団体共同で「電子自治体情報化戦略推進プロジェクト」の活動を開始した。まずは、昨年度の13自治体でのコスト調査の経験などを生かし、他の自治体でも利用できるような汎用性の高い「情報システム資産管理台帳」の整備を行う。職員側での帳票画面のカスタマイズの具体的な方法についても、このプロジェクトで検討していく。