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 「Web 2.0」の提唱者であるTim O'Reilly氏に「Web 3.0はどうなりますか?」と聞く人は後を絶たない。4月15日から18日まで米国サンフランシスコで開催された「Web 2.0 Expo」でのO'Reilly氏の記者会見でも,そう聞く米国人プレスの姿が見られた。しかしO'Reilly氏が「Web 3.0」を語ることはない。O'Reilly氏がWeb 3.0を語らない理由は,そもそも彼が「Web 2.0」という言葉を用い出した動機にあるようだ。

 O'Reilly氏はWeb 2.0 Expoの基調講演で,2004年後半に「Web 2.0」という言葉を使い始めたころの心境を「2001年にドットコム・バブルが弾けたことで『Webはもう終わった』とする考え方に対する反発があった」と語る。Webの世界にはまだまだテクノロジの進歩が必要とされているし,実際にテクノロジは進歩し続けている。その現状を広く知らしめ,かつテクノロジの進歩を応援するために使いだした言葉が「Web 2.0」なのだという。

 つまり「Web 2.0」という言葉で重要なのは,バブルによって一度終わったかに見えたWebが復活を遂げたことを意味する「2.0」という部分だったのだ。そう考えると,O'Reilly氏が「Web 3.0」を言いたがらない理由も見えてくる。もし「Web 3.0」という言葉が使われるのであれば,その時にはWeb 2.0以降の活況が一度崩壊して,再度復活を果たしている必要があるのだろう。

 逆にWeb 2.0ブームが崩壊せずに着実に進化を果たしたとき,「Web」という言葉が問われなくなる可能性がある。Web 2.0 Expoで講演を行った米eBayのRolf Skyberg氏も「Web X.X」を考えても無駄,と主張する一人だ。彼の理屈は非常にシンプルで,「電灯が発明されたころに『すごい!電気の光だ』という人はいても,今,食器洗浄機を見て『ワーオ,これも電気で動いているんだ!』と言う人はいるだろうか?」と語る。

 O'Reilly氏は基調講演で「われわれはまだパソコンの歴史でいうところの『VisiCalcレベル』にいる」と語った。Webに「VisiCalc」のようなキラー・アプリケーションが登場し始めてはいるが,本当に重要なアプリケーションが出てくるのはむしろこれから,というのがO'Reilly氏の主張である。もしWebに新しいキラー・アプリケーションが登場して,それが「Web」という概念すら変えてしまったとき,それは「Web 3.0」ではなく別の名前で呼ぶべきなのだろう。

これは「バブル」ではないのか?

 もっともWeb 2.0には「バブル2.0」という懸念が付きまとっているのも事実である。2006年秋まではホテルを会場として開かれていた「Web 2.0 Conference」が,「Web 2.0 Expo」と「Web 2.0 Summit」に名前を変えて「Moscone West」のような大規模会場で年2回開かれるようになり,今回のWeb 2.0 Expoには1万人を超える参加者が押し掛けた。この状況自体がバブルとすら見られている。

 またWeb 2.0の収益源が,(1)米Googleが市場の80%を支配するインターネット広告,(2)Googleや米Microsoftなど大手ベンダーへの事業売却──ぐらいしか見えていないのも懸念材料である。

 筆者はWeb 2.0 Expoの後も引き続きサンフランシスコにとどまり続けて,4月24日から同地で始まる「ad:tech San Francisco」という,インターネット広告に関するカンファレンスも取材する予定だ。Webでの事業が広告収入に頼らざるを得ないのであれば,広告の動静を見れば,その業界がどれだけ足腰が強いかも見えてくるはずである。折しも日本では,2006年に消費者金融業者がインターネット広告を控え出した途端,主要なインターネット広告事業者の成長が軒並みストップしたばかりであった。Web 2.0とインターネット広告の現状がどうなっているのか,さらにレポートを続けたい。