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「顧客名を入れ替えただけに過ぎない提案書」「提案書の枚数はやたらと分厚いのに、中身の薄い提案書」「顧客が提案書を読んだあとに、何も心に残らない提案書」――顧客に役立つ提案が可能だとしても、カタチにできなければ顧客に伝えることはできません。では、“伝わる提案書”はどのように作成すればよいのか、その方法論をご紹介します。

 ソリューション営業のプロセスでは、顧客のニーズを把握した後、プレゼンテーションというプロセスを踏むことになります(図1)。プレゼンテーションにおけるソリューション営業の主要な機能は、提案書の作成と顧客への提案実施です。この2つの機能を果たせるようになるために、第3回目の今回は提案書作りの道具を、第4回目は提案実施の道具をご紹介します。

図1●ソリューション営業の6つのプロセス
図1●ソリューション営業の6つのプロセス

ベンダー都合の提案書からの脱却を

 顧客の心をつかむ提案書を作るには、顧客を起点にして解決課題の選定を行うことが重要です。ニーズ把握のプロセスで顧客の課題を把握したにもかかわらず、実際に提案している内容はベンダー都合の提案であることが少なくありません。提供できる解決領域に限界があることは事実だとしても、ベンダー都合の提案では顧客の心をつかむことはできません。

◆道具1:顧客起点の思考術

 顧客にとって魅力ある提案とは、取り上げた解決課題自身が魅力的かどうかに大きく左右されます。最終的な意思決定をするキーパーソンが経営トップ層である場合には、提案内容が経営課題の何を解決してくれるのかがポイントです。顧客が抱えている課題を全体的に鳥瞰ちょうかんしたうえで、今回提案しようとする解決課題が顧客にとってどれくらい魅力あるものなのか、顧客サイドに立って評価することが重要です。

 顧客からRFP(提案依頼書)が提示された場合、その条件をいかにクリアするか、よりメリットのある条件提示をするためにどのような方法があるかが、提案内容を考える際の中心テーマになります。

 しかし、顧客からRFPで提示されているものは、何らかの課題を解決するための手段であり、顧客は何を解決したいのかという目的が前提にあるはずです。その目的について熟慮せず、条件面にばかりに目を奪われていたのでは、大胆な発想や提案内容は生まれてきません。顧客の目的を達成するためには、顧客が考えている手段以外に手立てはないのか、違うアプローチはできないのかを考えるからこそ、付加価値のある提案が可能になるのです。

 顧客のためになる提案をすることは、顧客が言うがままに提案することと同じではありません。顧客が気づいていなかった課題解決策を提案することは、顧客にとって大きなメリットになるはずです。顧客の言うことと違う提案をしたら、顧客は気分を害してしまうのではないかと憂慮する営業パーソンもいるでしょう。しかし、それは顧客とのリレーションが取れているかどうかの問題です。常に良好な関係作りをしていれば、積極的な提案を受けとめてくれない顧客はいないはずです。

◆道具2:論理的な提案書作成術

 提案書を作成するときの基本は、論旨が明快で分かりやすいということです。分かりやすい提案書を作成するためには、いくつかの要件がありますが、その中でも重要なものの1つが論理性です。論理性は顧客にとって分かりやすいというばかりではなく、顧客の納得感を得るにも効果があります。

 提案書の構成や文書を論理的に展開するためには、原因と結果、目的と手段といった関係を念頭において構成することが大切です。ソリューション営業のニーズ把握の段階では、顧客の問題現象を多面的にとらえながら、因果関係を分析して解決すべき課題を探っていきます。従って、そのプロセスを提案書に上手に表現すれば、論理的な提案書の構成になってくるのです。

 前回、ニーズ把握の道具として「問題構造ダイヤグラム」をご紹介しましたが、これをそのまま提案書に表現することも1つの方法でしょう。

 今回は論理的な提案書作成の方法として、論理ツリーをご紹介することにします。

 論理ツリーとは、物事の関連を原因と結果、または目的と手段の関係でとらえ、ツリーのような図で表現したものです。つまり、論理ツリーには因果関係を示したものと、目的と手段の関係を示したものがあるということです。顧客の問題点を論理的に追求するときには、「なぜ、顧客の問題が発生するのか」「その原因を引き起こしている真の原因は何か」というように、「なぜ」を繰り返し問いかけることにより、問題点の因果関係を体系的にとらえることができます。

 一方、目的と手段の関係を体系的にとられるときには、「なぜ」ではなくて「そのために、どうしたらよいのか、何をしたらよいのか」という問い掛けを繰り返します。ある目的を達成するためには、何をしたらよいのか、それを具体化するためにはどうしたらよいかと繰り返すことにより、目的を達成するための手段を明確にすることができるのです(図2)。

図2●目的と手段の論理ツリー
図2●目的と手段の論理ツリー

 提案書の文章を論理的な表現にするには、「したがって」「なぜならば」「だからこそ」といった接続詞を使うことです。これらの接続詞は、前文との関係を原因と結果、目的と手段といった関係で表現しているからです。図解で表現する場合には、矢印を使って2つの事象を関係付けることになります。

◆道具3:図解による表現術

 分かりやすい提案書を作成するために、図解表現は欠くことのできない道具です。図解表現を提案書に盛り込むことにより、一目で伝えたい内容を表現することができ、相手に強い印象を与えることが可能です。内容の全体像を示したり、位置関係を表したりすることは、文章ではなかなか表現しにくいものです。図解表現を使うことにより、相手に全体像を理解してもらい、各論との関係を示すこともできるわけで、そのメリットは大きいといえます。

 全体像や位置関係を示すほかにも、図解表現で関係性を示すことが可能です。先ほどの論理ツリーのところでは、因果関係や、目的と手段の関係を図解で表現することを述べましたが、それ以外にも時間の経過を年表形式で表現したり、色づかいで課題や解決策の分類を表現したりする方法もあります。

 図解表現をすることは、分かりやすい提案書を作るときの道具であると同時に、自分の考えをまとめたり、整理したりすることにも役立ちます。図解表現を行うためには、全体像をどのようにとらえているか、その中の各論との位置づけ、それぞれの関連性をどのようにとらえたらよいのかを、事前に整理することが必要になるからです(図3)。

図3●自分の考えをまとめるのにも役立つ図解表現
図3●自分の考えをまとめるのにも役立つ図解表現

 自分の考えを図解表現しようとすると、初めのうちはとても時間がかかるものです。図解の表現方法を思いつき、作図するのに時間がかかるだけでなく、自分の考えをまとめることにも多くの時間が必要になるからです。しかし、それだからこそ図解表現力を習得することは、論理思考を身に付ける絶好の機会であり、トレーニング方法でもあるのです。

 図解表現に関する書籍やサンプルはたくさんありますから、自分の概念をまとめることに時間を割き、表現方法はサンプルを活用することから始めるとよいでしょう。自分が作成したものを少しずつ蓄積し、オリジナルテンプレートを作っていけば、蓄積効果は絶大なものがあるので、お勧めします。

◆道具4:グラフによる表現術

 グラフによる表現を提案書に盛り込むことができれば、インパクトのあるビジュアルな表現ができるだけでなく、データに裏付けられた根拠ある提案として顧客の評価を高めることができます。提案内容によってグラフ化できるものとできないものがありますが、グラフ表現できる部分があるかどうかを常に検討することは大切です。

 本来、裏付けのある提案を行うためには、可能な限り客観的なデータを収集するように心がけておくことが重要です。公表されている2次データばかりではなく、独自に顧客の現状を定量的に示すことができれば、説得力が増すことは間違いありません。顧客の現状把握の際には、定量化できる情報を意識的に収集する努力をしたり、事実を定量的にとらえる工夫をしたりしておくことが、グラフ化の事前準備になるのです。

 グラフ表現をする場合、強調したい内容によってグラフを選択して活用します。時間や変化の推移を強調したいときには、折れ線グラフが有効ですし、割合を強調したいときには円グラフなどが効果的です。棒グラフは量的な格差を強調するときに効果がありますし、レーダーチャートは全体のバランスを見せたいときに有効です。何を顧客に見せたいのか、強調したい内容を踏まえて活用するグラフを選定します。

◆道具5:簡潔明瞭な提案術

 提案書を作成する場合、内容を完璧に盛り込もうとすればするほど、提案書の枚数は増えるものです。しかし、ボリュームが多すぎる提案書は、顧客にとって分かりやすい提案書だとはいえません。初めて提案書を見る顧客にとっては、どこに何が書いてあるのかが分かりにくくなるからです。

 だからといって、提案書の内容を簡単にしすぎると、伝えたいことが十分に伝わらないというジレンマが生じます。プレゼンテーションで口頭説明の場が与えられているとはいえ、説明の時間が足りなくて、後は提案書頼みになってしまうことがあるかもしれません。また、プレゼンテーションの場に最終意思決定者が同席せず、提案書だけが顧客内部を独り歩きすることも考えておく必要があるでしょう。その意味では、口頭で説明をしなくても、提案書だけで完結できるように、十分な内容を提案書に盛り込んでおくことが、やはり必要なのです。

●ニーズの把握の道具~まとめ~
●ニーズの把握の道具~まとめ~

 提案書を読む顧客の立場になって考えた場合、詳細な内容を求めるニーズがある一方で、簡潔な提案書を求めるニーズがあることも事実です。多忙を極める経営トップ層は、分厚い提案書を最初から最後まで読むことは少ないはずです。短時間の間にポイントだけを把握したいというニーズが強いのです。ところが、RFPを出した顧客の担当部門では、リクエストに対する回答を評価する立場にありますから、十分な内容が提案書に盛り込まれていることを求めてきます。

 この2つの異なるニーズを満たす提案書を作るためには、提案書を本編と資料編に分けて作成するとよいでしょう。本編の内容にボリュームがある場合には、サマリーを作成することをお勧めします。顧客の経営トップ層に対する配慮を考えるならば、サマリーを作成することは必須と考えるべきかもしれません。

 経営トップ層の中には、提案内容がワンペーパーにまとめられていることを重視する人もいます。ワンペーパーの提案書は、詳細な提案書のサマリー的な役割を果たすこともあれば、初期提案段階で概要を確認するときに使うこともあるでしょう。どちらの場合でも、ワンペーパーで提案内容をまとめるには、先に説明した図解表現はもちろんのこと、提案書作りの道具を駆使することが求められます(図4)。その意味でワンペーパー提案書の作成は、営業パーソンのスキルアップの機会にもなるでしょう。

図4●ワンペーパーの提案書の一例
図4●ワンペーパーの提案書の一例
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川島 章司
日本コンサルタントグループ 経営コンサルタント
ソリューション営業の強化をテーマにしたコンサルティングと共に、営業マネジャーや営業パーソン教育に従事する。日本コンサルタントグループの地方営業所長なども務め、ソリューション営業にも経験が豊富。著書に『ソリューション営業 成功の仕事術』。人気ブログ『ソリューション営業の道具箱』を運営。