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マーケットとしての存在感が増す中国に進出した日系企業が,情報システムに力を入れ始めている。その中で明らかになった中国のIT事情をひも解く集中連載の,第1回である。

 中国に限らず,国外に現地法人を設けた企業がまず直面する情報システムの課題は,現地の財務会計ルールへの対応である。中国がほかの国と異なるのは,生産管理などの基幹系システムには国産ERPパッケージ(統合基幹業務システム)を使っている企業でも,財務会計については中国ベンダー製のパッケージを使っているケースが多いことだ。

 理由は明らかである。中国政府公認の会計ソフトで作成した財務諸表しか財務当局が認めないため。国産ERPパッケージは認定を受けておらず,使おうにも使えないのである。

 例えば,中国のソフト製品ベンダーである用友ソフトの「U8」と呼ばれる財務会計ソフトを利用する日岩帝人商事(上海)公司 総務財形部の瀬川治美部長は,「中国進出時にはほかに選択肢がなかったこともあり,用友ソフトの製品を利用している。ただ,今後データ量が増えてくると,システム再構築を検討しなくてはならないと考えている」と現状を説明する。

現地ERPパッケージを導入する日系企業も

 そもそも中国の場合,市や省によって細かなルールが異なるうえに,変更が多い。「年末年始の休日が,2週間前にならないと決まらない。そういった現地事情に対応可能なパッケージは限られる」(DIR系統技術(北京)公司の小原誠董事長総経理),「中国でメジャーなパッケージを使わないと,税制の変化に追いつけないことがある」(NTTデータ 国際事業推進本部の武藤武敏シニアスペシャリスト),との指摘もある。

 市や省ごとに財務当局がある。法人ではない支店であっても,所在地にある当局に,個別に財務諸表を提出しなくてはならない。しかも,その形式は少しずつことなり,当局のチェックが厳しい。「少し前までは書類を手書きで処理していたため,その名残で細かく形式が決まっている」(日岩帝人の瀬川部長)。

図●中国におけるERPパッケージのシェア
図●中国におけるERPパッケージのシェア
2006年度の売上高によるもの。中国のコンサルティング会社CCIDコンサルディングによる調査

 国産ERPパッケージで,そこまで細かく中国事情に対応するのは難しい。言語や通貨単位だけでなく,現地の商習慣や法制度への対応を考慮すると,現地パッケージを使うのが現実解というわけだ。NECやNTTデータ,富士通,日立製作所といった大手日系ベンダーも,用友ソフト,金蝶国際グループといった現地会計パッケージの導入を手掛けている。中国におけるERPパッケージの市場シェアをみても,それがうかがえる(図)。独SAPや米オラクルの製品こそ健闘しているが,ほかはすべて,中国ベンダーのパッケージである。

 中でも,用友ソフトのパッケージは,日系企業にユーザーが多い。用友ソフトジャパンの劉 伝棟 代表取締役社長は,「財務会計だけでなく,生産管理や販売管理も含めた基幹系システムで,全面的に当社のパッケージを導入する日系企業も出てきた」と鼻息が荒い。さらに中国での導入を足がかりに,日系企業が日本本社でも用友ソフトの製品を導入するよう売り込む戦略である。年内にリリース予定の次期ERPパッケージでは,日本語版も提供することを決めた。

SAPのERPパッケージ導入が“ブーム”に

 一方で,日系企業が導入するケースが増えているのが,SAPやオラクルが提供するERPパッケージである。「中国政府から認定は取得済みだ。よく変更される現地の財務諸表にも,会計モジュールで対応できている」(日本オラクル APAC事業開発本部長の沼田治執行役員)。用友や金蝶の会計パッケージを利用する必要がない。

 松下電工やニコンなど,ERPパッケージを使って基幹系システムを世界共通化しようとしている日系企業が中心である。「同じパッケージを使えば,現地対応の最小限の開発だけでシステムを稼働できる上,データ連携もしやすい」(SAPジャパン フィールドサービス統括本部長の林 徹シニアバイスプレジデント)。

 SAPのR/3は,中国の大手企業でも導入が進んでいる。中国でR/3導入サービスを手掛ける東洋ビジネスエンジニアリングの千田峰雄取締役社長は,「中国社会の中で,R/3を導入することが,ある種のステータスのようになっている」と指摘する。

■追記
この連載は日経コンピュータ4/30号の特集記事「中国市場を切り開く」の取材結果などを参考に執筆しています。[2007/05/11 13:30]