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 米ニューヨークに本拠を置くDataSynapse(データシナプス)は、「グリッド・コンピューティング」と呼ばれる最先端の技術に基づくソフトウエアを金融機関に提供している。グリッド・コンピューティングとは、ネットワークに連なる数十台~数千台のコンピューターの処理能力をひとつにまとめて、スーパーコンピューターに匹敵する能力を引き出す技術だ。この技術を使うことで、金融機関は、守りと攻めの両面、すなわち「投資効率の向上=コストの削減」と「取引機会の増大=収益の増大」を同時に強化できるという。

 守りの面は、その瞬間瞬間に使われていないコンピューターを選び出してその能力を吸い出し、ネットワークに接続しているコンピューター全体の平均利用度を高めることで実現する。攻めの面は、そうして引き出したスーパーコン並みの能力で、処理時間を数分の一から数十分の一まで圧縮することで達成する。取引全体のポジションをまとめる一括処理の時間や、複雑な仕組み商品のシミュレーション時間を短縮することで、取引件数も取引時間も延長できる。


 日本では、外資系金融機関を除いて、導入事例はまだないが、創業から7年で、世界トップ100の金融機関の7割が同社のソフトを導入したという。同社CEOのピーター・リー氏に同社の戦略と技術について尋ねた。(小口日出彦=聞き手)

ピーター・リー氏
ピーター・リー氏
撮影:永野 リュウ

データシナプスは「グリッド・コンピューティング」と呼ばれる最先端のソフトウエア技術に基づいた製品とサービスを提供している。本誌の読者はコンピューターの専門家ではないので、分かりやすく説明してほしい。

 グリッド・コンピューティングとは、ネットワークに接続した多数のコンピューターの能力を共有(シェア)することで最大の効率を引き出す技術だ。しかし、経営者はそれを技術的に理解する必要はない。結果としてそれが利益を生む、ということを直感的に把握してくれればよい。

 グリッド・コンピューティングという言葉は専門的なので、何か他の単語で言い換えよう。例えば「共有(シェアリング)」。共有サービス、共有オペレーション、統合オペレーションなどは、企業がITインフラの効率化を目指す場合、よく耳にする言葉だと思う。経営の概念としても「共有によってコストが削減でき利益につながる」ことは直観的に理解できるはずだ。もちろん共有化のためのコストが発生するが、驚くような低コストでより良いサービスを得て人々が満足すれば、経営者にとってプラスとなる。

 一方、金融とは、リスクとリターンを制御して収入を得る事業だ。処理効率が高まり、時間に余裕ができれば、リスクをより的確かつ迅速に管理できるようになる。つまり攻撃的に収益を求めることができるようになる。

 私たちのメッセージは「今していることを何も変えないでよい」ということ。私たちのソフトウエアを使えば、より少ないリソースでより多くのことができる。私たちは、今いる社員でより多くの仕事を行える「自動化」を提案する。同時に「生産性の向上」と、活用されていないITインフラへの「投資効率の向上」ができると提示する。

 実績がそれを証明している。ある顧客は「従来の4倍以上の取引が可能になり、業界内でより強力な立場を築き、さらなる収益を達成できた」と話している。現在までに世界の金融機関上位100社のうち70社がデータシナプスの技術を使っている。

顧客の立場で分析し目標達成を保証

具体的な提案内容とは?

 まずは事業価値の定量化から入る。私たちの事業にグリッド・デザインと呼ばれる過程があるが、この段階では顧客が開発してきた様々な情報システムを評価し、「データシナプスの技術を個々のシステムに適用すると、事業価値がどう変化するか」という基準に基づいてレポートを作成する。この場合、技術の適用の容易さと、技術適用による事業価値の変化を詳細に検討する。

 高い事業価値が生じるが適用するのが難しい場合も、反対に適用は容易でもそれほど高い事業価値が見込めない場合もある、そこがポイントだ。道理にかなっているかどうか。私たちが最初にするのは事業価値を定量化することだ。レポートの冒頭は事業価値と、それがどの程度達成可能かを示す。技術の話は出てこない。

ITシステムについて事業価値別のポートフォリオを作るようなものか?

 その通り。まずは経営の観点で注意を喚起するわけだ。

 続いて、情報システムの構造なども分析する。分析に当たっては、私たちのモデルを一方的に顧客に押し付けることはない。顧客は非常に賢く、また疑い深いものだ。たとえ何年間も顧客と信頼関係を築いてきたとしても、彼らは自分たちの方法で物事を進めたがり、独自の基準を持っている。

 そこで、私たちが成功について言及する時には、だれもが理解できる量などを成否の測定基準として使うことが重要だ。例えばコスト削減については、顧客が求める方向や内容はそれぞれ異なる。具体的な方策を提示し、サーバーごとにベンチマークテストを行い、私たちのソフトウエア導入によって以前は一人で25台のサーバーしか管理できなかったのが2500台にまで達するだろう――といったことを立証する。とても大きなコスト削減の可能性を示せる。

 こういうケースもある。ある顧客が私たちの所へ来て「20人のエンジニアをこのシステム開発に専従させて18カ月で開発できると予測している」と言ったとしよう。この場合、私たちは「既存のソフトウエアを使って、そのシステムを9カ月で完成できる」と逆提案する。50%ものコスト削減になるわけだ。

 われわれは、人的資源、インフラ、システム、ソフトウエアライセンス、保守管理などについて、顧客が望む測定方法に基づいて分析作業を進める。最近では、事業収入や生産性の達成度合いをどう計るかについて、顧客との間にコンセンサスが得られている。

テクノロジーを導入する効果

顧客には、そうした量的目標の達成を保証するのか?

ピーター・リー氏
ピーター・リー氏
撮影:永野 リュウ

 もちろん。私たちは契約の際に、処理時間・量やパフォーマンス向上度など、測定可能な指標でサービスレベルを保証する。そうしなければ私たちを使わないだろう。当てにできないソフトウエアなど必要ないのだから。

 ある金融機関が巨大な投資資金を運用しているとして、利益と損失の時価会計に関する毎日の処理業務を例に挙げよう。この金融機関が、昼間の取引結果を夜間にバッチ(一括)処理するために、夜12時間の時間枠のうち8時間を費やしているとしよう。売上高を伸ばすために取引量を増やしたら、バッチ処理の時間が14時間に延び、次の日の営業時刻になっても処理が終わらないという事態に陥る危険がある。しかし私たちのソフトウエアを使えば、8時間から30分~1時間程度に短縮できる。この水準を保証する。

 処理時間が桁違いに縮まれば、昼間の取引の様子まで一変するのだ。

 「これまで私たちは長時間の取引を避けるため、ポートフォリオに新しい金融商品を追加してこなかった。バッチ処理が追いつかなくなるからだ。しかしバッチ処理時間が1時間未満に短縮され一日の終わりに確認できるようになったので、今後はどんどん取引を増やすつもりだ」。

 「私は部下の3人のトップトレーダーに、より大きなリスク制限を与えるつもりだ。彼らはリスク管理業務で今まで以上に大量で多彩なシミュレーションを行うだろう。これまではわずか5000ケースのシミュレーションだったが、今ではより正確を期するために2万、5万、10万ケースでも行う余裕があるとトレーダーたちは言っている」。

 現実にこういう顧客の声がある。ごく初期の顧客、ワコビア銀行とゴールドマン・サックスは、データシナプスに投資してくれた。顧客が投資したがるほどテクノロジーが評価されるのはとても珍しいことだ。

アジア市場に本腰を入れる

今後の展開について聞きたい。

 私たちは2000年にニューヨークで、わずか2人で会社を立ち上げ、その年はソフトウエア開発に費やした。01年に業務を始め、初めて顧客を得た。02年4月にはロンドンに初の海外支店を開いた。人を雇ってもオフィスすらない状況だったが、今ではロンドン、パリ、マドリード、フランクフルト、ミラノはじめ主要な欧州諸国すべてにオフィスを構え、各地で上位3、4位に入る金融機関が私たちのソフトウエアを使っている。欧州は、総売上高の約3分の1を占める。

 私たちは今、東京での投資を行っている。向こう数年間でアジアは存在感がより顕著になり、成長が期待できる。東京は明確な焦点になる。これまで北米、カナダなどの米国周辺と欧州で事業を展開してきたが、アジアでの投資は、今が旬だ。こうした地域拡大に加えて、製品の種類や、開発・販売に協力してくれるパートナー企業の数も増やす。

 08年度にはIPO(新規株式公開)を予定している。私たちは米国のビジネス誌『IncMagazine』の「米国で最も速く成長した500社」の内の1社に選ばれた。私たちは第39位で、米国で2番目に速く成長したソフトウエア企業とされた。

 ここで強調したいのは、どれだけ速く成長できるかということだけではない。なぜなら企業の発展が時に顧客サービスを犠牲にすることもあるからだ。私たちの使命は最も速くではなく、確実に責任を持って成長することだと考えている。そうすれば私たちの成長とともに、支持してくれる顧客の基盤も厚くなるはずだ。

日本での顧客と日本市場について

日本の金融機関にも顧客がいるか?

 現在何社かと商談中だ。初期からの顧客であるBNPパリバやゴールドマン・サックスでは、日本の拠点も含めた世界規模で利用してくれている。

 私たちはアジアに本腰を入れて取り組んでおり、国際的なカスタマーサービスセンターを中国・北京に開設する。間もなく完成で、年中無休24時間の国際的サポートを行う予定だ。カスタマーサポートのマネジャーをニューヨークから北京へ派遣し、現在作業を進めている。

ピーター・リー
データシナプス創業者兼最高経営責任者(CEO)。デロイト&トウシュ・インターナショナルのストラテジック・プランニング・グループ勤務の後、J.P.モルガンに入社。投資銀行員としてニューヨーク、東京、香港を拠点に活動。2000年に幼なじみとデータシナプスを設立。2004 年、「ビジネス界の傑出したエイジアン・アメリカン50人」に選ばれる。ペンシルバニア大学ウォートン校にて起業家経営学/国際関係論の修士号を取得、およびハーバード大学にて政治学を学ぶ