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提案書の書き方の最後に、プレゼンテーションについて解説したい。いくら優れた提案書も、相手にうまく説明できなければ意味がない。そのためには「分かりやすいストーリー」「プレゼン全体の流れに留意」「“場”の空気を読む」「デモのやり方を工夫」など4つのポイントがある。

 提案書の書き方の最後となる今回は、プレゼンテーションについて解説をしたい。

 提案書はプレゼンテーションを通じて顧客にお披露目され役目を終える。そのためプレゼンテーションにおいて、効果的な提案書となっていなければ役目を果 たしたことにはならない。プレゼンテーションの進め方を理解しその上でその進め方に適した提案書を書くように心がけてほしい。では、どのようなプレゼン テーションを行えばよいのだろうか。

 分厚い提案書では、すべての内容を説明する時間はない。適度な量であっても退屈な説明では、話の途中で飽きてしまう。プレゼンテーションは、顧客の関心があることに関して「ストーリー性」を持って「単純で」「分かりやすく」話し、聴いてもらうことが重要である。提案内容のすべてを分かってもらおうとするのではなく、1点突破主義とまでは言わないが、「ポイントを絞り」「記憶に残りやすくすること」に注力する。提案書はこのことを意識し、発表する場面をイメージしながら最後の装飾、すなわち加筆や修正を加えていくことになる。

 では、パッケージ選定時のプレゼンテーションの流れを振り返りながら提案書を書くための注意点を解説しよう(図1)。

図1●プレゼンテーションのポイント
図1●プレゼンテーションのポイント
提案書を書くときに、これらを意識し、発表する場面をイメージしながら加筆修正を加えていく

プレゼンはプロジェクトマネジャーが1人で

 パッケージ選定時のプレゼンテーションは、長くても2時間程度だろう。この短い時間で、顧客を飽きさせず、ぜひ一緒にやってみたいと感じさせるところまで顧客の感情を揺り動かす必要がある。

 プレゼンテーションの進め方は、「あいさつ」「提案書の説明」「デモンストレーション」「質疑応答」などとなる。あいさつは数分で終えて、質疑応答に30分ほどの時間を置いておくとすれば、提案書の説明とデモンストレーションで1時間30分となる。出席者に経営層が多ければ、提案書の説明をやや多めの時間配分で、実務担当者が多ければ、デモンストレーションがやや多めの配分となるだろうが、基本的にはそれぞれ45分程度となるであろう。これら一連の説明は原則、プロジェクトの実務責任者となるプロジェクトマネジャーが1人で行うことになる。質疑応答に関しても、すべてこのプロジェクトマネジャーが回答すべきである。こうすることで、顧客から信頼が得られるようになるだろう。

 この短い時間で、プロジェクトマネジャーが顧客の理解を得て、さらに顧客に一緒にやりたいという気持ちをかき立てるプレゼンテーションとはどのようなものであろうか。

 それにはまず、提案内容の説明がカギである。提案内容については前回までに十二分に触れてきたが、プレゼンで重要なことは、参加者の関心事を充分に意識することだ。手順としては、参加者との問題意識や全体像に対する理解の共有という段階を徐々に進め、「場」の雰囲気をつかむことから始まる。その上で、重要検討課題として取り上げた個別問題点に対して、どのような解決の方向性を考えているのかをしっかりと主張する。

 既に提案書に盛り込むべき項目として、このことを意識した提案書の構成をしているはずであり、重点検討課題なども工夫をした提案書を作成しているはずである。プレゼンテーションでは、この辺りの項目について、参加者の関心を引き出しつつ、場の雰囲気を見極めながら、話し方に濃淡をつけていく。

 例えば、問題意識について触れる部分では、意思決定に影響を与える可能性のある人、いわゆるキーマンの方に視線を送り、その人の顔の表情や目の動き、さらにはメモの取り方などに注意して話をする。納得しうなずいているのか、理解ができずメモを取っているのかなどを注視し、説明の速度や内容の厚みを変えてプレゼンテーションを行う。

 ほかにも全体像の説明では、意思決定者に対して着地点がどのような姿となるかを分かりやすく、ポイントだけでよいので理解してもらえるようにすべきである。重点検討課題では、それぞれ関係しそうな担当者の方を向いて、その人に話しかけているようにプレゼンテーションすべきである。ときには、場の空気を感じ、興味がなさそうであればさらりと流して次のページに進めるなどもテクニックとしては必要である。

プレゼンする担当者のレベルによって手を加える

 過去に私はこのような経験をしたことがある。あるシステム提案の席で、顧客側に営業の管理者が多く参加しているにもかかわらず、提案説明としてハードの説明を延々と行っている人がいた。ハードの名前を言われてもチンプンカンプンで、全員が暇そうな表情を浮かべている中で、話は終わらずハードの筐体について説明が続いた。提案書は確かにそのようなページが含まれていたし、そのときのプロジェクトマネジャーの得意領域だったのかもしれないが、いくらなんでも場の雰囲気を読んでほしいものだと感じた。

 このようにプレゼンテーションでは、顧客の反応を注視しながら話を進める必要がある。そのため提案書にはちょっとした工夫を入れるとよい。プレゼンテーションがうまくいくのもうまくいかないのも、事前の準備である提案書を書くというところで決まってくる。基本的なこととして各ページのポイント、すなわちメッセージラインは簡潔に記しておくべきである。話し手がその詳細な意味合いを完璧に理解しておくのは当然だが、聞き手には簡単には伝わらない。最低限、メッセージのみでも伝えることができればよいので、そうなるように提案書は書いておく。

 もちろんプレゼンテーションに不慣れな人もおり、非常に緊張するはずである。その場合は、緊張することを前提として提案書を書いておく方法もある。字数が多くなるが、例えば単に読めば済むだけの提案書にしておくという手もあるだろう。話す人のレベルによって手を加えることが重要である。

デモでは業務プロセスの流れを最後まで見せる

 デモンストレーションはどのように進めていくべきだろうか。特にパッケージ選定では、パッケージの良さを理解してもらったり、購入後のイメージが違うなどのトラブルを避けるためにも、デモンストレーションができるということは非常に意義深い。しかし、顧客の理解を促進しやすいがために、不十分な準備で臨んでしまうと逆効果となる。デモンストレーションの役割はパッケージの機能を理解してもらうことと実務のイメージをもってもらうことにある。こうした点を充分に理解し実行すべきである。

 デモンストレーションは、一連の業務の流れに沿って行う。業務フローを頭に入れ、パッケージを使った場合の入力作業はどのように行っていくかを説明するのである。一連の業務とは、例えば発注入力から始まり、納入仕入れ計上、買掛金発生、月末に請求書到着、翌月の支払いなどである。まずは主要な業務をいくつか選んでおく。事前に顧客と相談し、デモンストレーションで取り上げるべき業務を選択しておくということは当然やっておくべきである。一連の流れの中で、顧客によって例外処理がある場合などで、もしパッケージの標準機能で対応できる場合は、それをアピールすることも忘れないようにしよう。

 ちょっと本論を外れるのだが、デモンストレーションを見ていて感じることに、データ入力を途中でやめる人がいることである。いったん入力したら、例えば請求書発行を入力したら、その結果が請求書上にどのように反映されているのか、日計表などとの連動はどうなっているのかをきっちりと顧客に見せることはとても大切である。ちょっとしたことなのだが入力作業だけを見せて、帳票での表示もしくは遷移した次の画面での表示形式の説明をしないと、実務担当者は作業が完結していないように感じてしまう。

 担当者の習性上、入力結果が正しく反映できているかどうかを確認できないと、どうしても違和感を持ってしまう。実際、ソリューションプロバイダに「入力オペレーションを見せてください」とお願いすると、入力の仕方だけしか示してくれない場合もある。しかし本来は、「入力した結果が正しく表示されていることを確認するまでが入力オペレーションである」ということを心に留めておいていただきたい。

 デモンストレーションでは、その場で質問を受け付けることになる。よくある質問として、「こういう業務の場合はどうすればいいのか」「うちではこのような処理があるができるのか」などがある。こういう質問の場合、その会社のやり方は通常知らないので、まずはパッケージの業務処理にそって入力オペレーションを実行した上で、顧客の業務を少しずつ聞き出しながら、例えば「そうであれば、このようなやり方ができますよ」と回答すべきである。

できない場合も試してみる姿勢を示す

 顧客からの質問をすぐに質問で返す人がいるが、これはやめるべきである。またパッケージの連携などについて分からないことは「分からない」と言うべきである。優柔不断な態度を取っていては失望を与えることになる。デモ機で検証できるようなことであれば、やったことがないようなオペレーションでも、デモ機をフル活用し、すぐに「じゃ、やってみましょう!」と対応してほしい。できない場合でも、試してもらえるだけで顧客は納得がいくものだ。

 デモンストレーションは直接的には提案書の書き方と連動するものではない。ただ、一連の提案プロセスの締めくくりとして大きな役割を持ち、ときには提案書で書ききれない部分を補完してくれる。

 プレゼンテーションは「一に慣れ」「二に準備」「そして「三に提案書のちょっとした工夫」である。発表するときにかまないように、話し手自身の舌が回転しやすいように一言一句のチェックを行うことも含め、提案書のちょっとした工夫は重要である。

 以上、これまで6回にわたって提案書の書き方を連載してきた。私の経験で提案書を評価していて気になることを思い浮かぶままに書いてきた。少しでも参考にしていただければ幸いである。

神野 憲昭
ITCネットワーク
戦略や組織、業務プロセス、IT戦略など各種の企業改革を推進する経営コンサルタントを経て、現在は携帯電話販売企業の経営企画にて事業計画の立案などに従事。