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中国の大卒エンジニアの初任給は2000元程度といわれている。約3万円である。上昇しているといっても,人件費はまだまだ安い。アルプス システム インテグレーションの現地法人であるアルプス系統集成(大連)公司北京分公司の菅野泰彦総経理は,「中国では,人件費削減はシステム構築の主目的になりにくい。精度を高めるとか,これまでにないデータを抽出できるようになるといった目的がないと,システム化に踏み切らない」と証言する。

 2008年の北京オリンピック開催に向けて,北京市内では地下鉄新路線の突貫工事が繰り広げられている。地方から都市部に人が流入していることもあり,地下鉄利用者は急増している。地下鉄やバス,タクシーで利用できる,共通ICカードが発行されている。しかし,切符の販売や改札は,いまだに人手が中心である。上海などを除けば,他の都市でも同様だ。わざわざ自動化しなくても,人手で十分なのである。

バーコードよりは人手で

 日系企業の情報システム戦略にも,この人件費の安さが反映されている。広州に自動車部品工場を構えるアルファ広州自動車部品公司は07年3月,日立製作所の「GEMPLANET/WEBSKY」を使った生産管理システムを稼働させた。同社が自動車部品の生産を始めたのは,2005年の12月である。生産管理システムを稼働させるまでは,業務はもっぱら,Excelと手計算である。管理部の高橋直人副部長は,「まずは工場を稼働させることを優先させた」と理由を明かす(写真1)。

写真1●自動車部品を手がけるアルファ(広州)自動車部品公司 管理部の高橋直人副部長
写真1●自動車部品を手がけるアルファ(広州)自動車部品公司 管理部の高橋直人副部長

 ただ,細かな数値が一致しないケースがどうしても発生してしまう。そのたびにデータを見直すなど,手間がかかり始めた。今後の生産増に備え,データベースで情報を一元管理するシステムを構築する必要があった。そこで06年7月に構築プロジェクトを立ち上げ,他社で実績があるWEBSKYを採用した。「規模や構築スピードを重視した」(高橋副部長)。

 日本ではおなじみのバーコードを使って入力の手間を軽減する,といった機能は実装しなかった。「開発のコストが上がってしまう。データを正確に管理できるのであれば,ほかは人手でこなしたほうが安く上がる」(高橋副部長)からだ。

システム構築は,人手ではなくパッケージ

 人件費が安いからといっても,情報システムを人海戦術で開発することは少ない。日立信息系統(上海)公司の山中大三郎董事長は,「中国は1年たてばビジネス環境が大きく変わる。それに遅れないようスピードを重視してできるだけパッケージやサービスを利用し,短期間でシステムを構築する日系企業が多い」と指摘する。

 コクヨの子会社で,北京と上海でオフィス用具の通信販売を手掛けるコクヨ商業(上海)公司は立ち上げにあたり,野村総合研究所(NRI)が提供する基幹系システムのアウトソーシング・サービスを利用した。05年2月のことだ。井上雅晴董事総経理は,「コクヨは過去にオフィス用具分野で一度中国から撤退した苦い経験がある。ビジネス上のリスクを考えると,システム構築は短期間で,初期投資はなるべく小さくしたかった」と,NRIのサービスを利用する理由を説明する(写真2)。

写真2●コクヨ商業(上海)公司の井上雅晴 董事総経理
写真2●コクヨ商業(上海)公司の井上雅晴 董事総経理

 05年当時に想定していた事業規模からすると,中堅クラスのERPパッケージが必要だった。日系ベンダー数社から提案を募り,唯一サービス利用を提案したNRIの案を採用した。パッケージを利用することでシステム構築が短期間で済む上に,運用フェーズでも負担が少ないことを評価した。ネットワーク経由でNRIのサーバーにアクセスし,米QADのERPパッケージ「MFG/PRO」を利用している。

 05年6月には,通販ECサイト「Easybuy」を立ち上げた。現在では6000点以上の商品を扱い,北京と上海を合わせて22万の顧客を抱える規模に成長した。「ビジネスの規模が大きくなってきたため,自前の基幹系システム構築を検討している。もちろん自社開発ではなく,ERPパッケージを使うつもりだ」(井上董事総経理)という。

■追記
この連載は日経コンピュータ4/30号の特集記事「中国市場を切り開く」の取材結果などを参考に執筆しています。[2007/05/11 13:30]