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 最近は落語がブームらしい。私の取材先であるITベンダーの幹部も好きで,かつてはよく演芸場などに出かけ,さまざまな「名人」の演目を聞いた経験があるそうだ。この幹部によると,名人といわれる話し手ほど,同じ演目でも自分流に細かくアレンジして話すという。新たな登場人物を加えたり,客席の雰囲気をつかんで時事ネタやギャグなどを入れる。舞台で踊る落語家もいるそうだ。

 落語の演目はせいぜい400ぐらい。多くのお客は演目の内容はもちろん,オチまで知っている。そんなお客の関心を引き,笑わせ,うならせるには,新しく意外な“何か”が必要になる。そうすれば何度も聞いてよく知っている演目なのに,お客は内容に新味を感じて面白く聞くことができるのだろう。「落語は伝統芸能として長い歴史を誇るが,覚えた演目をそのまま話すだけでは,まだまだ素人。さまざまな状況に応じて自分なりの味付けをすることが本当の“芸”になる」と,この幹部は言う。

 落語を引き合いに出したのは,あるユーザー企業のシステム担当者が,ITベンダーに次のような感想を抱いていたことと似ていたからである。そのシステム担当者は,「当社に来るITベンダーのソリューション提案は,どこも同じような内容で新味が乏しい。これでは関心を持てない。価格ぐらいしか違いがないならば,安い価格を提示したソリューションしか選びようがない」と言うのである。

 ソリューション提案をするとき,ITベンダーの営業担当者の多くは,たぶん“出来合いの提案書”しか示さないのだろう。社内にあるパワーポイントのファイルのひな型に成功事例を付加して作成してしまう。内容はユーザーの企業の細かい事情とは関係なし。セキュリティがブームならセキュリティ製品,内部統制がブームなら内部統制ソリューションという名目でシステムを売る。既にひな型があれば,提案する側からすれば効率的かもしれない。しかし,それでは提案内容は画一化するだけだろう。ユーザー企業にとっても,どれも同じ提案書にしか見えない。「あぁ,またこれか。前に聞いたな」という感じだろう。

 また別のITベンダーの幹部との会話では,こんな話題が出た。「システムをパッケージ化すれば,売るときは確かに手離れはいいだろう。しかしそうなると,営業はソフトの中身を説明するしかできなくなり,ソリューションの提案力が下がるのではないか」といった懸念だった。パッケージ化によって,システムを短期間に導入することは重要だろう。だが,そうした傾向は逆に営業としての嗅覚を鈍くさせるという。「ソフトがパッケージ化され,単なる機能の有無だけが訴求ポイントならば,もはや営業が提案する余地はない。製品が売れない場合,営業は“機能不足だから売れなかった”と言い訳する」と,この幹部は語る。そうなると,自分でソリューションを考えることがなくなるというのだ。

 本来のソリューションとは,ユーザー企業の課題や問題をヒアリングし,自社や他社のツールをいかに活用すれば解決できるか,さらに機能不足のときは,どう対処すればクリアできるか,などを徹底的に考えることから生まれるはず。そうした行動を自分で行うことで,ユーザー企業に対する提案力が養われる。過去の提案内容を,やっと覚えた「演目」のようにそのまま話すだけだったり,パッケージ製品の内容をそのまま話すだけでは,提案ではない。ユーザー企業からすれば,以前に聞いた同じ内容ばかりでは「面白くない」のである。

 システム提案で複数のITベンダーによるコンペが当たり前の今,他社との差異化は提案書の作成段階から始まっている。そこで日経ソリューションビジネス編集部では,5月21日に「提案書作成の極意-実践的な“提案ストーリー”を演習で学ぶ-」をテーマにしたセミナーを開催することにした。

 セミナーでは「提案を成功に導く要素とは何か」「勝てる提案書作りのポイント」を講義するだけでなく,ミニ演習を実施することで「実際の提案事例から学ぶストーリー作り」「顧客を納得させる“デシジョンテーブル”の作り方」まで,具体的に解説する。

 講師はソリューションサービス研究所・代表取締役の久井信也氏。以前は富士ゼロックスSE部長を務め,SE部門の教育体制,人材育成計画,SEマネジャーやプロジェクトマネジャーなどの養成・教育プログラムを企画,実施してきた。ソリューション提案の現場に精通したコンサルタントによる解説,演習による指導を受けることができるまたとないチャンスだろう。

 なお当日は,提案書作成のほかにも「日経ソリューションビジネス ワークショップ2007」と題して,「アカウントプランの作成方法」「商談に勝つためのRFPの読み方」といった講座を設けた。どれも,ぜひ参加していただきたいテーマである。