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前回、システムコンサルタントは陸上の十種競技選手のように、様々なことをこなせなければならないと述べた。では、普通のSEをどのように訓練すれば、顧客の経営者と会話ができるシステムコンサルタントに仕立てられるのか。その育成の内容や方法について今回より紹介したい。

 システムコンサルタントには、IT技術寄り、IT企画寄り、そして経営寄りの3種類の活動が必要である。IT技術寄りの内容はSEが得意な分野である。ここではビジネス創りに直結するIT企画寄り、経営寄りの視点・スタンスで活動できるコンサルタントの育成を主眼に紹介する。

 企業にとって情報システムはナマモノ、生き物である。そのため、経営者の理解、愛情、意思が必要になる。システムに対する関心や理解が経営者に足りない場合、まずそれを正さないとシステムは無意味なものになりかねない。システムは経営の課題である。経営者がきちんとした問題意識とIT活用についての考え方を持つことが、すべての始まりである。川の流れと同じように、上流(経営)が清まれば、下流のITは自ずと清まるのである。

まずビジネスマンになることから始める

 システムコンサルタントが経営者に対して、システムについての考え方やビジネスとの関連などを確認し、指導するためには、経営者との会話が必要となる。会話することで、コンセプトや本質が何かを的確につかむ。それは、単に経営の意向を聞いて、そのまま情報システムに反映させることではない。経営者の言いつくせない意をくみ、経営者ですら気がついていない視点をカバーしたシステムを提言することである。

 大相撲の横綱になるには「心」「技」「体」を鍛えなくてはならない。経営者と会うシステムコンサルタントも、敬意をもって接してもらえるような何かを身につけなければ、本質を聞き取れるような会話ができない。システムコンサルタントも、コンサルタントとしての「心」「技」「体」が備わらねばならないのである。そして鍛える順番は、相撲の場合と同様に「体」・「技」・「心」の順である。

 ではシステムコンサルタントにとっての「心」「技」「体」とは具体的にどのようなもので、どのように身に付けていけばよいのだろうか。まず「体」とは、ビジネスマナーの習得のことである。コンサルタントである前に、まずビジネスマンであらねばならないからである。ここでいうビジネスマナーとは、新人教育のような挨拶の仕方とか、名刺の出し方などのことではない。ビジネスマンとしてのマインド、行動、責任、部下の育成などのすべてを指す。

 単なるSEなら、優れた技術を持っていれば、「アイツは、マナーが悪いけれど仕事がしっかりしているからしょうがないか」で済んでいるところがあるかもしれない。しかし、システムコンサルタントを目指す人はそうはいかない。社外の、しかも経営レベルの人と会話しなければならないからである。

 経営者は、技術があればそれで満足してくれる人種ではない。システムコンサルタントである前に、ビジネスマンとしてのマナー、マインドをしっかり身に付けていないと、相手にされないのである。苦労してアポイントを取り会えたとしても、人生のプロでもある経営者には一目でどんな人間なのかを見抜かれてしまう。ビジネスマンとしての基本ができていないことを見抜かれたコンサルタントは、もう真の会話ができず本質を聞けなくなるのである。

 ビジネスマナーの習得は、スポーツ選手が足腰を鍛えるのと同じことである。ビジネスマナーという四股を十分に踏んだ後、コンサルティングに必要な「技」と「心」を鍛えて、初めてコンサルティングビジネスという土俵に上がれるわけである。

ビジネスマナーとはいかなるものか

 そもそもビジネスマンとは、どうすれば儲かるのか常に考えて仕事をする人のことである。営業にあってはどうすれば売れるのか、総務であればどうすれば安全かつ健康に社員が働けるようになるのかなどを、常に考えて仕事をする人はビジネスマンといえる。一方、サラリーマンは会社にいることで給料をもらう人のことである。英語で言う「Officer」と「Clerk」の違いも同じだ。Officerは自ら仕事をするが、Clerkは言われたことをやる人の意味 である。

 システムコンサルタントも自ら考え、自ら行動し、儲けるビジネスマンでなくてはならない。企業セミナーなどで自説を語るだけ、本を書くだけでは先生になってしまう。セミナーで講演する、本を書くことを儲けにつながる手段にしてこそ、初めてコンサルタントとなる。聴衆をうならせる講演、時代を鋭く切る著作はあくまでも自身の実力を示すのが目的であって、それをコンサルティングの仕事に結び付けられないと意味がないのである。

 コンサルタントは、ビジネスマンの中のビジネスマンである経営者に会って話をするわけだから、自らも本物のビジネスマンでなくてはならない。そして、本物のビジネスマンは仕事を創る人である。コンサルタントは仕事を創るのが仕事なのである。

 本物のビジネスマンを目指して、システムコンサルタントが習得すべきビジネスマナーを挙げる()。ビジネスマナーとはどんな行動様式なのか、そのポイントをかいつまんで解説する。

図●システムコンサルタントを目指す人は、まず本物のビジネスマンでなければならない
図●システムコンサルタントを目指す人は、まず本物のビジネスマンでなければならない

<有言実行>
 有言実行とは、「私はこの企業に対してアプローチして、いつごろまでに、それを成功させます」と宣言して、行動することをいう。うまくいかないときは、うまくいかなかったと報告し、うまくいったときはその成果を報告するという仕事の進め方である。一方、不言実行とは、やろうとしていることも、やっている途中のことも報告せずに、失敗したら何も言わず責任を問われないようにし、うまくいったときだけ「私はひそかに活動して、こんな成果を上げました。誉めて下さい」という行動である。

 ビジネスマンの仕事の進め方は、有言実行しかありえない。自分が何をしているか周りに見えるようにして行動する。そして、途中経過を報告し、次はどうするかを含めて分かるように行動し、結果を報告する。

<報告は即座に、直接話法でする>
 ビジネスマンは新しい事を聞いた時に、あるいは知った時に、これを誰に報告したらよいか即座に判断できなくてはならない。そして即実行する必要がある。報告内容は直接話法で行う。直接話法とは、聞いたままを報告することである。いつ、どこで、誰に、どんな状況で、何を聞いたのかをそのまま報告するのが、ビジネスマンの報告の仕方である。この件は大したことがないと自分で判断して報告をしなかったり、報告のタイミングを逸してしまったりすることは、ビジネスマンとして失格である。

<原典に当たる>
 「原典に当たる」とは、新聞・雑誌などに掲載されていたからといって鵜呑みにして信用してはならないということである。必ず、そのニュースソースや、記事に出ていた会社や社員に確認するなど、情報の信ぴょう性を常に確認しなければならない。ITサービス業は正しい情報が売り物であり、いい加減な情報では困るのである。

 また、人は何かあると自分の持っている知識や情報の範囲で分析しがちなもの。そうではなく、自分の知識や能力に対しても常に謙虚にとらえ、専門家に聞いて確認しようという姿勢が大事である。その姿勢を維持すれば、人のネットワークもどんどん自分のものにすることができる。そのうち、自分自身が専門家と見なされて「こんなことを教えてほしい」と聞かれるようになればしめたものである。

<“響く”ことができる>
 何かを聞いたり、読んだりしたりして心を動かされる。そうしたら必ず感想をその人に伝える。それが“響く”ということである。例えば、仕事の上で付き合いのある人が新聞、雑誌などに登場したら、すぐにメールなどで感想を送ってあげる。響くことは、大事なビジネスマナーである。そうしたことができていないと、「こういうアイデアがある。どのようにしたらよいか考えてくれ」と聞かれても響けないのだ。

<何のためにしているかが分かる>
 会社の役員が現場に来て、忙しげにパソコンに向かっている3人の若者に「君は今、何をしているのかね」と尋ねたとしよう。最初の人は「プログラムを書いています」と答える。次の人は「新会計システムを作っています」と答える。最後の人は「経営改革を支援しています」と答えた。システムコンサルタントを目指すなら最後の人のように、常に「何をしているかではなく、何のためにしているか」を答えられるビジネスマンにならなくてはならない。

<“ほどほど”ではなく、常に挑戦>
 人間というものは「ほどほど」にやっていたのでは絶対に伸びない。いつも自分の能力以上のものを掲げて、挑戦していくことにより伸びる。プロスポーツ選手を見ていれば明快である。プロは「ほどほど」の練習などは絶対にしない。システムコンサルタントを目指す場合も同じである。挑戦し自らを厳しく鍛え上げることが、一番の近道である。

ビジネスマナーは日常活動のなかで鍛錬させる

 お気付きのようにビジネスマナーの個々の項目は、ビジネスマンであれば当たり前の内容である。では、当たり前のことをどうして習得させるか。特別で簡便なやり方などはない。日常業務のすべての機会をとらえて、都度の指導を繰り返すことが肝要である。今まで「技術者だから」と甘やかしていた部分を排除し、本人にもシステムコンサルタント、つまり本物のビジネスマンになるべく自覚を促す必要がある。

 新聞の記事をそのまま活用する者がいたら、原典に当たらせる。報告を受けたら、「自分の意見ではなく、聞いたことをそのまま報告せよ」と厳しく指導する。会議の場では意識的に厳しく叱り、その指導を周りにも聞かせ、見させるなど緊張感を持って研さんできる機会を多数作ることである。「まあいいか」ではビジネスマナーは身に付かないのである。

 ビジネスマンとしての基本ができてきたら、次はシステムコンサルタントの「技」を習得させる。その「技」がどんなものかを次回に紹介したい。

黒岩 暎一
テクノロジストコンサルティング代表取締役社長
元・野村総合研究所常務システムコンサルティング本部長。約200社・団体のシステムコンサルティングを経験。2005年にテクノロジストコンサルティングを設立。CIOやITサービス業向けコンサルティング、システムコンサルタント育成サービスを提供。