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写真1●アルプス(中国)公司の白井省三董事総経理
写真1●アルプス(中国)公司の白井省三董事総経理

「情報システムへの投資額は,ともすれば日本並みになってしまう。ビジネス規模の大きさが違うことを考えれば,より効率的な投資を心掛ける必要がある」――。アルプス電気の子会社であるアルプス(中国)公司の白井省三董事総経理は,情報システムに関する取り組みのコツを明かす(写真1)。

 北京に拠点を置く同社は,中国に10社ある現地法人を統括している。同社は,2005年10月に中国各法人の基幹系システムを共同化。06年の6月に日本法人とのデータ連携を実現させるなど,システムの改善に取り組んできた。

 その中で痛感したのが,中国においては情報システムへの投資が大きな負担になることだ。日本よりも人件費が安いにもかかわらず,システム投資額をそれに見合った比率に抑えることが難しい。「今年から,情報システム投資をより厳密に数値化するつもりだ。日本ではよく売り上げの1%程度が目安といわれるが,中国でも同じとは限らない」(白井董事総経理)。

「ハードはむしろ中国のほうが高い」

 中国と日本の物価の格差を踏まえれば,当然,システム構築費用も安く上がると思いがちだ。しかし,一概にそうはいえない。コクヨ商業(上海)公司の井上雅晴董事総経理は,「ハードウエアやソフトウエアの価格は,日本と大差がない。ハードウエアに関しては,むしろ高い印象がある。IT予算は当初の見積もりの1.3倍前後を確保するようにしている」と打ち明ける。デンソー(中国)投資公司(デンソー北京)も,「日本で使っているAS/400を購入しようとしたら,税金分日本より高かったため中国では購入せず,日本のシステムを共同利用することにした」(情報系統部の鳥居豊部長)。

 リコー(中国)投資公司信息系統部の梅里啓二経理も,「ハードウエアは,日本の1.5倍程度するものもある」と証言する。リコーは,グローバル拠点で利用するハードウエアやソフトウエアを標準化している。日本で利用しているサーバーやクライアントPCなどのハードウエア製品,運用監視ツールやWebアプリケーションなどのソフトウエア製品を中国でも導入しているが,中国で調達すれば安くなるとは限らないという。デンソーの子会社である。

 製品ベンダーは,「中国を含めたグローバルで同じ製品を提供できるようにしているが,ハードやソフトの価格設定は現地法人によって異なる」(IBMアジア・パシフィック・サービスの福田幸夫エグゼクティブ)と説明するのみ。ただ実際には,「中国では大幅な値引きが当たり前。そのため日本より若干高めの価格設定にしている」(北京オラクル軟件系統公司の沼田治総経理)という。日立情報システムズERP事業部の中道勉事業部長は,「独SAPのR/3は中国でも数千万円は下らない価格設定。それが1/3程度にまで値引きされるケースが多い」と説明する。

 このような格差は,海賊版などが横行する背景にもなっている。日本ヒューレット・パッカード 中国ビジネス統括本部の石澤稔統括本部長は,「筐体は当社製でも,中の部品がまったく異なる製品が売られていたケースがあった。顧客には当社から直接購入するよう呼びかけている」と話す。

人件費も高騰しつつある

 「プログラム開発に加えてドキュメント作成などまで依頼すると,単価が跳ね上がる。しかし,それもやむを得ない」。こう説明するのは,現地ベンダーにシステム開発を委託する上海ファミリーマート公司の加計朗経理。同社は現在,上海と広州に107店舗を展開している(写真2)。現地ベンダーに店舗システムの開発を委託し,04年12月に中国市場向け店舗システムを稼働させた。

写真2●上海市内にある,上海ファミリーマートの店舗
写真2●上海市内にある,上海ファミリーマートの店舗

 中国ではシステム構築や運用に必要な人件費も高くなりつつある。IT人材が不足しているためだ。中国の安い人件費でシステム開発費を低減するのは中国にある現地法人に限らず,日本の本社でのオフショア開発でも条件は同じである。中国現地法人向けだから格段に安くすむ,という概念は通用しなくなりつつある。

■追記
この連載は日経コンピュータ4/30号の特集記事「中国市場を切り開く」の取材結果などを参考に執筆しています。[2007/05/11 13:30]