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■お客様に提案書の内容を説明する。また、セミナーで講演するなど、プレゼンテーションの機会は多いもの。プレゼンにおいて大切なことは何か、をファシリテーションの視点で解説します。

(吉岡 英幸=ナレッジサイン代表取締役)


 顧客の前で提案書の内容をプレゼンする際や、セミナーで講演する際には、たいていなんらかのドキュメントを用意する。分厚い提案書だったり、パワーポイントでつくったスライド何十枚ものプレゼン資料だったり。

 ドキュメントが充実していることはいいことだ。しかし、プレゼンというのはドキュメントの朗読会ではない。あくまで“プレゼンテーション(表現すること、演技すること)”だ。書き物の資料と生身の人間が表現するもの、この2つが組み合わさってはじめて完結する。

 よく提案の場面で提案書を棒読みしているだけの人や、セミナーの講演でPCの画面をずっとにらんで、パワポに書いてあることを読み上げているだけの人を見かける。たしかにドキュメントは充実している。しかし、演者の表現するものがそれに対してなんの付加価値も与えていなければ、プレゼンを聞くよりもドキュメントを読んでいた方がよっぽどわかりやすい。

 生身の人間が演者をする意味がなくなっているのだ。

“ドキュメント+演技”でプレゼンは成り立っている

 ドキュメントが充実していればいるほど、演者の表現はそれ以上のものを要求される。その要求に応えられないと、「話がつまらんから、あとで資料読んでおけばいいや」ということになる。

 前回「プレゼンとは送り手と受け手でつくる化学反応だ」と言った。そのためには、受け手が自身のイマジネーションを広げられるような演出をしなければならない。

 ここで、書き物であるドキュメントと役割を分けるうえで、演者が直接表現することを「演技」と呼ぶことにする。プレゼンとは、ドキュメント+演技で成り立っているものであり、プレゼンを充実させるためには、ドキュメントと演技の役割を考えなければならない。

 ドキュメントですべてを語ってしまわないことだ。プレゼンを、演者の演技があって初めて意味をなすものにするのだ。そうすることで化学反応が起こる。

 「あとで資料だけ見てもわからないじゃないか」と思われるかもしれない。それなら、お持ち帰り用の資料を別に用意しておけばいいのだ。プレゼン時に使うドキュメントはあくまでガイドラインである。それ自体では完結しないものだ。

「紙芝居方式」と「百人一首方式」

 そのように演技と役割を分けるためには、ドキュメントをどのようにつくればいいのか。ドキュメント作成の考え方を紹介しよう。簡単なのは「紙芝居方式」と「百人一首方式」だ。

 「紙芝居方式」は、文字通り紙芝居である。ドキュメントはシンプルな絵や図版中心にして、詳しい説明はあえて書かない。その絵が何を意味するのかを演技で解説をする。絵を見てイマジネーションを広げながら演者の話に耳を傾けることで、プレゼンがより臨場感を持って伝わる。

 もう一つの「百人一首方式」は、百人一首のように上の句と下の句で考える。たとえば、「A社はどのようにしてIT投資コストを30%削減したのか?」というドキュメントの投げかけに対して、演者が演技で解説する。このようにテキスト情報で説明できてしまうことをあえて説明せずに、演技で補うことで、聴き手の好奇心を刺激し、インパクトを強くする。

 私はプレゼンをする場合、このような考え方でドキュメントと演技の役割を考えるようにしている。シンプルな考え方だが、プレゼンがぐっと良くなる。


著者プロフィール
1986年、神戸大学経営学部卒業。株式会社リクルートを経て2003年ナレッジサイン設立。プロの仕切り屋(ファシリテーター)として、議論をしながらナレッジを共有する独自の手法、ナレッジワークショップを開発。IT業界を中心に、この手法を活用した販促セミナーの企画・運営やコミュニケーションスキルの研修などを提供している。著書に「会議でヒーローになれる人、バカに見られる人」(技術評論社刊)、「人見知りは案外うまくいく」(技術評論社刊)。ITコーディネータ。