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 これまで本欄において、「企業情報システムがまだ経営に寄与していない」「その問題を解決するために経営者は、情報責任を果たさなければならない」というドラッカーの主張を紹介してきた。引き続き、ドラッカーのIT経営論を読み、考えていきたい。

 経営者の情報責任とは「会社を舵取りするために、こういう情報が欲しい」と明言することである。ただ、何も手がかりがないところから、必要な情報を定義するのは簡単ではない。ドラッカーが「組織が必要とする情報」を四つに分けて整理しているので、今回はそれを紹介する。
 組織が必要とする情報についての論考は、『未来への決断』『明日を支配するもの』『初めて読むドラッカー チェンジリーダーの条件』といった著作に収録されている。これらは同一の論考である。この論考における情報の整理の仕方について、付け加えたり、修正する点がなかったためだろうか。
 読者の方々は、四象限のマトリクスを頭の中に描いて頂きたい。マトリクスの横軸に情報の入手場所を、縦軸に情報の目的をとる。情報の入手場所とは、企の中にある情報か、あるいは外にある情報か、といった区別を指す。一方、情報の目的とはちょっと分かりにくいかもしれないが、イノベーションを推進し富を創出するための情報か、それとも企業活動のコストに関わる情報か、といった違いを意味する。
 以上の分け方をまとめると、四象限の左下には「会計情報」が位置付けられる。企業内の、コストに関わる情報ということである。ドラッカーは、ABC(活動基準原価計算)の採用を推奨している。そういえば、我が国においても、10年ほど前であったか、ABCが取りざたされた。最近あまりこの言葉を聞かない。企業にしっかり定着したからであろうか、それとも消え去ってしまったからだろうか。
 ただし、社内のコスト情報を精緻に把握するだけでは不十分である。

ますます激化する市場にあって競争に勝つためには、経済活動の連鎖全体のコストを把握し、その連鎖を構成する他の組織との連携のもとにコストを管理し、成果を最大化しなければならない。(中略)経済連鎖全体のコストを管理することは、コスト主導の価格設定から、価格主導のコスト管理に移行することに伴う必然でもある。

 こうした情報は、「社外」の「コスト」情報であり、先に紹介した四つの象限の右下に位置付けられる。しかし、一体どうやったら、「社外のコスト情報」を入手できるのだろうか。ドラッカーは、「経済連鎖に組み込まれているすべての企業が、統一的な、あるいは少なくとも接続可能な会計システムをもたなければならない」と述べている。ドラッカーは「ほとんどの企業にとって、経済連鎖全体のコスト管理は容易ではない」と認めつつも、「いかなる障害があるにせよ、行わなければならない」と強調する。