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 2005年に起きたIT(情報技術)関連の出来事で最も重要なものは何か。こう聞かれたら筆者は「東京証券取引所のシステム障害でしょう」と答える。その理由は「ITの舵取りに失敗、社長を退任する事例がついに出た」からである。 これまではITで下手を打ったとしても、社長が退任する事態には至らなかった。新しい情報システムの開発に失敗し、100億円単位の損失を出した企業を筆者は数社知っているが、それを理由に社長が辞めたところはない。


「社会的責任を取ってご退任願います」

  「うちのシステムは大丈夫か。東証のようなトラブルを起こす心配はないのか」
 「当方のシステムで処理するデータ量はこのところ、毎秒×××件とほぼ一定です。この範囲であれば、現行システムで十分さばけます。万一、システムに障害が発生しても、バックアップセンターに用意してある代替システムが作動します。またシステム開発要員はきちんと内部で育成しております」
 「それでもシステムが止まってしまった場合、やはり俺は辞めないといけないのか」
 「そうならないよう努力しますが、万一の場合、当方のシステムの社会的な重要性に鑑み、ご退任願います」
 「………」
 ある組織の最高責任者とシステム担当者の間で交わされた会話である。東証の社長が辞任したニュースが流れた後、多くの企業の社長とシステム責任者の間で同様の会話があったのではないか。
 社長が情報システムの重要性を認識し、日頃から注意を払うようになる。東証のシステム障害の結果、こうした社長が増えれば、それはそれでよいことである。ただし、社長が心配のあまり、過度の安全対策をシステム担当者に迫るようになると、非常にまずい。
 以前本欄で書いたように、絶対に止まらない情報システムを作ることは不可能である。いくらクビになりたくないからといって「システムを絶対に止めるな」「システムを動かす時は、バグ(コンピューターソフトウエアの欠陥)をすべて取り除いてからにしろ」などと、非現実的な注文をシステム担当者にぶつけてはならない。できないことを命じられたシステム担当者は困惑し、萎縮し、最後はやる気をなくす。しかもシステム費用は膨れ上がる一方となる。

はりきる監督官庁、焼け太りの懸念

 もう1つの懸念は、監督官庁が興奮することである。今回のような大きな障害が起きると監督官庁は、企業のシステム開発を担当したIT企業まで立ち入り検査したい、と言い出したりする。だが、むやみに権限を拡大するのはよろしくない。そもそも、立ち入り検査をいくらしたところで、完全なシステムを構築することはできない。
 日本企業がこうした不毛な事態に陥るのを防ぐべく、「ITで社長を辞めないための三カ条」を作ってみたので紹介する。