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 企業内の役職の中で最もつらいポストは何か。私見では、情報システム部門の責任者、いわゆる情報システム部長ではないかと思う。とりわけ、社内の別部門から、いきなりシステム部門の責任者に異動になった新任者の苦労は並大抵ではない。
 こう書くと、「経営者の方がはるかに大変だ」「システム部門はコストセンターに過ぎない。金を稼いでいる事業部門の方が苦しい」といった反応が返ってくるだろう。筆者の見方に偏りがあることは承知している。それは、筆者が過去20年近く、様々な企業や団体の情報システム部長を取材してきたためだ。
 ただし、筆者の思い込みを割り引いても、やはり情報システム部長はつらい仕事だと思う。何といっても厳しいのは、企業内において、情報システム部門の存在意義がいまだによく理解されていないことである。この点が、営業や生産をはじめとする事業部門や経営者と、情報システム部長とは決定的に異なる。
 そもそも、企業の経営陣や社員は、情報システム部門に対し、さほど深い関心を持っていないことが多い。仮に関心があったとしても、「金食い虫」「専門おたく集団」「すぐに『できない』と言う集団」といった悪印象を持っていたりする。このため、ともすれば、「情報システム部門を外部の企業にアウトソーシングできないか」という話になる。アウトソーシングについては前回の本欄で批判したので、ここでは繰り返さない。


情報システム部長が直面する困難

 こういった状況なので、情報システムを企画し、開発し、運用する情報システム部門の仕事がどのようなものか、どれほどの価値があるか、経営陣や社員から今一つ理解されていない。世の中につらい仕事はたくさんあるが、何よりつらいのは、仕事の意義や内容を理解してもらえないことだろう。
 意義を理解されないうえに、情報システム部門の仕事を遂行していくに当たっては、さらにいくつかの難しさがある。

[1] 言葉が分からない

 情報システム部長に就任したマネジャーがまず最初に困惑するのが「言葉」である。日本語ではない、といって英語でもない、奇怪な言語が情報システムの世界では氾濫している。
 何とか言葉について部下に説明してもらい、一通りのことを理解したとしても、次々に新しい言葉が登場する。情報システムに関する技術革新のスピードは速い。情報システム製品を売り込むコンピューターメーカーやソフト会社は新しい言葉を作り出し、それをメディアが鵜呑みにして記事を書く。システム部長としては実に悩ましい。

[2] 部下が頑固である

 情報システム部門のメンバーたちは、仕事をなかなか理解されない状況にもかかわらず、企業の神経系統というべきシステムを支えてきたという自負がある。それは重要なことだが、一歩間違うと過去のやり方に固執しがちになる。
 新任の情報システム部長が、「こうしてみたら」とアイデアを出す。すると部下が、「できません。理由は×××です」とぴしゃりと言い返す。専門家の発言だけに、部長としてはそれ以上言えなくなってしまう。
 こうしたことが繰り返されると、気弱な部長なら、次の人事異動の時期を待ち望み、新しいことを一切手掛けなくなる。気が強い部長なら、自分の息がかかった課長クラスを引っ張り込み、言うことを聞かない部下を排除し、新しい体制で事を進めようとする。しかし、長年システムのお守りをしてきた課長クラスがいなくなると、仕事がまわらなくなったりする。