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 IT(情報技術)には全く無縁であったのに、人事異動で突然、情報システム部長に配属された場合、いったいどうしたらよいだろうか。今回は新任のシステム部長が、就任してから半年以内に実行した方がよいと思われる「5つの鉄則」を説明する。

[1] ビジネスの言葉で話してもらう

 新任部長の重要な仕事は部下の人心掌握である。まずは部員と話をする必要がある。しかし、大きな問題がある。部下が話す言葉がよく分からないことだ。だが、分からなくても悲観することはない。「普通のビジネス用語で説明してほしい。僕が理解できない案件を役員会で通せない」と部下に頼めばよい。
 そもそもITを本業にしている企業でなければ、システム部員はITの専門家として雇用されたわけではないことが多い。銀行員、自動車メーカーの社員、小売業の社員として、採用されたはずである。つまり部下もかつては、ITの素人だったはずだ。ただ、長年ITの仕事を手がけ、よく分かってくると、つい専門用語を使ってしまう。
 注意すべきは「もっと分かりやすく」と言わないこと。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)で会長・頭取を務めた岸暁相談役は十数年前、入行以来初めて、システム部門の担当になった時、システム担当者の言っていることが全く分からなかった。「分かりやすくと言うと、専門的技術的にに詳しく説明してくれる。だからかえって分からない。もっと簡単に説明してほしいと繰り返し頼んだ」(岸氏)という。

[2] システムの全体像を把握する

 情報システム部に着任すると、部下がご進講にやってくる。まず、「システムの全体像を描いた絵を見せてほしい」と言うことだ。企業において情報システムは多様な業務を処理しており、非常に複雑なものになっている。個別のシステムの詳細を一つひとつ説明されてもなかなか理解できない。仕事の流れと主要なシステムの関連が分かるグランドデザインを最初に見た方が分かりやすい。
 ところが企業によっては全体の図がない場合がある。長年にわたってシステムを拡張し続けたため、全貌がシステム部員ですら分からなくなっているわけだ。万一、こうした状況であった場合は、全体像をきちんと描く作業を部長の初仕事にするとよいだろう。
 ただし、全体像を把握する作業は結構手間がかかる。理想的なのは、全社の業務改革プロジェクトを推進する時に、同時に業務とシステムの全体像を整理する作業を一緒にやってしまうこと。何かの改革プロジェクトが進行していたら、システム部長はプロジェクトの事務局に行き、「システム部も参加したい」と相談すべきだろう。「今回は業務改革が主で、新システムを作る必要はない」と言われても、「せっかく業務の見直しをするなら、オブザーバーでいいからぜひ入れてほしい。先々システムが必要になった時にすぐ対処できるようにしておきたい」と粘ることである。

[3] あらゆるIT関連会社に会う

 新任システム部長の所には、部下に続き、コンピューターメーカーやシステム開発会社など、出入りのIT関連会社が次々にやってくる。これまで取引のなかった会社も押し寄せる。
 というのは、IT関連の会社にとって、システム部長の交代時は商売のチャンスだからだ。往々にして、新任システム部長は当初、これまでと違った新しいことをしようと意気込むものである。前任の部長がよく使っていたシステム開発会社とは別の会社に発注してみようかと考える。
 面会を希望してくるIT関連会社には、極力、会ってみることである。部下から、「あの会社には会わなくていいです」と言われても、とりあえず会う。何か面白い情報を得られるかもしれないし、本当に役立つ提案を出してくれるかもしれない。長年の取引先とばかり仕事をしてきて、なれ合い気味の部下がぴりっとするという効果もある。
 ただし、面会したIT企業にどれほど魅力的な提案をされても、すぐに飛びつかないことだ。ITというと何かハイテクの雰囲気がするが、その実態は人間が中心になって進める地道な作業の固まりである。人間がやる以上、ミスはつきものだし、飛躍的に生産性が高まる魔法などない。

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