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 多くの人が使っているサービスであり、そのサービスはほとんどがコンピューターによって行われている。ただし、利用者の満足度はさほど高くなく、サービスの有償化については疑問を抱いている。したがってそのサービス提供が中断されると、利用者は怒り、強い不満を表明する。
 ここで言っているサービスとは、銀行のサービスである。経営やビジネスと情報システムのかかわりを考える上で、銀行は恰好の題材と言える。誰もがそのサービスを使ったことがあるし、何か一言いいたい点があるからだ。
 日経ビジネスEXPRESS(現・日経ビジネスオンライン)というサイトで連載してきた『経営の情識』の中から、銀行とその情報システムに関するコラムを再掲してみたい。2002年10月7日に公開した、経営の情識の第1回目も銀行をテーマにしていた。題名は、『辞任する東京電力社長。みずほ銀行システム障害時の発言を問い直す』というものである。最初に補足すると、東京電力は当時、原子力発電の安全基準に関する数値について不適切な行為をしたとして批判されていた。


 東京電力の南直哉社長が2002年10月中旬、辞任する。新聞を読んでいると、東電は不正は何でもござれで、しかも隠蔽体質を持つ、ダメな企業だと思えてくる。しかし、電力の安定供給という重要事項については、東電は今のところ優等生である。今回も事故を起こしたわけではない。むしろ最大の問題は、原子力発電の安全基準が新設時を想定したものしかなかった点だろう。もっとも記者は原発問題を取材した経験がないので、余計なことは言えない。

修復作業の最中に損害賠償請求の発言

 しかし記者は全く違うことで、南社長の発言はいかがなものか、と思っていた。それは2002年4月に起きた、みずほ銀行の情報システム障害に関することである。障害が起きていた当時、4月20日付の日本経済新聞によると、南社長はみずほ銀のトラブルに関して、「何らかの経営責任を取るのは当然」とし、東電が被った損失については、「みずほ銀に請求する」と述べた。
 当時、南社長は電気事業連合会の会長であり、4月19日に開かれた定例会見でこう発言したという。さらに、「東電は、みずほに事前テストを依頼したのに拒否された」といったことを明らかにした。記者の知る限り、この発言は有力企業の経営トップが賠償請求について明言した第1号であった。
 ちょうどその日、みずほ銀の事務センターでシステム障害の修復作業に取り組んでいた関係者に対し、記者は電話で取材をしていた。10日後の4月30日には、1000万件を超える口座振替を処理しなければならず、徹夜続きのシステム担当者たちにはさらなるプレッシャーがかかっていた。その緊迫した状況を聞いていた時に、南社長の話が出た。やり取りを再現してみよう。