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 経営者の重大な仕事は先を読むことである。そのために経営者は様々な方法で、情報を集めている。コンピューターとは直接関係がない話だが、経営に関わる情報収集について書いたコラムがあるので、今回はそれを再掲する。日経ビジネスEXPRESS(現・日経ビジネスオンライン)というサイトに、2004年9月29日に掲載した『新聞を読み続けると「ビッグピクチャー」が見える』である。

 「日本のメディアは景気がよいと楽観論一色になり、不景気になると今度は悲観的な論調ばかりになる。メディアの一員として、問題だと思っている」。こう話したところ、米スタンフォード大学の元学長であるウィリアム・ミラー氏はこう応じた。「米国のメディアも同じです」。

 ミラー氏はシリコンバレーの大物の一人である。スタンフォード大学は産業界との連携を通じて、数々のハイテク企業を生み出してきた。こうした仕組み作りにおけるミラー氏の貢献は大きい。同氏はスタンフォード大学の名誉教授を務めつつ、IT(情報技術)・ハイテク企業の会長などを兼務し、自分自身でもナノテク関連企業を創業している。

「悲観論一色でもパニックになってはいけない」

 MOT(マネジメント・オブ・テクノロジー、技術経営)をテーマにした日経ビズテックという媒体の記事を作るため、産官学連携に関してミラー氏を取材していた時、日米のマスメディアのことが話題になった。それが冒頭のやり取りである。「米国のメディアも同じ」と言った後、ミラー氏は次のような話をしてくれた。

 「私は20年以上、新聞のヘッドラインを収集している。集めたヘッドラインを継続して読んでいると、ビッグピクチャーが見えてくる」

 ビッグピクチャーとは全体図といった意味である。個々の領域では激しい浮き沈みがあったとしても、ビッグピクチャーで見ればハイテク産業は発展し続けている、というのがミラー氏の意見である。そして、シリコンバレーは今でも、ハイテク企業を育て上げる「生息地」としての役割を果たしているという。

 「ITバブルが潰れた時、シリコンバレーを巡って悲観的な記事がたくさん新聞に出た。技術革新が激しいので、ビジネスの業績は上昇と下降を繰り返す。ジャーナリストは個々の事象(ディテール)を追うので、ある時期の記事が悲観的なものばかりになることがある。だからといってパニックになってはいけない。ビッグピクチャーを見ることが重要だ」

 日本の産学官連携についてはこう語った。「長い目で見ていく必要がある。大学の技術を公開し、その成果が大学に戻ってくるまでに10年以上はかかる。悲観することはない。そして慌ててもいけない」。