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 マイクロソフトが、同社の屋台骨を支える基本ソフトとオフィス用アプリケーション・ソフトの新製品をそれぞれ発売した。発売を記念したわけではないが、3年前の2004年1月14日、日経ビジネスEXPRESS(現・日経ビジネスオンライン)というサイトにて公開した『成熟企業になったマイクロソフト、課題は収益源の確保』というコラムを再掲する。

 米マイクロソフトにとっての最大の課題は何であろうか。同社の基本ソフト攻撃するコンピューターウイルスか。事前に公表した計画通りに製品をきちんと出荷することか。対抗馬として台頭しつつあるリナックスか。しかしマイクロソフトを専門とする、米国の調査会社は別の課題を筆頭に挙げる。

 米国の調査会社であるディレクションズ・オン・マイクロソフト(Directions on Microsoft)は先頃、「マイクロソフトの2004年の課題トップ10」を発表した。これは、同社のアナリストチームが毎年調査し、発表するものである。日本では、「ディレクションズ・オン・マイクロソフト日本版」を発行しているメディアセレクトが1月5日に発表した。

 10の課題を見ると、ウイルス対策を含む「根本的なセキュリティ対策」が2番目、「明快で信頼性の高いロードマップ(製品計画)の提示」が3番目、「Linux(リナックス)に対する優位性の証明」が5番目となっている。カッコ内の語句は筆者が挿入したものである。

 これらの課題は無論、マイクロソフトにとって重大事であるが、ディレクションズ・オン・マイクロソフトは別の課題をリストの筆頭に提示した。それは、「成熟した産業、成熟した会社における収益源の確保」である。世界で最も利益を上げている会社の1つ、マイクロソフトの課題が「収益源の確保」というのは、なかなか興味深い。

ドル箱のオフィス製品市場が飽和

 マイクロソフトにとっての最大の収益源は、ワードプロセッサーや表計算ソフトを組み合わせた「オフィス」というパッケージソフトである。基本ソフトのウィンドウズももちろん利益を上げているがオフィスほどではない。マイクロソフトはゲーム機のようなハードウエア事業や、オンラインサービス事業も手がけているが、ともに利益は出ていない。

 マイクロソフトは数年おきに、オフィスの機能強化を実施、既存顧客が新しいオフィスに切り替えるように仕向けている。これをアップグレード製品の販売といい、ワープロや表計算ソフトの市場をほぼ独占している同社にとって、利益の源泉となっている。全く新規の販売もあるが、オフィスがこれだけ普及すると、いかにアップグレード製品を売り込むかが重要になる。
 しかし、ディレクションズ・オン・マイクロソフトは、「新しい価値を付加したアップグレード製品を販売することは、マイクロソフトにとってますます困難になりつつある。アップグレードサイクルが長期化し、成長率が低下してきた成熟産業の中に同社はある」と指摘する。

 なぜアップグレードが進まなくなってきたのか。「多くの顧客がオフィス97などの古い製品でも『十分だ』と考えるようになったからだ。その一方で、顧客はこれまで以上にマイクロソフト製品への依存度を高めている。(中略)顧客は新製品や新機能より、現在稼働しているシステムの信頼性を高めることに、より多くの価値を見いだしている」。

 これが理由である。確かに、既存のオフィスやウィンドウズの機能は盛りだくさんであり、なかなか使いこなせない顧客もかなりいる。「使わない新機能を付加するより、突然停止したりしない製品にしてくれないか」と思う顧客は相当いるはずだ。