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 情報システム部長経験者、それも生え抜きが社長に就任する――。20年近く情報システム関連の記者を続けている筆者がかねて期待していることである。経営者が情報システムを理解することはなかなか難しい。それなら情報システムに詳しい人間が経営トップになればよい、という理屈である。

 以上は、2004年6月9日付で、日経ビジネスEXPRESSに公開したコラムの冒頭部分である。公開時の題名も 「情報システム部長が経営トップになる日」であった。公開からほぼ2年が経ち、筆者の記者経歴は「20年近く」ではなく「22年」になったが、それ以外は修正する必要がない。今でも、情報システム部門の生え抜きが社長になることを期待しているからだ。というわけで以下にこのコラムをそのまま再掲する。

 あえて情報システム部長と言っているのであって、情報システム担当役員ではない。多くの企業が「情報システムは重要」という認識を持つようになり、社長候補が歩むべきキャリアパスの中に情報システム担当役員のポストを組み入れるようになってきた。これはこれで結構なことである。ただし入社以来、情報システムと一切関わりがなかった幹部がいきなり、システム担当役員になったとしても、成果を上げるのは容易ではない。システム部長やつき合いのあるIT(情報技術)企業と会話ができるようになった頃には、担当が変わってしまうことが多いからだ。

 実は、情報システム部長もシステム担当役員と同様に、人事ローテーションの一ポストになっている企業が少なくない。冒頭の一文に「生え抜き」と入れたのは、情報システム部門の実務を自分の手でやった人という意味である。できれば新入社員の頃から、ぎりぎりでも課長くらいから情報システム部門に所属した人が、社長になることを筆者は期待している。

 筆者が知る限り、以上の条件におおむね当てはまる方が現在社長を務めている企業はいくつかある。思いつくままに挙げてみると、セコム、中部電力、ニチレイ、ミレアホールディングス(東京海上火災保険)など。最近では、2004年6月28日付で就任する三菱東京フィナンシャル・グループ(東京三菱銀行)の新トップが情報システム部長の「実務」経験者である。また同じく6月の株主総会で就任する伊藤忠商事の新社長もこの一団に入るだろう。

情報システムのリスクが高まっている

 こう書いてくると読者からいろいろとご意見や反論が出よう。想定されるご意見あるいは反論を列挙し、筆者の考えを書いてみたい。まず「経営トップは、情報を使いこなせればよいのであって、細かいシステムの実務を経験している必要はない」という意見があろう。

 その通りであるのだが、本欄の第12回で公開した「経営トップはITをどこまで理解すべきか」に書いたように、ITについてはやや細かいことを知っていた方がいい。その記事を読んだ読者から次のような質問を頂いた。

 「トップの情報システムに対する理解を深め広げることの意味・意義は分かりますが、今回の記事内容からすると、トップは情報システムに限らず、ありとあらゆることをある程度(深く)知っている必要があるということになるかと思います。トップはそれほどにまでゼネラリストである必要があるのでしょうか? 何か、違う気がしませんか?」

 米国の経営トップはありとあらゆることを知っている人が多い。だから日本もそうなれ、というつもりはない。ただし繰り返しになるが、情報システムについては、ある程度知っていた方がいいと思う。新システム開発の失敗、情報漏洩など、情報システムについてのリスクが年々大きくなっているからである。