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 社員一人ひとりが持つ知識(ナレッジ)を収集し、組織として共有・活用を目指す活動の総称。これまで特定の個人しか持ち得なかったナレッジを共有し、組織としての創造性や生産性を底上げすることを目指す。KM(Knowledge Management)と略記することもある。その原点は、一橋大学の野中郁次郎教授が1991年に発表した論文。人材の流動性が高くノウハウが社内にたまりにくい米国で最初に注目され、その後日本でも広まった。
 ここで言うナレッジとは、社員が仕事を進める過程で習得したり入手した独自のノウハウ、情報、成果物などを指す。ノウハウの典型は上手な商談の進め方。同様に顧客の好みといった定性的な情報や、評判の良い提案書などの成果物がナレッジに該当する。
 「誰がどんな分野に詳しい」という情報も、ナレッジ・マネジメントの対象である。この情報を集めた人事データベース(Know-Whoデータベース)の整備に力を入れる企業も増えている。社員同士の交流により新しいナレッジが生まれることを狙っている。

 日本企業の多くは1990年代後半から、ナレッジ・マネジメントに本格的に取り組み始めた。だが、「社員の協力が得られにくい」、「成果がなかなか出ないため経営陣が難色を示す」といった課題が続出し、失速する企業が相次いだ。一方で中長期的な展望に基づいて地道に取り組んできた企業では、ナレッジ・マネジメントの効果が確実に出始めた。
 例えば、ある金融機関は数年前から、顧客への報告資料を組織内で共有する体制を敷いた。これまでは経験を積まないと難しかった資料作成が、若手でもできるようになった。
 中堅ITベンダーでは、Know-Whoデータベースの成果が出た。入社5年足らずの若手社員がこのデータベースを利用して、想定顧客と親しい社員や社内の専門家を発掘。協力を取り付け新規ビジネスを立ち上げた。

 ナレッジ・マネジメントの活動では、一般にITを活用する。グループウエアや文書管理ソフトを使って、ナレッジを収集・共有する。ソフトが備える掲示板機能や文書管理機能を使って、「営業日報」、「新企画」など、あらかじめ設定したテーマごとにナレッジを登録する。
 ナレッジの数が増えてくると、欲しいナレッジを探し出すまでの時間が増加する。そうしたときは専門の自然文検索ソフトを併用するのも手だ。検索効率が高まり、ナレッジの活用がいっそう進む。
 ただし、ITだけではナレッジ・マネジメントは進まない。社員に「ナレッジを提供したい」、「ナレッジを使いたい」と思わせる仕組み/制度の創設が成功のカギを握る。例えば、NTT東日本の法人向け事業本部は、幹部社員のリーダーシップや個人のやる気といった「属人性」に頼らず、活動を継続できるような仕組みを構築した。