サーバーの台数を増やすことで、システム全体の処理性能を向上させる手法。処理性能に加えてシステム全体の可用性が向上する、比較的低コストで実現できるといったメリットがある。スケール・アウトに対して、1台のサーバーが搭載するプロセサやメモリーを増強することでシステムの処理性能を上げる手法を「スケール・アップ」または「スケール・イン」と呼ぶ。
スケール・アウトは、すでにWebサーバーでは一般的になっている。加えて、日本IBMや日本オラクルなどの大手ベンダーが2001年から、この手法を前提としたハードウエア(サーバー)やミドルウエアを出荷したことが普及を加速している。
スケール・アウトの基本的な考え方は、同じOSやミドルウエアを持つ複数のサーバーで処理を分散することで、全体の処理能力を上げるというもの。負荷分散装置のようなハードを使う場合と、スケール・アウトに必要な機能を持つミドルウエア・ソフトで実現する場合がある。
現状では、負荷分散装置を使うことが多い。Webサーバーなら、OSやミドルウエアが同一構成のサーバーを数台から数千台並べ、各サーバーに対するアクセスを負荷分散装置で制御する形で実現する。ソフトで実現する場合は、シン・クライアント環境構築ソフトのMetaFrameやデータベースの Oracle Databaseといったミドルウエアが備えるクラスタリング/負荷分散機能や、専用クラスタ・ソフトを利用する。
スケール・アウトでサーバーを構成すると、システムの処理能力に加えて、可用性の向上が期待できる。サーバーを追加するだけでシステムの処理能力を増強できるという手軽さもある。また、比較的低コストで実現できるのもメリット。システムに要求される処理能力によるが、小型のパソコン・サーバーの組み合わせでも十分実用に足る場合が多い。
一方でデメリットもある。サーバー台数が増えると、運用管理の手間が増大する。また、サーバー1台の費用が安価でも、サーバーごとにライセンスが必要なソフトウエアを使う場合には、料金が高くなってしまう点にも注意が必要になる。
スケール・アウトの普及を加速する大きなきっかけは、ブレード・サーバーの登場だ。これは高さ3U~7U(1Uは約44.5mm)のシャーシに8~24枚程度の細長いサーバー本体を複数台挿入することで、集約率を高めた製品。シャーシでLANケーブルを集約したり専用の管理ソフトを利用することで、運用管理の負荷を削減できる。ただし、スケール・アウトを実現するには負荷分散装置などが別途必要になる。
ソフトウエア関連では、日本オラクルが昨年出荷したOracle Database 10gで、クラスタリング機能「RAC(Real Application Clusters)」を強化。システムを稼働させたまま、サーバー機を追加できるようにして、スケール・アウトを容易にした。