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セイコーエプソン 代表取締役副社長 丹羽 憲夫氏

 2年ほど前、世界規模でシステムを最適化するようIT部門に指示した。現状は拠点や事業部ごとにシステムがバラバラで、無駄なコストがかかっている。そこで業務アプリケーションや導入技術/製品の標準を決め、全世界の拠点に順守を呼びかけた。

 システムが経営にとって重要なツールあることは間違いないが、特別視はしていない。だからIT部門には他部門と同じように、固定費の削減や投資効果の測定といった活動をしてもらっている。全体最適もその一貫だ。

 全体最適に向けた標準化に当たっては、押し付けにならないよう注意している。本社のIT部門が勝手に標準を決めて、各拠点や事業部に展開しようとしても行き詰るのは見えている。

 私も米国販売法人に在籍中、本社から「××システムを○○というパッケージで再構築せよ」と一方的に命じられ、猛反発した。現地のシステム事情や業務プロセスも知らずに、身の丈に合わないシステムを強要してきたからだ。その経験から、IT部門は現場の状況をある程度把握し、現場が納得できるよう、標準化の目的や効果をきちんと説明する義務があると確信した。

 利用部門がIT部門を信頼しないと、全体最適に向けた活動は進まない。そこでIT部門のスタッフには利用部門と対等に議論できるだけの業務知識を身に付けてもらいたいと願っている。そのために、ここ2~3年は国内外の利用部門をできるだけ訪問させている。

 現場への訪問だけでなく、2003年に1年がかりで取り組んだプリンタ事業向けの基幹系システム再構築プロジェクトが大成功したことで、IT部門と利用部門の間にあった壁は次第に低くなってきた。このプロジェクトで私は、IT部門と利用部門に「お互い本音で議論して良い仕組みを作れ」と呼びかけ続けた。その結果、予想より早くシステムが完成した。

 今では利用部門の担当者の多くが、IT部門の力量を知った。IT部門は利用部門の信頼を勝ち取ったと見ている。そのため、最近は新規プロジェクトの相談がIT部門に多数寄せられるようになった。IT部門は人手が足りず、うれしい悲鳴を上げている。

 IT だけでなく、業務の知識も求められ、IT部門のスタッフは大変だと思う。その努力と功績はきちんと評価している。当社では数年前から、評価指標を定めて IT部門の仕事ぶりをチェックしている。「プロジェクトの納期順守率」や「コスト削減目標の達成率」など約20項目で、IT部門の仕事の成果を測っている。このやり方が完璧とは思わないが、スタッフの士気向上に役立っている。(談)

写真=いずもと けい