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 本稿は4月17日に公開した「会社の会議室で会えない」の続編である。前編で予告した通り,EnterprisePlatformというWebサイトに関わっている面々がマイクロソフトのコラボレーション支援ソフト(Grooveテスト版)を使い,「仮想編集会議」を実施してみたので,その結果を報告する。前編を会話形式で書いてみたところ,「冗長。記者のつぶやき欄の原稿は短くすべき」という指摘を受けたので今回は簡潔に「つぶやいてみる」。

 コラボレーション支援ソフトは便利だが利用規則を用意しないといけない。これが結論である。規則というより,作法と呼ぶほうが適切かもしれない。電子会議室を使う前に,これこれしかじかを守りましょう,と約束したほうが効果的効率的に利用できるということだ。

 Grooveは簡単に使える点が売り物であって,事前の取り決めなど不要に思える。P2P(ピア・ツー・ピア)技術を使ったGrooveを利用すると,コラボレーションをしたい相手に招待状を出すだけで小グループを作れ,電子会議や文書共有,チャットがすぐにできる。実際,今回の実験に参加した筆者と記者3人は簡単にグループを作ることができた。このうち記者2人は出張先のchinaとUSAから加わった。

 事前に何の打ち合わせもせず,4人の間で業務連絡や原稿の共有,意見交換を行うことができたものの,かえって効率を落とす面もあった。その反省を踏まえた作法を3点挙げておく。ただし,これらは比較的自由な編集職場だから必要になるものであって,業務報告の書式や規則,各種の業務手順が定められている職場では当たり前のことかもしれない。

作法その一・自分の考えをまとめてから表明する
 電子会議室でいくつかの案件を議論してみたが,議論というより,ただのチャットになることが多かった。最初に議題を出す人はある程度まとまった文章を公開するのだが,それに対する意見が1,2行のコメントになってしまい,そこからなかなか前向きな話にならず,立ち消えになってしまう。相手の主張や考えを咀嚼(そしゃく)し,その上で「わたしはこう考える」「あなたの意見に反対,わたしならこうする」といったように,意見をまとめてから表明しないと話が進まない。一般論として,インターネット上の書き込みを眺めていると,意見交換どころか,相手の意見を理解しないまま自分の感想を垂れ流している例,対案のない批判のための批判,が散見される。

作法その二・利用時間を決める
 仮想編集会議室においては,24時間いつでも,日本でも海外でもどこにいても議論ができる。そのかわり,ひたすらGroove画面をにらんでいないといけなくなる。海外に出張した記者から「まだ起きてますか」などという書き込みがあり,それを日本の翌朝に見たりすると,「即答できずに悪かったなあ」と思ってしまう。だが逐一応答していたらきりがない。電子メールも同じだろうが,見て応答する時間帯を決めておかないといけない。特に,筆者にとってチャットは思考や作業を著しく妨げる代物であった。

作法その三・やるべきことを明確に
 EnterprisePlatformサイトの今後のあり方や企画について雑談しようという主旨で設けた空間は今回まったく使われなかった。考えてみれば当たり前で,「いついつまでに将来に関する意見および提案を一人当たり最低二点は書け」というように指示しない限り,人間は動かない。目の前の締切に追われて原稿を書いたり,具体的な案件について連絡を取り合うことで忙しいからだ。というわけで新しいアイデアを出すために電子コミュニティを利用しても,なかなか難しいと思う。研究所においてユニークなアイデアが出る場所は異なる専門分野を持つ研究者が雑談できるカフェテリアである,とか,営業上のうまい作戦が煙草部屋から生まれた,といった話をしばしば聞く。しかし電子カフェテリアや仮想煙草部屋を作っても人は寄りつかないのではないか。