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樋渡 雅幸
トーマツ コンサルティング シニアマネジャー

 本連載のテーマである「会社を強くする内部統制」を構築するに当たって、経験上重要と考えられる準備について確認していきます。

 その大前提は、マネジメント層、そして構築担当者の間で、目指すべき内部統制像が共有化されており、全社の取り組みと認識されている状態を作っておくということです。つまり、それぞれの立場によって異なる姿を描いているのではなく、同じ目標を持って対応する必要があるということです。

全社的な長期プロジェクトと位置づける

 このことは至極当然のことをいっているようですが、内部統制の構築という作業は、先の歴史的な環境変化と比較しても同程度以上の大きなインパクトを企業経営に与えるものといえます。このようなことからも、今回の内部統制への対応はマネジメント体制の構築という全社にかかわる重要事項、プロジェクトと考えられます。

 期間的にも2009年3月期という年単位のスケジュール感を持つ長期のプロジェクトとなります。このような全社的かつ長期のプロジェクトである場合は、特にマネジメント層、管理者層、そして現場が一枚岩で対応することが必須であるといえます。

 下の図をご覧ください。内部統制体制構築のプロジェクトを立ち上げるに当たって、全社的な取り組みであることを十分に意識させる必要があります。今回の日本版SOX法対応は財務報告の面が強いので、プロジェクトリーダーやメンバーを選定する際に、財務部門系の方が中心となるということが多いようです。

●全社的なプロジェクト体制の構築が必須
●全社的なプロジェクト体制の構築が必須

 しかし、筆者が本連載で説明している「会社を強くする内部統制」は、業務の有効性・効率性という観点から自社の業務を見直すことによって、今までの業務上の課題を改善していこうという投資意義を持つものと位置づけられます。「会社を強くする」ことを目的とするのであれば、先の説明の通り、全社の巻き込みは必須であり、財務部門系に偏ることなく、企画系や営業系のメンバーの巻き込み、マネジメント層と現場のコミットメントを得る必要があります。

全社の業務プロセスを見直す好機

 続いて、構築の際に注意すべき前提条件を提示しておきましょう。

 内部統制の定義を議論する際に、よく「COSO(トレッドウェイ委員会組織委員会)キューブ」が活用されます(下の図を参照)。COSOキューブを前提として説明した場合、日本版SOX法の制度対応は内部統制システムの一部を指しているにすぎません。内部統制という社会的な変化(様々な不祥事や今までのしがらみのようなものへの決別)に対応するためには、日本版SOX法に対応しただけでは不十分なのです。

●私たちの考える「“会社を良くする”内部統制」とは?
●私たちの考える「“会社を良くする”内部統制」とは?
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 投資に見合う成果を獲得するためには、狭義の制度対応の考え方に加えて、「業務の有効性・効率性」という視点から、全社的な業務プロセスが包含する課題へ対応せざるを得ません。

 この課題への対応に対して、私たちが目指すのは、決して現場で行われている業務を縛るための物差しづくりではありません。企業として、どのようなプロセスで財務報告に向けたプロセスを実施するのかをマーケットに対して提示するというものであるべきだと考えています。すなわち、業務プロセスの中で長年のしこりのように残っている課題を、この内部統制プロジェクトを改革のチャンスととらえて、見直していくのです。それによって業務の有効性・効率性を確保し、「会社を強く」していくわけです。

 遠回りと感じられるかもしれませんが、現在の業務における課題を抽出するというステップが必要になると考えます。すなわち、現場ではどのような業務が行われ、本来必要とされている業務は何なのか、それを阻害している要因は何なのかということをしっかりと確認することが重要なのです。