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日野自動車 執行役員 IT推進部担当 下成 誠氏

 トヨタ自動車のIT部門から当社に移って2年がたった。赴任当時、当社のIT投資は売上高(2003年度は連結で8500億円)の1%に遠く及ばなかった。それが今では売上高(2005年度は同1兆1700億円の見通し)の1%を軽く超え、2%に迫っている。システム部員も38人から80人に増やした。徐々にだが、ベンダーに頼らず、システムを内製できる実力が付いてきた。

 ただし、ヒト・モノ・カネには限りがある。当社の規模で、単純にトヨタのマネをしてもうまくいかないのは重々承知している。

 だから私の今のモットーは、「やるべきことを、きちんとやる」。これを常に心がけ、部下にも言い聞かせている。このモットーには二つの意味がある。一つは、「やるべき」と「やりたい」を明確に区別すること。システム部門には、生産や販売といった社内の各部門からさまざまなシステム化案件が寄せられる。だが、そのすべてに応えていては、どんなにヒト・モノ・カネがあっても足りない。実際、システム部門に年600件近く上がってくる案件の4割は、却下、もしくは延期している状態だ。

 実施する案件でも、ユーザーの要望をすべて聞いていたらきりがない。やるべきことを明確にして、限られたリソースを有効活用する。何にでも「ちょうど良い加減」というのがあるはずだ。部下にはいつも「システムはいい加減(良い加減)に作れ」と言っている。

 「あれもこれもやりたい」とならないよう、利用部門にも協力を仰いでいる。全役員が参加して年4回実施するIT中期計画の見直しの場で、新規システムの投資効果を利用部門の担当役員から説明してもらい、「やるべきこと」と「やりたいこと」を明確にする。小さな投資にも目を光らせるため、300万円以上のりん議書は、担当役員がチェックするようにもした。

 モットーの二つ目の意味は、日々の仕事を「きちんとやる」習慣を社員につけること。そのためには仕事の可視化が重要だ。

 仕事の中身が見えないと、小さなミスや計画のズレに気付きにくい。そうすると、きちんと仕事を遂行できなくなる。それを防ぐため、システム部員全員の週報を読むだけでなく、コメントを赤ペンで書き込み、部員に返している。週報の内容や表現がいつもと違うなと感じたら、すぐに現場に足を運び、部員から直接話を聞くようにもしている。こうしたことを通じて、「きちんとやる」が現場に根付く。

 さきほど、「トヨタのマネはしない」とお話ししたが、実はこれは「トヨタ流」だ。トヨタ流の実態は、「やるべきことを、きちんとやる」の繰り返しにすぎないのだから。(談)

写真=木村 輝