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ヤナセ 常務取締役 経営企画室室長 速見 成生氏

 1915年の創業以来、最大の転換期を当社は迎えている。これまでの90年間は、自動車を輸入・販売する「権利」が競争力の源泉だった。キャデラックやメルセデス・ベンツといった高級車を海外のメーカーから自ら輸入し、お客様に販売することで当社は成長してきた。

 だが、ここ10年ほどで状況は一変した。海外メーカーが相次いで日本法人を設立し自ら輸入業務を手がけだしたため、当社は1ディーラとして市場に向き合わなければならなくなった。

 そこで当社は、サービス業への転換を図っている。単にお客様にクルマを売るのではなく、快適なカーライフを過ごせるよう、ホテルのコンシェルジュみたいにお手伝いする。

 お客様に提供するサービスの中身は、自動車の点検・整備といった地味な作業が中心だ。しかし、接客方法や作業内容など、一つひとつサービスの品質を高めていけば、それが新たな競争力の源泉になると確信している。

 もちろん輸入業からサービス業への転換は、一筋縄ではいかない。社員一人ひとりの心構えの問題もあるが、システムの問題もあった。

 輸入業時代に構築した古い基幹系システムは、コンシェルジュ・サービスの基盤となるお客様の情報を収集・管理する機能が非常に弱かった。地域ごとにシステムが分散していたため、お客様の情報を販売店間で共有することもできなかった。

 そこで当社は5年ほどかけて基幹系システムを刷新した。2006年1月末から全面稼働させる。その間、一時は赤字に転落するなど経営環境は厳しかった。そうした中で数十億円規模のシステム投資をするのは、かなりの勇気がいる。しかし、「お客様の『情報』を制することができなければ、サービス業への転換は図れない」と信じて、断固として進めた。

 新システムでは、お客様ごとに電子的なカルテを用意し、自動車の整備履歴や利用状況を全販売店が共有できるようにした。月間走行距離などから、点検・整備の必要な時期を自動的に予測し、営業担当者に知らせる機能も準備した。

 このシステムを活用すれば、お客様の要望を先取りしてきめ細かいサービスを提供することが可能になる。さらに、全国のどこの拠点でも均一のサービスを提供できるようになる。

 ベンダーやコンサルタントの押しつけではなく、刷新プロジェクトに参加した営業部門や整備部門のメンバーが発案して作ったシステムだけに、現場の期待も大きい。あとは社員教育を徹底し、いち早く新生ヤナセをお客様に感じていただけるようまい進したい。(談)

写真=高瀬 信夫