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今年からIT部員に次世代システムの構想を練らせ始めた。現行システムに大きな不満があるわけではないが、そこに安住はできない。これまでと異なる発想のもとで、10年後も通用するシステムの構想を数年がかりでまとめたい。企業システムを取り巻く環境が、今後大きく変わるのは間違いないからだ。
現行システムの原型を作った10年前は、社員が利用することだけを考えていればよかった。しかし今は、Webサイト経由でお客様が契約内容の確認や変更のために、直接当社のシステムにアクセスしてくる。利用者数だけでいうなら、社員より顔の見えないお客様のほうがよっぽど多くなっている。
今後、こうした傾向はますます強まるはずだ。そうなると、企業システムに求められる要件も、これまでの延長では考えられなくなる。システムの影響範囲が社会全体に広がることを常に意識しながら、要件を固めなければならない。
これからの時代、今までの発想通り「システムで社内業務を効率化」と言っても効果はしれている。まだ漠然としているのだが、もっと広い視野から業務改革に取り組み、新しい価値を生まなければならないのではないか。
システム・インフラや利用技術もそうだ。利用者が社員に閉じていたころは、自分たちの判断でインフラや技術を変えられた。これからは、そうはいかない。社会全体のトレンドをにらみながら変えないと、「うちはこっちに行きたい」と思っても、社会に受け入れてもらえない。
例えば、個人認証の技術。署名と印鑑を早く電子化したいのだが、社会的な認証インフラができて、それが広く利用されるようにならないと、当社の都合だけでは決められない。
次世代システムは、社会のニーズに応えるのと同時に、当社の企業価値をより高めるためのものにしたい。どんなアーキテクチャになるか、正直言ってまだ分からない。今とはまったく異なるかもしれないし、今と似たものになるかもしれない。
まあ、今の段階は部員も私もいろいろと考える時期。新しいことへの挑戦にやりがいを感じるが、具体的に何かアクションするわけではないのでツライ面もある。ただ、ここを乗り越えないと、未来はない。
いずれにせよ、お客様がどのチャネルから当社にアクセスしてきても、均質のサービスを提供できるようにし、そこで当社のブランド価値を確立していく。 Webサイトの商品説明は充実しているが、コールセンターに問い合わせたら不便だったでは通用しない。社内の業務プロセスや組織体制、システムのレベルはお客様には関係ない。(談)
写真=吉田 明弘