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ローソン 常務執行役員CIO 長谷川 進氏

 ユーザー企業のシステム部門で25年以上を過ごした。最近とみに、「IT業界は、悪い意味で変わらない」と思うようになった。

 例を挙げよう。新規システムの見積もりをITベンダーに依頼すると、相変わらず根拠の乏しい金額を記した見積書を持ってくる。残念ながら、システムの適正価格は、不透明なままだ。

 「こういうシステムを構築したいのだけど、どのくらいかかる?」と聞くと、最初はとてつもなく高い金額を提示してくる。「ホントに○○億円もかかるの」と切り返して、そこから値引き交渉を始めるのが常だ。

 こんなことを何度も繰り返してきた。

いい加減、何とかならないだろうか。もちろんITベンダーだけの責任ではない。我々ユーザー企業も、システムの適正価格を見積もる能力を磨かなければならない。

 もう一つ、昔と変わらないのは、システム構築費が、必ず当初の予算をオーバーすること。何が悪いのか、私なりに考えてみたが、ベンダーとユーザー双方の「100点満点主義」に原因があるのではないか。

 ITベンダーの担当者は、良くも悪くもまじめなので、完ぺきなシステムを作ろうとする。そこでオーバースペックの製品を採用したり、余裕を持って開発要員を配置する。結果として、システム構築費は当初予算より高くなる。

 それで優れたシステムができればよいのだが、経験から言うと、満点主義でプロジェクトを進めても、出来上がったシステムは50点ぐらいしか付けられないことが多い。これでは困る。

 そこで私は最近、発想を変えた。ITベンダーの担当者に、はじめから「70点でよいから、できるだけ早く安くシステムを作ってくれ」と依頼することにした。「手を抜いても構わない」と言うつもりはない。「当社の機能要求が100あったら、そのうち70を実装してくれれば合格」という意味だ。

 そもそもシステムが稼働するのは、プロジェクトが始まってから半年から1年先のこと。その間、ビジネス環境や当社の経営方針はどんどん変化する。最初は「満点」と考えていたシステムが、稼働時に100点をとれることはめったにない。それだったら70点のシステムを早く安く動かしたほうが、経営的には有利だ。

 70点主義を貫くには、我々も改心しなければならない。早く安くシステムを作ってくれたら、ITベンダーにきちんと感謝の意を示す。「不具合を何カ所見つけた」、「操作性が悪い」などと細かなミスばかりを指摘していたら、ベンダーも変われない。そこそこ満足のいく仕事をしてくれたらば、きちんと評価するようにしたい。(談)

写真=いずもと けい