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川崎汽船 常務 久保島 暁氏

 当社は2年前、新しい基幹系システムを自社開発した。市販のパッケージ・ソフトを使って作った旧システムでは、競争優位性を確立できないと判断したからだ。「競合他社も同じようなパッケージを入れている。このままでは競争優位性をどのように保てばよいのか」と不安に駆られての決断だった。

 競争に勝つためには、他社より優れた業務プロセスを描き、それを反映したシステムを動かさなければならない。コンテナ/貨物船の稼働管理や貨物の積み込み手配といった中核業務では、システムの優劣で勝敗が決まる。そう考えて、あるべき業務プロセスを決め、システムを独力で開発した。

 私は何もパッケージを否定しているわけではない。1997年に稼働させた旧システムも、その当時の経営のニーズにはきちんと応えていた。あのころは海運不況の真っただ中で、経営層から「一刻も早くITコストを削減せよ」と指示があった。

 そこでシステム部長だった私は、最大のコスト要因だったメインフレームを撤去し、パッケージを使ってオープンシステムに移行することに決めた。それによりITコストは、メインフレーム時代の半分に削減できた。

 当社のシステムの変遷は、そのときどきの経営状況を反映している。経営のニーズに応じて、パッケージか自社開発か、メインフレームかオープンかは変わってくる。

 今回の基幹系システムの自社開発では新たな発見もあった。私はシステム子会社の社長を兼ねているが、そこで実施している保守・運用の仕事の重要性を再認識した。

 システム子会社の保守・運用担当者は旧システムに対するさまざまな機能追加・改善の要望を利用部門から聞いており、システムや業務プロセスの問題点を正確に把握していた。その知識を再構築の際に生かしてくれた。

 彼らの活躍もあり、今回は満足のいくシステムが出来上がった。業務やシステムの問題点をきちんと理解している人材が枯渇すると、将来のシステム構築に支障が出ることも分かった。システムは競争力の源泉であるだけに、優秀な人材が内部にいなくなるのは経営的にまずい。

 より良い次世代システムを作るためには、できるだけ多くのシステム部員やシステム子会社の担当者に保守・運用の仕事を経験させようと思っている。保守・運用の作業を通じて、現行の業務とシステムの問題点を知ってもらう。そうして、より良い業務システムを設計できる人材を育てたい。課題を分からない人間が、改善策を考案することなどできないのだから。(談)

写真=新関 雅士