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ブラザー工業 常務執行役員(インタビュー時は取締役執行役員) 小池 幸文氏

 製品の企画段階から、開発・生産、販売・アフター・サービスに至る、すべての過程で発生するデータを統合管理できないかと考えている。お客様が購買意欲を抱く製品は何で、購入後はどのように使い、どんなタイミングで買い換えるのか分かれば、魅力的な製品を素早く市場に投入できると判断しているからだ。

 発想としては、IT業界でここ1~2年、話題となっている「PLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)」と似ている。これを単にシステムではなく、新しい業務プロセスとして社内に根付かせるのが、今の私の課題だ。

 そのためには、これまでのように個別業務の改善を積み重ねるだけではダメだろう。PLMの概念に沿って、業務全体を一から見直す必要がある。

 そこで現在、今後当社が採用すべき業務プロセスの理想像を必死になって考えている。その際に、二つのことを意識している。

 一つは、ITの進化が企業活動に与える影響だ。過去10年、お客様の消費者の行動パターンはインターネットによって大きく変わった。同じような変化は、今後も必ず起こる。同時に、個人情報保護法をはじめとする法規制も意識しないとならない。こうした社会の動きを視野に入れながら、理想の業務プロセスを決めないと、出来上がったときには時代遅れや絵空事になりかねない。

 もう一つ意識しているのは、ヒトの問題である。理想の業務プロセスを決め、それを支えるシステムを作っても、最終的にシステムを使って業務を遂行するのは人間だからだ。

 理想を追い求めるあまり、社員がついていけない業務プロセスを作っても、意味がない。現行の情報システムにも、企業活動の各過程で発生するデータが多数蓄積されている。だが、すべての社員がデータの意味するところを正しく読み取り、仕事に役立てているわけではない。社員によって、かなり情報の活用力に差があるのが実態だ。どんなにITが発達しようとも、最後は人間の判断が求められる。

 そこで安易に、平均レベルに合わせて業務プロセスを決めたら、企業競争力が伸び悩む。かといって情報活用力の高い一部の社員を想定して理想の業務プロセスを描くと、外目には美しいが、会社が回らない。

 いずれにせよ、情報活用力が十分でない社員の存在が、理想の業務プロセスを決める際にネックになるのでは、と危惧している。どのレベルの社員に合わせて、業務プロセスを決め、システムを作るかは本当に悩ましい。いまだに答えはでていない。(談)

写真=福島 正造